—…プシャー…
のっちが持っているホースから綺麗な甲を描いて流れ出る水。
キラキラと太陽に反射しながらウッドデッキに落ちた。
デッキブラシ片手に、ウッドデッキに水を撒くのっちを、リビングの窓の縁に腰掛けて、裸足のままデッキに足を下ろし眺めてた。
先日の雨で汚れは流れてしまっているのに、のっちは掃除するときかない。
何で其処までデッキを掃除したいのか…。
「ゆかお嬢様!虹です」
まぁ、楽しそうだから良しとしよう。
一通りまき終えたのか、ホースを傍らに放置したまま、デッキブラシで力強く擦っていく。
その背中を見ていると、なんだか無性に抱きつきたい衝動にかられた。
ダメダメ。
のっちは今一生懸命お掃除中なんだから…。
「ねぇ〜掃除なんてしなくても良いじゃん」
ホースから流れ出る水がゆかの足も濡らした。
ピチャピチャ、水を遊んで。
「明日帰るんですよ?今日中にお掃除しないと、管理人さんにも迷惑ですから」
あー…そっかぁ、もう明日帰るんだ。。
てか、夏休みが終わるわけじゃないんだし、まだまだ此処に居たって良いじゃん?
「帰りたくなーい」
「明日の夜には、旦那様主催のパーティーですから、ゆかお嬢様も出なくてはいけないんですよ」
あぁ…またつまらない日常に逆戻りかぁ…。
そう思ったら、やり残したこと全部やりたくなってきた。
私は立ち上がり、裸足のままデッキを歩く。
だらしなく放置されたホースを手に取ると、
そっと、のっちの背後に接近した。
「明日早めに帰って、ドレスを決めないといけませんし…靴だって…あっ!新しく見立てて頂いたストール取りに行かないと!」
明日の事ばかりなウルサい頭めがけて、
水、発射!
—…ビシャー
「ギャー!」
side N
振り向くと、ホースを持ったゆかお嬢様が爆笑。
「冷たいですよ!」
「暑いから丁度良いでしょ?」
「お嬢様!」
ホースを取り上げようと近づくと、更に水をかけられた。
「来るなぁ〜w」
「ぶぁっ!ちょっ!顔、顔は!」
顔面に水をかけられて、服も随分と水分を吸った。
ウッドデッキをホース片手に逃げ回るゆかお嬢様とそれを情けなく追いかける私。
常に水をかけられていたから、パンツまでびしょ濡れですよ。
まぁ…楽しいので良いんですが。
「やめーてくださっ、イタッ!」
目に痛みを感じて、その場にしゃがみ込んだ。
「イッタ…」
「…のっち?大丈夫?ちょっと、、、ふざけすぎた…かな?」
「いえ、大丈夫です。ただ、ちょっと目が…」
ゆかお嬢様が、しゃがみ込んだ私の上から影を造った。
気配で、屈んだことも解った。
今しかない…
「隙やり!」
伸ばした手はホースを掴むはずだった…
のに、掴んだのは乾いた空気。
「甘いなぁのっち。そんなんじゃ、騙せないよ〜」
うなだれたように跪いた格好の私に頭から水をかけるゆかお嬢様。
「うぅwイジメです…」
「うん、ごめん」
「ゆかお嬢様ぁ」
許しをこうつもりで顔をあげたら、イタズラに笑ったゆかお嬢様と目が合う。
「じゃあ…お詫び」
そう言って、ホースの先端を潰して勢いを増した水を空に向けた。
噴水のように登る水。
雨のように落ちる水。
それを、気持ちよさそうに浴びるゆかお嬢様。
キラキラ光る水しぶきが、まるでゆかお嬢様から放たれてる光のようで…。
「お嬢様」
いつの間にか抱きしめていた。
「おや?珍しい…」
「…おかしいんです、、、」
「何が?」
「ここに来てから、ずーっとドキドキしてて」
「…」
「やること、成すこと、ワクワクしちゃうんです。」
「おかしいの?」
「子供みたいじゃないですか、、、」
side K
そう言って、恥ずかしそうに頬をかく。
ホースを手放して、すっかり濡れたのっちの首筋に顔をうずめた。
「じゃあ…ゆかもおかしいかな?」
「?」
「のっちと2人っきりって考えると、嬉しくて…ワクワクする」
「お嬢様」
「お散歩だって海だってお昼寝だって、この空間にのっちと2人っきりって思うと無駄にドキドキしたりワクワクするの」
体を離して、顔を覗き込んだ。
「おかしい?」
のっちは顔を赤くして、俯いてしまった。
「おかしくないです」
「のっち?」
「はい?」
「二人ともびしょ濡れだからさ?」
「はい」
「二人でお風呂入ろっか」
「えっ!?」
「最後の思い出に。ね?」
「いや!いやいやいや!」
ウッドデッキに流しっぱなしのホースを残して、のっちをお風呂に引きずって行く。
避暑地四日目…は、まだまだ終わらない。
最終更新:2009年08月22日 21:56