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ゆかちゃんから直接あたしに話を切り出してくれるのが一番良い解決策ってことはわかってる。
だけど、ゆかちゃんから話を切り出してくれるような様子はまったくない。
仕事中はいたって普通なのに、楽屋に帰るとすぐ携帯を弄り出す。
こっちから話しかける機会さえ、そこにはなかった。




あたしがラジオの収録中に泣いたのは、このことが関係ないわけではなかった。
直接的な原因はファンの方にうまく気持ちを伝えられない自分を情けなく思ったからだけど、
それにゆかちゃんに言いたいことが言えない今の現状が重なっていっぱいいっぱいになってしまった。


「大丈夫。あ〜ちゃんの気持ち、皆わかってくれると思うよ」


のっちはあたしの背中を優しく摩りながら、声をかけてくれる。
でもあたしはのっちの言葉越しに聞こえる、
ゆかちゃんの携帯のボタンを押す音が気になって仕方がなかった。
以前ならのっちと一緒にあたしを落ち着かせようとすぐ傍に来てくれたのに。
ひたすら途切れることなく聞こえるカタカタという音が、あたしをもっと不安にさせる。


ねぇ、ゆかちゃん。
そのメールの相手は、あたしよりゆかちゃんを知ってるの?
あたしには話せない悩みを聞いてくれるの?
ちゃんと支えになってくれてるの?
だとしたら、なんであたしを避けてるの?


ゆかちゃんがわからない。
わからなくなったのは、ゆかちゃんから彼氏ができたと聞いた頃からかもしれない。
あの日から確実にゆかちゃんとの心の距離がうまれた気がする。



「もっさん、今日この仕事最後だよね。もう帰っていい?」


ゆかちゃんの冷めた声に、のっちの手が止まる。
閉められたドアの音がさらに空気を重々しくする。


「のっち…」
「ん?」
「ありがとね。いつも」
「え…いや。…もう大丈夫?」
「うん。大丈夫。」


きっと、大丈夫。
あたしはゆかちゃんと向き合うことを、自分の不安と向き合うことを決意した。








「ゆかちゃん、あの…」


スタジオから楽屋に向かう廊下。
スタッフさんに挨拶されて、笑顔で挨拶を返すゆかちゃんに話しかける。


「何?」


話しかけた途端、目から笑みが消えた。


「あの…今日、お母さんとちゃあぽんは旅行行ったし、たかしげも友達と遊ぶからって、
家にあ〜ちゃん一人になるんよ。…ちょっと、寂しくて。だから…」
「のっちにその話、した?」


ゆかちゃんはあたしから目を逸らして、話まで逸らそうとしている。


「しとらん」
「だったら、のっ…」
「ゆかちゃんに!…あ〜ちゃんは、ゆかちゃんに来て欲しいんよ」


無理矢理目を見て話せば、ゆかちゃんは黙って頷いた。
昔からそうだ。
二人とも目を見て頼まれると、絶対に断れない。
こうしてあたしは二人を半ば強引に引っ張ってきた。




あたしは二人をまとめてきたんじゃなくて、制御してきたのかもしれない。




そんな考えが、ふと頭に過ぎった。









つづく





最終更新:2009年08月22日 21:14