『また雨だよ、、。』
少し日に焼けた腕をさすりながら窓際のカーテンの隙間、外を眺めて呟いたのはのっち。
『最近よく降るよね、、。』
切りすぎた前髪を左手でおさえながらベッドからゆっくり身体を起こしてシーツを被り、答えたのは私。
『困っちゃうよね。夜になると急に降りだすじゃん?』
まったく、、帰れないじゃん、、。
そう言いたげな表情をすぐに察知しちゃう自分の余計な能力を恨んだ。
いったいのっちは何を困ってるんだろう?
降り止まない大雨のせいで帰れないことだろうか?
そんなことより、、困ればいいよ。
この関係に。この状況に。この過ちに。
困れば、、いいのに、、。
『ね。かしゆか?』
『ん?』
カーテンの隙間を覗き込む細めた目が、私を捕らえた。次に、捕らえて、離さない。
『いつまで降るのかな?』
『さぁ?』
日に焼けた肩からタンクトップがずり落ちてる。
ちゃっかり私の部屋着のショートパンツを履いたのっちが、目を細め困った顔で隣に座る。
『やむかな?』
『やまないんじゃない?』
『うっそ!やむでしょ?』
『やまないよ、、今夜中には、、。』
はぁぁ。と困った顔でため息をついたのはのっち。
ごくっ。と生ぬるい空気を飲み込んだのは私。
『ははっw』
クルッとこっちを向いたかと思ったら急に笑いだしたのっち。
『なんよ?』
『ふふwやっぱ前髪切りすぎちゃった?w』
ババッと音が鳴るほどに、切りすぎた前髪を今度は右手でおさえた。嫌われたくないから。
『いや、でも、可愛いよ?』
もうこれ以上困らせないでほしい。
のっち。やめて。のっち。もうやめてってば。
『雨、やまない、ね、、。』
降り止まない大雨に頼らないと、会話を変えることもできずに、のっちに求めてしまいそう。
一人でいることが好きな人だ。
自由気ままに伸びていく人だ。
怒ったり、悲しんだりは、似合わない人だ。
誰にも捕まえられない人だ。
そんなことわかってる。
わかってるから、困ってる。
困ってるから、迷ってる。
迷ってるけど、抑えられないでいる。
それでも求めてしまいそうだ。
わかってるから、困ってる。
困ってるから、助けを求めてしまいそうだ。
はぁぁ。今度は私のため息が洩れた。
のっちは首をかしげた。
『どした?』
ううん。なんでもない。
首を横に降った私を、覗き込むようにしてのっちが見てきた。
『雨、困った、ね、、。』
『うん。ねぇ。やまないねぇ〜』
急に優しく笑いだすから、なんでだろう?涙が出てきた。
『あのね。』
窓を見ながらもう一度、目を細めて、雨困ったね〜なんて言いながら優しく髪を撫でた。
『たまにはかしゆか以外で困ってみたかった。』
雨は、もう、やむ。
音が、小さく、遠退いてく。
『あんま困らせないでよ?』
困らせてるのは、のっちだよ、、。
雨があがっても、いて、くれるの?
雨のせいにして、誤魔化さないでくれるの?
『ね、のっち。抱いて?』
雨がやんじゃうから、、。
雨がやんだら、帰っちゃうんでしょ、、?
『うん。雨がやんでも、いて、いいの?』
『いて、よ。』
雨は、もう、やむ。
音が、小さく、遠退いてく。
END
最終更新:2009年08月22日 21:35