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《過去》


サイドN


“のっちじゃなきゃ嫌”
そう言ってあ〜ちゃんは泣いた。
“許して”と、のっちのために泣いた。
この恋は運命だ。とびっきりの恋だ。
そんな恋には障害なんて付きものだ。そんなもの跳ねとばせなくちゃ、、。
この先ずっと一緒にいるんだから。それだけ本気で想ってるんだから。


ねぇ、あ〜ちゃん。わかってる。わかってるよ。
これでおあいこだ。そんなこと、いくらのっちでもわかってる。
あ〜ちゃんは許してくれた。
何も言わないでって、涙をいっぱい溜めた目で、無理して笑ってくれた。


でも、
のっちはあ〜ちゃんじゃ、ない。
ごめん、のっち、わりきれない。それって凄く難しいことなんだね。
ごめん、あ〜ちゃん。のっち、なめてた。あんなこと、笑い飛ばせると思ってた。
だけど実際は、自分のことを棚にあげて、、、考えたくなかった。
爽やかすぎるくらいのあいつの声が耳から離れないよ。考えたくないのに、考えちゃう。
いつだって妄想は生々しくて、許せない自分がいることに気付くんだ。


ねぇ?あ〜ちゃんはどうやったの?
どうやってのっちのこと許したの?
その方法、ちょっと教えてくんないかなぁ。
だってのっち、何も解決できてなくて。何も許せてなくて。全然すっきりしてないよ。
次に進みたいのに、両足首を縛られてるみたいだ。
助けて、あ〜ちゃん。
のっちの手を引いてよ、、。




《過去》


サイドA


“しょうがないよ”
なんて、全然しょうがなくない顔でのっちが言った。
だけど私はそれに気付かないフリをした。だって許してほしいから。
のっちじゃなきゃ嫌。そんなの当たり前。


運命の恋だから。とびっきりの恋だから。早く次に進みたくてのっちの手を引いてみるけど、のっちはピクリとも動かないまま。
まるで逆側から誰かに引かれているみたいに、、。


お互いを許し合ったあの日から、のっちは本当に優しくて、少しも不安にさせないように、連絡もマメに。会う頻度も増えた。
目を細めて優しく笑うのっち。
情けない声で甘えるのっち。
どれも全部私にむけられた愛情表現。
可愛い子犬に擦り寄られる母犬みたい。
ただ、以前と違うのは、、、


のっちは触れてこなかった。
最初は気分とか体調だと思ったけど、どうも違うみたいだね。
そうだよね。子犬は母親に甘えるけれど、抱き締めはしない。


ねぇ、のっち。
いくらのっちの手を引いても動かないのは、“誰か”の存在じゃなくて、のっちが自ら“動こうとしてない”んじゃない?
あ〜ちゃんは許したんだよ。
のっちもそうしてよ。
そんなの相手を想う気持ちが強ければ簡単なことでしょ?


でも、、、
のっちはあ〜ちゃんじゃ、ない、もんね、、。
いくら想い合っても二人はフタツ、別々で、
“ヒトツ”ではないもんね。






最終更新:2009年09月03日 19:41