Side K
あの後あ〜ちゃんは泣きつかれて寝ちゃった。
おかげで起きた時の顔が酷くて、今日は休むって言って家に居る。
のっちと顔合わせたら心配させちゃうもんね…。
まぁ、私としては都合が良い。
のっちに話したいことがあるから。
メールを送ったら、のっちも聞きたいことがあるとかで、私はのっちが終るまで図書館で待つことにした。
「お待たせ。」
バイトの終ったのっちが私の前の席に座る。
「で、聞きたいことって?」
先にのっちの話を聞く。
「いきなりだねぇw一息つかせてよw」
「あ、ごめん。」
ちょっと急ぎ過ぎた。
「まぁ、良いけど。」
どっちなのよ?
「…それで?」
そう聞くと、何も言わず拳を私の目の前に出してきて。
何かと思って、軽く身を引くと。
のっちがパッと手を開くと同時に。
チャラチャラ
音がして、何かがのっちの指に掛かってゆらゆら揺れている。
見覚えのあるソレ。
のっちの手にあるソレ。
自分の目を疑った。
「のっち、それ…。」
「昨日、あの人のお墓行ったら置いてあって。ペアリングだから、あ〜ちゃんのかなと思って…。」
揺らしていた指輪を掌に乗せて話すのっち。
間違いなくソレは、あ〜ちゃんがずっと肌身離さず身に着けていた指輪だった。
あの人の代わりみたいに大事にしていた、指輪。
ソレをあ〜ちゃんが外したの?
どれほど想ったらあ〜ちゃんの想いはのっちに伝わるの?
のっち。早く気付いてよ。
Side N
「あの…。」
「のっち。」
何も言ってくれないゆかちゃんに、もう一度聞こうと思ったら、不意に名前を呼ばれて。
「はい?」
「それ…、あ〜ちゃんがあの人から貰ったやつで、すごく大事にしてたの。」
「やっぱそうなんだ。」
やっぱり、二人のなんだ。
何となく、そうかなって思ったけど…。
「なんで、置いていったのかなぁ?」
そんなに大切な物。
「ごめん、私からは言えないわ。」
「だよね。」
あ〜ちゃん、好きな人でもできたのかな…。
だから、忘れようとしてるのかも…。
「ねぇのっち。」
「ん?」
「またお願い聞いてくれる?」
「うん、なに?」
あたしに出来ることなら、何だってする。
「あ〜ちゃんはね、一人じゃ抜け出せない迷路をずっと彷徨ってるの。けどちゃんと、その迷路には出口があって。ただ、そこに鍵が掛かってて出れないんだよ。」
「カギ?」
てか、迷路?
「そう。で、今その鍵を持ってるのは…。」
「のっち。」
え?
「のっちなんだよ。だから、あ〜ちゃんをそこから連れ出して欲しいの。」
「何であたし?」
「それは自分で考えてよ。」
「ぇえー、教えてよぉ。」
「だーめ。のっちが考えなきゃダメなの。」
ちょっと甘えてみたけど、やっぱりダメか…。
軽く溜息を漏らすと、ちょっと困り顔になったゆかちゃん。
「お願いばっかしてごめんね?」
「え、ぃや〜、別に良いよ。あ〜ちゃんの為だったら何でもしたいしw」
「うん。ありがとう。」
ゆかちゃんはそう言うと、一呼吸してじゃあって言って帰りだす。
あたしも手を振ってそれを見送る。
…。
迷路ねぇ…。
あ。そういえばコレ…どうしよう?
手の中にある二つの指輪を、しばらく眺めていた。
—つづく—
最終更新:2009年08月22日 21:55