N
体育祭当日。
私はそれどころじゃなかった。
昨日のことで頭がいっぱいだった。
早いところでこの気持ちを捨てないと、歯止めがきかなくなりそうだ。
…いや、もしかしたら、もう手遅れなのかもしれない。
体育祭が終わって、昨日と同じように倉庫で片付けをしていると。
「大本先生、今大丈夫ですか?」
クラスの吉田さんって子だった。
「大丈夫ですよ。どうしたんですか?」
「あの…、私先生の事好きなんです。…良かったら付き合って下さい。」
「え…。」
…まいったなぁ。答えは決まってるけど、傷付けない上手い断り方がなかなか思い付かない…。
私が答えられないでいると…。
「吉田さん。先生には好きな人いるから無理だよ。」
「…え?」
「あ…、樫野さん。」
いつから居たんだろうか。
それより、吉田さんは逃げるように帰ってしまった。
そりゃそうだ。告白するところを聞かれた上に、横槍を入れられたんだもん。
「帰ちゃったね。」
「え…。あぁ、うん…。」
「余計な事、言わない方が良かった?」
「あぁ…まぁ。」
「でも…、好きな人がいるのは本当の事でしょ?」
「…うん。」
あ〜ちゃんが好き。…だけど。
「先生って格好良いところもあるけど、可愛いところもあるからねぇ。モテるでしょ?」
「いや…そんな事ないと思うけど…。」
樫野さんは何を考えているんだろうか…。
「昨日も言ったけど。ゆか、先生になら何されてもいいよ。…しよっか?」
「…え。」
昨日と同じだ。
また、キスされてた。
少しずつ、理性がなくなる。
ただ…、夢中だった。
気付けば日は暮れていた。
夕方だって言うのに蒸し暑い。
暑さで思考が働かないけど、これだけは分かる。
教育実習生としてやってはいけない事をしてしまった。
あ〜ちゃんと言う恋人がいるのにやってはいけない事をしてしまった。
ことを済ませた後、樫野さんは「またやろうね」とだけ言って帰ってしまった。
あ〜ちゃん、ごめん…。これは浮気だ。私は最低だ。
そう思うのに、樫野さんの事を好きなのかと思ってる私は本当に最低だ。
きっと、これは暑さのせいだよね。
そう。
全て、暑さのせいにしてしまおう。
つづく
最終更新:2009年09月03日 19:56