それは、忘れたころに届いた。
いや、忘れやしないけれど・・・
ようやく
そう、ようやく
あなたのいない生活に慣れ始めたころ
一人の生活に慣れ始めたころに、届いた。
ポストの中に、小包。
何気に手に取る。
宛名の文字を見て、心臓がびくんと波打つのがわかった。
差出人の名前は書かれていなかった。
けど、わかる。
丸くて、クセのあるちっさな文字。
っ、ゆかちゃんだ!
慌てて部屋に戻り、無心で封を開く。
中には、一枚のDVDが入っていた。
それと、メモ。
『誰からか、わからんかったら、見ないでね』
わからないわけないじゃん!
指先が震えてることに気付く。
ふぅー・・
一つ深呼吸。
再生。
画面が切り替わる。
かちゃかちゃと、カメラをセッティングしてる姿。
顔はまだ、映ってない。
けど、ゆかちゃんだ。
ふらっと、現れる。
ね?ほら。
紛れもなく、愛しいあなたの姿。
それだけで、
もうのっちの胸はいっぱいで・・
うまく、息もできない。
相変わらず、きちりと揃えられた前髪。
そこから、ちょこっと覗く、つぶらな瞳。
画面越しに、目が合う。
ふにゃっと笑う、その笑顔は
あの頃と、なんにも変わってなくて
変わってないからこそ、泣きそうになる。
『・・・久しぶり、、、のっち』
『・・・怒ってる?・・・よね…』
別に。。怒ってるわけじゃないよ。
『ごめんね、突然いなくなって・・いっぱい傷つけて…』
少し、、、痩せた、、、かな?
天邪鬼。
素直になれない、あなたはいつも
ホンネを話す時は、今みたいに、視線が少し揺らぐ。
『今日はね、、、久しぶりに、頭がスッキリしてるんだ。
だから、ね。今日しかないって、、そう思って』
視線が、のっちを捕らえて、、止まる。
『・・・あの日のこと、、、覚えてる?』
うん・・・
『ずっと、一緒にいようね、、、そう誓った日のこと』
うん・・・
『そのとき、、、ゆかの言ったコトバ、、、も・・?』
うん・・・
『ズルくて、、、ごめんね』
そう言って、ぺろっと舌を出す。
あぁ、、もう・・・
のっちが、その表情に弱いの知ってんでしょ?
『でも、、言ったじゃん?ゆかは、ワガママだよって』
わかってるって。
『それでもいいよって、そう言ったのは、のっちだからね?』
意地悪そうに笑う。
うん、だからわかってるって。
『・・・・でも、、、一方的すぎた、、、よね?』
『うん、、、でもやっぱ、、、弱っていくゆかじゃなくて
元気だった頃のゆかを、のっちには覚えていて欲しくって…』
あぁもう、そんな瞳で見つめないで・・・
『だって、、、これからのっちは、ゆかと過ごした時間の
何倍もの時間を、、、、
伏せられた、瞳。。。
のっちも、熱いなにかが込み上げてきて
視界が滲む。
コトバも、それに溶けて流れる。
『・・・ゆか、、、先に行ってるね…?』
『寂しいからって言って、前倒しにしてこっち来ちゃダメ、だよ?』
あぁ、、、もう・・・
『あっちでさ、いろんな話聞かせてもらうんだから。
そんときはきっと、いっぱい、、、いっぱい時間があるから、、、
きっと、あるから・・・ゆかを飽きさせないほど、たくさんの
話をできるように、、、、らしく、、、のっちらしく、生きて、、ね?』
ゆかちゃんのいない、、、この世界、、で?
あぁ、、、、、運命ってのは、なんて残酷なのさ…?
『・・・ちょっとのお別れ、、、だよ。
ゆか、ずっと待ってるから、、、、きっと、また会えるから』
なんなんだよ、、もう。。。。
全身を、、
いや、心臓を直に
ぎゅっと掴まれたみたいに苦しい・・・
それ以上に、愛しい。
もうなんで、、こんなにも
泣きたいほど、愛しいんだよ。
『あ、、、のっち泣いてる・・・?』
画面の中の、ゆかちゃんは
笑ってるけど、、、瞳は潤んで、紅い。
すっと、腕が伸びてきて
そっと、涙を拭うように
細く長い指先が動く。
『さみしい、ね・・・・』
うん、、、さみしいよ・・・
『・・・でも、、、もう、泣かんでよ…?
ゆかのワガママで、いっぱい泣かせちゃったけど・・
もう、、泣かないで、ね?』
その指先がほんとに触れられたかのように
頬を伝うそれが、少し落ち着いた、、、ように感じた。
『のっち、、、ねぇ、、、、笑ってよ?
ゆかはね、その、のっちの困ったような笑顔が大好きなんだよ?』
困ったような、、、て・・・
自然と頬が緩む。
『ありがと。。その笑顔があれば、、、ゆかは、穏やかに、、、いける、よ』
っ!
その笑顔は
今まで見た、どんなのより
穏やかで、せつなくて、儚くて・・
最高に、甘い甘い、、、、幸せそうなものだった。
伸びていた腕。
手のひらは開かれていた。
すっと、同じように伸ばし
そっと、、、
手のひらを重ね合わせた。
ブラウン管を通してんのに、、、
あったかい、彼女の熱が伝わってくるようで・・・
『愛してるよ、のっち』
愛してるよ、ゆかちゃん
囁いたのは、同時。
にこって、やわらかな笑顔のゆかちゃん。
次の瞬間には
『あぁ、もう時間ないかもっ!
ごめんね、もうそろそろ』
そういって、バタバタし始める。
『ほんと、最近、すぐにわかんなくなっちゃうんだ。
だから、これも早く、ちゃんと送れる準備しなきゃ!
せっかく、“最後の挨拶”できたんだから・・・』
はは、、、忙しないなぁ。
…最後、、か。。。。
『じゃぁね、のっち!』
プツン
それは、あまりに普通に
「じゃ、また明日」
そんな感じで
閉ざされてしまって。
感傷に浸ることを、許さないかのように。
浸る必要なんかないんだよ?
そう言わんばかり、に。
まいったな、ほんと。
先は長いな・・・
でも、、、うん
またね、ゆかちゃん。
今度、出逢ったら
もう、絶対に離さないから、、、ね?
だから、その日まで
あなたの
あなたとの
キヲクノカケラを胸に。
最終更新:2009年08月22日 22:38