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女の子と付き合ってるなんて親にばれたら、なんて言われるだろ。きっとしばらく口聞いてくんないだろうな。お母さんもお父さんも打たれ弱いし、結構あぁ見えて厳しいから、怒鳴ったりなんかもするかもしんない。
だけどしばらくしたら、お母さんは「好きにしんさい」って、諦めたみたいに溜め息を吐きながら言うんだろうな。そしてお父さんはきっと「今はまだ若いから、これから考え方も変わるだろう」と前向きで優しいけど全てを否定するんだろう。


お母さんお父さん、短大を卒業して、広島に帰らないで東京で就職しちゃったゆかも、今年で21になります。社会人になって半年が経ちました。会社には結構慣れたけど、部長のセクハラは止まる事を知りません。今日は太ももを掴まれました。
短大に通う為に東京で慣れない一人暮らしを始めて、もう二年半。だけど一年とちょっと前から同居人が増えました。まぁ、いわゆる同棲です。恋人と暮らしてます。なんとビックリ、女の子です。えらく美形です。


仕事が終わって、夜ご飯の買い物をスーパーで済ませて、お腹を空かせているであろう恋人の待つアパートに急いで帰ったけど、1LDKの部屋には灯り一つ点いていない。ガラスのテーブルには一枚のメモが。
『学校のトモダチとゴハンいってくる。』って、あの丸くてバラバラな文字がハッキリと書かれていた。

「…だったら…メールしろっつーの」

ただムカついたから、そのメモをグシャグシャにしてゴミ箱に投げつけてやったけど、見事に大きく外れた。ビニール袋には野菜やお肉にカレー粉、彼女が好きなお酒も入ってる。

同い年だけど、彼女は四年制の大学に通っている。だから短大卒の私は一足先に社会人だけど、彼女はまだ学生だ。自由な身が羨ましくもあるけど、働く事は嫌いじゃない。会社も皆、優しい人ばかりだし。
不満があるとすれば、彼女だ。一生懸命働く恋人の帰りを、たまには待ってくれたって良いじゃないか。「おかえり、お疲れ様」って、ゆかが部長にセクハラされて気分が悪い日くらい言ってくれたって罰は当たらないと思うよ。


こうしてゆかは昨日彼女が借りてきたDVDを見ながら、野菜無しのカレーを一人分作って、ビールをちびちび飲むんだ。あんまりお酒は好きじゃないけど、なんかムカつくから。
食べ終わったら片付けをして、シャワーを浴びてまたビールをちびちび飲みながらDVDを見て。彼女に何度か電話してみても、留守電だし。

結局、時計の針が12時をさした時に、重い鍵の開く音がした。ゆっくりとした足音に、ゆっくり振り返る。

「ただいま」

ゆかが1ヶ月前に切り揃えてあげた前髪は伸びて、大きな目に掛かってしまっていた。それをウザそうに掻き上げた彼女は、ストールを外しながらそのまま浴室に向かった。

「ただいま、って……それだけかよ」

今日はゆか、かなり苛立ってるみたい。いつもはこんなにムカつかないのにな。やっぱり全部、部長のせいだ。






ゆかは子供みたいに、そんなムカつく彼女の嫌がる事をしたくて、部屋の灯りを消してベッドに潜り込む。浴室から出て部屋が真っ暗だったら嫌だろうな、っていう小さな小さな嫌がらせ。
だけど彼女は何も言わないまま、歩き慣れた真っ暗なベッドまでのルートを臆する事無く突き進む。もう当たり前みたいにゆかの隣に潜り込んでくるんだ。ゆかは壁側、彼女は外側。

「…のっち」
「ん?」
「遅かったね」

待ってたんだよ、ずっと。それなのに帰りは遅いし電話かけても出ないし。のっちの大好きなカレーを作ろうと思ったのに、一人分だから失敗して焦がしちゃったし。

「ご飯の後…ちょっと飲んだから」
「ねぇ、ゆか前に言ったよね?ご飯いらない時はメールしてって」
「…言ってたかも」
「言ってたの」
「どうしたの、怒ってんの、」

別に、怒ってなんか。そう言おうとしたけど言葉にならず、代わりに嗚咽が漏れた。格好悪い、こんな格好悪いとこ、曝したくないのに。たまには強く、優位に立ちたいのに。

「…ごめんね、今度はちゃんとメールする…」

背中に温もりを感じて、柔らかい肌も感じた。その長くてしなやかで柔らかい手がゆかを後ろから抱き締めて、きゅっと手を握ってくれた。

「……バカのっち」

そんな風に謝ったって、違うんだから。のっち頭おかしいんじゃないの。メールをしなかった以前に、ゆかは、のっちに家に居てほしかったの。付き合って二年の記念日くらい、一緒に過ごしたかったの。

のっちはもう、冷めちゃったのかな。ゆかももう、のっちが好きなのか分からなくなってきた。エッチだって、最近ずっと、してないし。

「ゆかちゃん、ごめんね」
「ちょっ、と、」
「…久しぶりだね」
「誤魔化さないでよ、」

のっちは何の遠慮も無しにゆかの服の中に手を侵入させる。こんな時に、ゆかが泣いてるっていうのに、のっちはなんでこんなに勝手で無遠慮なの。ムカつく。ムカつくくらい、ゆかの扱いを分かってる。

「すっげ、ぐっちゃぐちゃに濡れてんじゃん」

笑った息が耳に当たって、それだけで多分さらに濡れた。きっとずっと、エッチしてなかったからだ。ゆかずっと、欲求不満だったんだ。

「もう、脱いじゃお」

のっちはそう言って服を脱ぐ。ゆかも脱げって意味だろうけど、ゆかは裸になるのっちをただ黙って見つめてた。いつ見ても綺麗な体。そんなゆかに振り返って、「脱がないの」って笑って見せた。
ゆかはもぞもぞと、焦らすみたいにショーパンを脱いで、今度はまたゆっくり上を脱いで、それを見つめるのっちは目で「早く」って言ってるけど、それでもゆかはゆっくり時間をかけて脱いだ。

「焦らすね、のっちにやらせて」
「……はい」

どうぞ、と胸を差し出すと嬉しそうに手を伸ばした。ブラの隙間から手を入れて数回軽く揉んだ後に、のっちはホックを外した。外したブラをベッドの下に投げ捨てて、ゆかの上に覆い被さる。


やっぱり、


「好き…」
「…のっちも、好きだよ」
「…のっち」
「うん、」

何度も何度もキスをして、ゆかはのっちの腕の中で何度も果てた。
次の日は、あの苛つきが嘘みたいにのっちにベタベタで、休日なのを良い事に、ずっと部屋で手を繋いでいた。


二年と一日、きっとこれからも上手くいく、そう信じてゆかはのっちの前髪をまた切ってあげた。

「ちょっと切りすぎじゃない〜?」

と鏡とにらめっこするのっちに、「そんくらいがのっちの大きな目がちゃんと見えるけ、良いの」と言ってあげると、のっちは調子に乗ってニヤニヤしてた。
まぁ本当は、普通に切りすぎただけなんだけどね。



◇01:終◇






最終更新:2009年09月03日 20:05