《過去》
サイドN
話がしたくて、夜が明けるのが待てなくて、家に行ってみた。アポなし。つまりは、押し掛けてみた。今すぐ話さないと、きっとダメになっちゃうから。
だけどやっぱり、いざ着いてみると緊張する。
何をどう話せばいいんだろう。かしゆかとは終わったよ?違う。そうじゃない。
というより、“だからこの先どうすんだ?”っていう核心部分には辿り着けてないんだ。どうもはっきりしないところは治らない。
うだうだ考えてたら、マンションの前まで来てしまった。
あっ!
あれ?
見たことある顔の男がマンションの奥から出てきた。自然と目が合うと、
あっ!あの人見たことあるわ!
ちゃんと確信に変わったから、自分もちゃんと仕事してるなってホッとした。
むこうものっちに気付いたみたいで、さっきから視線が絡みまくってる。こうゆう時、どうすればいんだろ?
とりあえず“ニコッ”少し愛想良く笑ってみたら、その人は少し笑って、でも困ったみたいな顔をして近寄ってきた。
『こんばんわ。』
思ってたより低い声が響いて驚いた。“あ、ども”って頭を下げたら、
『仕事中じゃないんだから、そんな改まんなくていいよw』
そう言って笑った彼は、“ちゃんと俺のこと覚えてる?”そう聞いてきた。
『はいwもちのろんで覚えてますよw』
優しそうに笑うその姿に、ついつられてしまう。
仕事関係の人には愛想良く!
いつもあ〜ちゃん言ってるもんね。こんな時でも冷静に思い出したよ。
『あ〜ちゃんとこ、来たの?』
『はい!』
ニコニコ優しい顔をする彼に返事をする。けど、、、
ん?
あれ?
『なんで?』
どうして?
『ん?』
なん、これ?
『なんで、あ〜ちゃんとこ知ってるんですか?』
なんで?だってそんな。知ってる人なんて限られてるじゃんか、、。
だけど彼は顔色一つ変えないで、平静と優しく言ってのけた。
『あんまさ、寂しいおもいばっかさせないでよ?』
優しく笑ってのっちの肩をポンポンって叩くけど、なんだ?このまとわりつく湿気みたいな気持ち悪さ。
『あ〜ちゃんとこ、いたんですか?』
震える声に気付かれたくなくて、顔も見ないで聞いた。
『う〜ん。言いたくないなぁw本人に聞いて?』
なんで優しい口調がこうも続くのか?
もうしゃべりたくないから急ぎ足であ〜ちゃんの部屋にむかった。
後ろから声がする。爽やかすぎて、ちょっとヒクくらいの声が。
『俺ならさせないのになぁ!!』
うるさいな!
お前、誰だよ!?覚えてねーよ!!
ねぇ、あ〜ちゃん?
何これ?何この感じ?
どうしたらいいの?
《現在》
サイドN
やっぱりかしゆかはお見通しで、のっちの考えてること、思ってること、言葉にしなくてもこれほどまでにわかってくれる人、絶対他にはいない。
『ちゃんと終わりにしよ?』
終わりにできてないことも知ってるんだね。
あの時は“さよなら”なんて言葉ひとつで終わりになんかできなかったんだもん。
あれからずっと支えてくれたのは紛れもなくゆかちゃん。
『そしたらまた始めよ?ゆかと。』
それまで信じて待ってるからって笑った顔は、もうなんて言うか、恋とか愛とかそんな言葉じゃ表せない。
かしゆかを表す感情は、
“どんな言葉も物足りない”
だって“優しさ”だって並じゃない。
“愛しさ”だって並じゃないよ。
口に出して言える程、安くも軽くも薄くもないんだ。このかしゆかって女は。
『あれから連絡した?』
あれから?
それっていったいいつから?
“さよなら”を言い合った日から?
それとも毎日会っていたのが嘘みたいになくなった日から?
でも、そっか。どっちもだ。
“さよなら”を言い合っても、嫌でも仕事は続いてたっけ?でも連絡はとらなかったな、、。
『・・・・・してない。』
ううん。してない。ってのは嘘。
のっちにはできなかったんだ。
震える指と、怖がる心に気合いを入れられるほど強くもなければ、もう強くなろうとも思ってなかった。
『待ってると思うよ?あ〜ちゃんも。』
優しい口調で言う言葉。いつの間にか、それさえも優しい。
『・・・そ、うかな、、?』
のっちが情けないことには変わりないんだけど。
『うん。待ってるよ、のっちのこと。』
ちゃんと連絡して、
ちゃんとごめんって言って、
ちゃんとありがとを伝えて、
ちゃんと解決して、
ちゃんと“あ〜ちゃん”を完結させて?
ゆかはその後でいいよ。散々待ったんだから、そんくらいどうってことない。
かしゆかはそう言って笑った。
別れのあの時から何年もたって、その間に大人になって、少しは強くもなって。だけど反面もろくもなったりしたけど、ずっとかしゆかがいてくれたことは間違いない。
けど、ずっとあ〜ちゃんのこと考えてたのも間違いじゃない。
忘れたことなんてない。考えなかった日なんてない。
その上で、この人を選んだことも間違いじゃない。
ねぇ、あ〜ちゃん。元気にしてますか?
のっちもかしゆかも元気だよ。
“さよなら”って言葉。あの時確かに言ったけど、本当は終わりになんかできてなかった。
でも今はね。別れとか、もう会わないとかじゃなくて、ちゃんと完結させなくちゃって、のっち思うんだ。
だってのっちの中のあ〜ちゃんとの思い出。最後のあの時ばかり甦ってくるんだもん。
本当は、あんなに笑い合ったんだから幸せなの思い出したいんだよ。
ねぇ、あ〜ちゃんはどう思う?今更って思う?思わないよね?だってあ〜ちゃんだもん。
待っててくれてるのかな?あれだけ待たせてばかりいたのに、、、むしがよすぎるかな?
でも、ちゃんと終わりにしよう?ちゃんと二人のお伽話、完結させよう?
そしたら今度はノンフィクションの世界で、また笑えるのかな?
ねぇ、あ〜ちゃんはどう思う?
最終更新:2009年08月22日 22:21