のっちからの、電話。
初めての、電話。
そう、仕事以外での、初めての、電話。
なんなんだろう?・・・なんか、あった?
確か・・・今日、社長に呼び出されていたよ、、ね?
ドクン・・あ、胸がイタイ・・・ズキズキと痛み、ぎゅっと締め付けられて、息ができない。
そんなわけない、よね?・・離れ離れなんかに、なんないよ、、ね?
発作にも似た、息苦しさと格闘していると、ピンポーン、、、のっちがやってきた合図。
部屋に通し、ソファに腰を下ろす。
二人とも、無言のまま。。。息苦しさがまとわりついて、眩暈を起こしそうだ。
「急にごめんね」
「んーん・・なんか、あった?」
「んー・・・ちょっと、ねぇ・・・」
のっちのおっきな瞳は、宙を漂っている。眉はいつも以上にハの字。
なんだか得体の知れない不安に襲われ、怖くて何も聞けない。
ふわふわしていた視線が下りてきて、ゆっくりとゆかを捕らえる。
やさしく、やわらかく、、、そして不安そうに微笑む。ぎゅっと手をとってくるのっち。
ふぅ・・・大きく深呼吸したかと思うと
「中田さん、戻ってくるんだって」
そう呟いた。
「そ、、なんだ・・」
あ、ダメだ、、、頭の中が真っ白になって、、、目の前が真っ暗になって、、
中田さんが戻ってくる?・・・え、戻ってくるの?彼、が?
なんで今ごろ?・・・・なんで、今さら?
え、てか、、「のっち、代わっちゃうの?」
「んーん、、、今のとこ、その予定はないって、、、さ」
…そっか、、、え、でも、、 “今のとこ”・・・?
「ただね、、」・・・ただ?
「音楽面で、支えたいんだって、、さ」・・・あぁ、、昔も、そんなこと言ってたっけ…
真っ白は頭はうまく働いてくれそうにない。
真っ暗なこの瞳は、うまくのっちをとらえることができない。
足元がとても不安定で、ふらふらする、、くらくら、する・・・
ポン。のっちの手が、頭にのっかり、そっと撫でてくれる。
「大丈夫?」
「・・・わかんない」
「そっか、、そだよね」
さらさらと、髪の上を流れるあたたかな手のひら。
「でも、、ゆかちゃん次第、かな」
「え?」
「中田さんの音楽的才能、事務所としては欲しいってのがホンネだろうけど」
最近じゃ、海外で話題になってたよね・・・知ってる、よ・・・
「けど?」
「ゆかちゃんの、キモチ次第で、対応は変わってくると思う」
「ゆかの、、キモチ?」
流れる手のひらが、肩を滑り落ち、指先にたどり着く。
「ねぇ・・ゆかちゃんにとって、中田さんは今もまだ、トクベツな人?」
真っ暗だった視界が、少しずつ晴れ、のっち特有の困ったような表情が現れる。
「・・・のっち、知ってたん、、だ?・・・そっか、そだね、、、知らないはずない、よね」
「知ってるっていうか、、、うん、でも、、よくわかんないよ」
どこから、どう話せばいいのかわからなくって、言葉に詰まる。そんなゆかを、のっちが手を引いてくれる。
「・・・好き、だったんだよね?」
「…うん」
「・・・付き合ってた、、の?」
「…うぅん、、てか、わかんない。・・付き合うことなんてできない関係だってわかってたし・・でも・・・」
「でも?」
「ゆかは、両想いだと思ってた、、、けど、独りよがりだったのかな?わかんないや、、コドモだったし」
「そっか・・・今、は?」
「…わかんないよ・・・戻ってくるなんて、思ってもいなかったし・・・」
「そっか・・・・」
そう呟いた言葉は、部屋の隅に消え、沈黙が訪れた。
次に、空気を動かしたのは、ゆか。
ここで正直になんなきゃ、、、のっちはきっと、、ホンネをみせてくれない。。。
「ほんとの、本気で好きだったんだ、、彼がいたから、ここまでこれた」
「うん」
「ずっと、そばにいてくれるものだと思ってた」
「…うん」
「だから、、いなくなっちゃったときは、、ほんとつらくって、、、ずっとずっと願ってた、、戻ってきてって・・」
「・・・」
「けど、ね?のっちと出会って、そばにいてくれるようになって、少しずつ思い出すこともなくなってきて
いつの間にか、戻ってきてって願うキモチもどっかにいちゃってたんだ」
「・・・」
「ほんと、だよ?」
「うん…」
今のゆかにとって、のっちはかけがえのない存在。このキモチに、微塵も偽りはない。
「じゃぁ、、さ?」
「ん?」
「ゆかちゃんにとって、、、、のっちってどんな存在?」
あぁ、、そっか、、、もう曖昧なままじゃ、いられないんだね・・・
そう、もういられないんだよ、、、、のっち?
壁を越えよう?
彼が戻ってくる。
これはもう、ゆかと彼の問題だけじゃない。
うぅん、、、きっと、ゆかとのっちの問題なんだ。
目の前ののっちは、すーっと大きく息を吸い込み、はーってゆっくりと吐き出し、搾り出すように呟いた。
「のっちたち、、、、どうしよっか?」
最終更新:2009年09月03日 20:03