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私の実家の近所にとても大きな公園があった。
小さい子はみんなその公園に遊びにくる。私も小さい頃その公園でよく遊んでいた。
あれは私が8歳の頃。凄く暑い夏の日のことだ。


夏休みで友達と日が暮れるまで遊んでいた。
6時だと教える鐘が鳴り響き、帰ろうと家に向かって走っていると、公園の真ん中にある大きな桜の木の下でうずくまっている子がいた。
心配で近寄ってみるとその子は私より小さな子。
「ねぇ、どうしたの?お家帰らないの?」
顔をあげたその子は泣いていた。
何も言わずまた俯いてしまう。
何も話さないし、遅くなると親にも怒られちゃうし、帰ろうと思っていると、ある事に気付く。
服は泥だらけで、靴が片方無かった。
遊んでいて靴を無くしてしまったのか。
「片方の靴、どうしたの?」
「…知らない子にぃ、…とられちゃったの…。」
話を聞いていくと、どうやらこの公園で一人で遊んでいたらしい。んで、知らない子何人かにいじめられて靴を無くしてしまったらしい。靴が無いから家に帰れないとここでうずくまっているそうだ。
「じゃ、一緒に靴探そう!」
「…いいの?」
「うん!ほら、探そう!」
「うん!」
広い公園を二人で歩き回る。探している間もこの子が寂しくならないように話をした。
この子は最近この辺に引っ越して来たらしく、友達がいないらしい。この子の親は友達を作りなさいと言って公園に行かされるけど、上手く友達が出来ずにいたらしい。
だから、私は友達になろうと言った。
その子は嬉しそうに笑うから私も嬉しくなった。






長い時間が過ぎて空は明かりを失い真っ暗になっていた。
「…あ!ママだ!」
夜遅かったから、心配してその子の親が迎えにきた。
親に事情を説明してその子は親に手を引かれ家に帰っていった。
「また、明日ねぇ」って言って嬉しそうに帰るから、私は友達が一人増えたと思って嬉しかった。



次の日から私と私の友達とその子でずっと遊んだ。
その子をいじめていた子を追い払ったり、公園以外の遠くの場所まで行って迷子になったり、みんなで泥だらけになるまで遊んだり、凄く楽しい夏だった。


ある日。
いつものように遊んでその子を家まで送っていると、
「お姉ちゃんって優しいね!お姉ちゃんのこと大好き!」
「ほんとにー!私も大好きだよー!」
「ねぇねぇ!」
「何?どうしたの?」
「大きくなったらお姉ちゃんのお嫁さんになりたいなぁ!」
「お嫁さんからw嬉しいなー!んじゃ、大きくなったらね!」
「うん!約束だよ!」
「じゃ、指切りげんまんしようか!」
「うん!」
そう約束した次の日からその子は公園に来なくなってしまった。
凄く悲しくて、いつもその子を探していた。
でも、年を重ねるうちにすっかりその子の事を忘れていた。
たまに、その子の事を思い出してもさ。暑い夏に見る蜃気楼のようなものなんだったと思った。



そんな事を忘れていた、大学4年の暑い9月の事。
私の前にまた蜃気楼が現れた。
そう、あの時のその子の名前はゆかだった。
樫野有香。
樫野さんはあの時の子だったんだ。




つづく






最終更新:2009年09月03日 21:27