サイドK
大学四年。もうすぐ春がくる。就職も決まった。
あれから二年。
彼女は一度も帰ってこなかった。
メールもろくにこなかった。
電話もろくにこなかった。
きたのは綺麗な絵はがき。
毎月のように届く、むこうの景色が写ったその絵はがきには、
短いけれど、いつも言葉が添えられていて、
メールや電話より嬉しかった。愛情を感じたんだ。
だいたい今の時代に絵はがきって、なんなんよ。
本当、いいセンスしてるわ。
毎回違うその写真を選んでくれる時間とか、
文字を書いてる時間とか、
全部のっちがゆかのことを想ってくれてる時間。なんでしょ?
それを想って、私はこれまでやってこれた。
“今日は空がオレンジ色をしていました。いつかの教室を思い出したよ。”
“今日は初めてデザインをおこしました。家具は繊細で、ゆかに触れる時くらい緊張しました。”
“海を見ました。言葉にならないくらいでした。見せたかったな。”
のっちの一つ一つの言葉が、
それに合わせて選んでくれた茜色の空とか、
インテリアの写真とか、
サンフランシスコの海岸とか、全部
“ゆかのため”
そう思って頑張ってこれた。
のっちもむこうで頑張ってるんだもん。
ゆかのために頑張ってるんだもん。
ゆかも頑張らなくちゃ、、。
大丈夫だよ、のっち。
ゆかは元気だよ。
あれから二年。
もうすぐ、、
もうすぐ
彼女が帰ってくる。
最終更新:2009年08月22日 22:11