「あー面白かった。」
「ね、ちょーうける。」
「それうけてなくない?」
「うけとんじゃん!」
替え歌を歌ったゆか達は、笑いまくる。
それからあ~ちゃんがキョロキョロとして、首を傾げた。
「のっちがおらん。」
「先にはけたとか?」
「えー、相変わらずじゃ。」
けらけらとあ~ちゃんが笑う。
でも、ゆかは笑えなかった。
のっちがいないのは寂しいもん。
そんな事を思っているうちに、目線は冷たい床に落ちていた。
「あ、のっち。」
あ~ちゃんのその言葉で、顔が反射的に上がる。
のっちが小さな紙袋を二つ掲げてポーズを決めていた。
そして口を開いた。
「ハッピーほあ、ホワイトデー!」
「噛んどるよ!」
瞬時にあ~ちゃんがつっこむ。
羨ましく思いつつのっちがいる安心感に、あたしは自然と笑みが溢れた。
「のっち貰っただけだから。」
「料理下手じゃけんね。」
「っつって嬉しいくせに。」
のっちはあ~ちゃんのdisを楽しそうに返す。
やっぱ気にくわない。
「かっしー顔恐いぞー。」
「ちょ」
突然視界に現れたのっち、当然ゆかは驚いて。
「…ちょー痛いちょー痛い」
「ごめん!」
のっちの顔面を叩いてしまった。
それでも笑い、手を横に振ってくれた。
涙目だよ、…強がり。
「はい、これね。」
「ん、ありがと…。」
のっちが紙袋を差し出した。
受け取ったそれには、小さく「かしゆか(ハァト)」と書いてあって、それだけで幸せだと思えた。
あ~ちゃんは既に中身を机に並べていて、のっちが「既製品ですがー」とおちゃらける。
ゆかも紙袋に手を差し込……めない。
「ん?」
「だめ。」
「えぇ?」
「後でいいじゃん、ね?」
のっちが手を掴んで離さない。
力を入れても動かない。
「ゆかも今見たい。」
「汚いからだめっ。」
「ぇ?…そんな言うならいいわ。」
どうしても聞かないから、諦める。
汚いってのは意味がわからんかったけど。
家に着いて、紙袋からラッピングされたものを取り出す。
無造作なラッピングが、のっちらしい。
のっちらしい?
ゆかの、既製品じゃないの?
確かめるべくラッピングを解く。
「…汚い」
よくわからないデコレーションのチョコやクッキー、相変わらずだった。
でも。
「嬉しい…」
明日はこの事でのっちを構えば、独り占め出来そうな気がした。
いや、独り占め出来る。
最終更新:2008年10月09日 23:53