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《過去》


サイドA


あぁ、どうしてこんなことになっちゃったんだろう。
薄暗い部屋で目が覚めると私は一人。抱えた膝は細くて頼りなくて、自分の涙も受け止められないくらいに情けない。
どうしてこんなことになっちゃったんだろう。


『・・・・・のっ、ち、、、』


ため息と一緒に洩れたのは、生涯唯一愛した人の名前。
なのに部屋に残るのはメンソールの煙草の匂い。
あぁ、もう。なんなんよ、、。
なにやってんだろ、、私、、、。


こんなにも貪欲で欲しがりな自分に気付かされる日常は、いとも簡単に守りたかった壁を壊した。
自分でも驚く程に脆くできていたその壁に、情けなくて涙が溢れ出るけど、この涙は自分勝手以外のナニモノでもないよね。
のっちを想って流れたそれも、自分の抑えきれなかった欲望に染まって、ちっとも綺麗じゃなかった。




『綺麗だね。』
それでも彼はそう言うから、我慢しようとしたそれが、次から次へと溢れ出る。
でもね、ちっとも綺麗なんかじゃないよ。
のっちの心、ボロボロにした。
猛毒だよ、これは。





《過去》


サイドN


あ〜ちゃん。いつだって太陽みたいな、のっちのあ〜ちゃん。
あ〜ちゃん。いつだって眩しすぎるくらいな、のっちだけのあ〜ちゃん。
あ〜ちゃん。のっち不安だ。いつになく不安。
もしもね?もしもの話だけどね。
もしも、のっちの目が見えなくなった時に、あ〜ちゃんをあ〜ちゃんだと認識できる“ナニカ”が欲しいの。
もしも、のっちの耳が聞こえなくなったら、あ〜ちゃんの歌声を、のっちを呼ぶ声を、感じとれる“ナニカ”が欲しいの。
もしも、のっちが全部忘れちゃったとしても、あ〜ちゃんって呼び方とか、手の繋ぎ方を、思い出させる“ナニカ”が欲しいの。
もしも、のっちが大好きなあ〜ちゃんを、そう想えなくても、あ〜ちゃんが好きだったことを、よみがえらせる“ナニカ”が欲しいよ。


変わりたいわけでもない。でも、変わりたくないわけでもない。だけど、変わってしまうのかもしれない。
のっちも、あ〜ちゃんも、かしゆかも、スタッフも、家族も、友達も、環境も、状況も、世界も、想いも、何もかも“今のまま”ではいられないでしょ?
だってほら。大好きなのっちの太陽は、煙草の煙って名前の雲に隠れちゃった。
もしかして、雲は太陽を守ってるのかな?
頑張りすぎないように。ちょっと休め。って、そう言ってあげてんのかな?


のっちだけのあ〜ちゃん。太陽みたいにあったかくていい匂いがした。
ただのあ〜ちゃん。メンソールの煙草の匂いが隠しきれてない。
太陽だって、いつも晴れてるわけじゃないよね、、。


それでも変わらない“ナニカ”が欲しかった。


でも、それはもう“運命の恋”とか“とびっきりの恋”とかじゃないよね。もうそこに“愛”は当てはまんない。
のっち、二回目は無理かもしんないな。いや、むしろ無理だろ?これ。


あ〜ちゃんが無くしたんだ。
“ナニカ”なんて、ないよ。







最終更新:2009年09月03日 21:10