Side A
のっちに『好き』な人ができたって言った翌日。
彼に会いに来た。会いにっていうか、なんとなく来たくなったの。
ココへ来るのは2度目。
やっぱりあなたは居ないんだって、すごく哀しくて悲しい…。
初めて来たこの前は、ずっと手放せずにいたあなたとのペアリングを外しにきた時。
無ければ少しは消えてくれると思ったけど…。結局ダメで…。
指輪…ココに無いってことは誰かが持って行っちゃったかな…。
その方が、いっか…。
「この間も言ったけど、あたしのっちが『好き』なの。あなたに言わないで後悔したから、のっちには言いたいけど…上手くいかないもんだねw」
溜息が一つこぼれる。
「ホント、あなたへの想い、どうやったら無くなってくれるの?しまいこむ場所を教えてよ。」
なんて言ってみても、答えなんて返ってくるわけない。
「時間が経てば薄れるもの?」
それはあたし次第?
でもきっと、のっちが側に居てくれたら、時間が掛かるかもしれないけれど…言えるよね?
「あなたもそれを願ってくれる?」
たぶん、いつまでも引きずってるな、って怒られちゃうね?
もうしばらく、我慢してね。
一瞬、笑うあなたの姿が見えた気がした。
そういえば、待つの好きだったっけw
それに少し安心して、そろそろ学校行かなきゃと思って、立って振り返ると。
お墓が並ぶ少しむこうに、こっちへ歩いてくるのっちの姿を見つけた。
さっきまでしゃがんでいたから、のっちはあたしに気付いていない。
思わずお墓の後ろに隠れてしまった…。
別に隠れなくても良かったよね…。
近づく足音。
そして、すぐそこで止まる。
「こんにちは。」
のっちが彼に話しかける。
「今日は、報告ね?心して聞きなよ?てか、もう聞いてるかもしれないけど。あ〜ちゃん、好きな人できたって…。相手は残念ながらあたしじゃないみたいだけどねw」
彼にはちゃんと、のっちって言ったよ?
「だからこの指輪、ココに置いていったんだね。」
…のっちが持ってたんだ。そっか、だから好きな人できた?って聞いてきたんだね。
「その人の為に、あなたを好きな気持ち、なんとかしようって思ってるみたい。
でも、それがちょっと寂しかったりするんだよねw」
寂しい?
「だってさ、あたしは忘れて欲しくないんだもん。あなたのこと。好きだって気持ちも。憶えてて欲しいんだよ。」
うそ、何で?
「勝手かもしれないけど、あたしは…。」
それに続く言葉は、あたしの心をいとも簡単に掴まえてしまう。
「あなたを愛したあ〜ちゃんごと
愛していくって決めてたからさ…。」
あぁ、なんて…。
なんて広くって、真っ直ぐで、温かい人なんだろう…。
のっちの言葉が、優しくあたしを包んでくれる。
この人に言えなかったら、いったい誰に言えるっていうの?
視界が滲む。
「あ〜、ちゃん?」
あたしに気付いたのっちが、恐る恐る後ろからあたしを呼ぶ声。
「ごめんっ…のっち、ごめんね?」
そう言いながら、あたしの前に来てくれたのっちを見上げる。
この人に応えなきゃ。
あたしが今出来る精一杯で応えなきゃ…。
だから無意識に
「良いんだよ。あ〜ちゃん。あたしはあ〜ちゃんの側に居れたら、それで幸せだから。ね?」
そう言って屈んできたのっちに抱きついていた…。
「あ〜ちゃん?」
戸惑うようにあたしを呼ぶのっち。
「違う…。違うの、そうじゃなくって…。」
そういう『ごめん』じゃないの。
「ずっと、言えなくて…言わなくて、ごめんね?」
「何、を?」
彼を『好き』でもなんでも、今伝えなくちゃいけない。
苦しさも愛しさも全部。
気持ちを言葉に…
「あたし…のっちが…『好き』」
やっと…できたよ
—つづく—
最終更新:2009年08月22日 22:19