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サイドK


さっき出たばかりの部屋に戻ると、
『あー我が家の匂いw』
そう言ってのっちは深呼吸した。
『おかえり』
改めて言うと、のっちは柔らかく笑った。


荷物を置いて、上着を脱いで。
いつもと変わらない行動の一つ一つなのに、
隣で一緒にそれをする人がいるだけで、
なんでこんなに心が晴れるんだろう。


『淋しかった?』
バカのっち。
当たり前じゃん、、。
でも、、
『ううん。大丈夫だったw』
ニヒッて笑ったら、眉を八の字にしてのっちも笑った。
『ふ〜んw』
『うん!へっちゃらw』
冗談を言い合って、
ゆかの隣にはのっちがいて、
目の前で笑い合って、、、
当たり前なことが、こんなにも幸せだって、気付かなかったよ。


『でも、、、』
『ん?w』


『のっちは淋しかったな。』


そう言うと、先を歩くゆかをまた、いとも簡単にすっぽりと抱き締めた。
後ろから抱き締めるのっちの腕は力強くて、優しくて、
“淋しい”
なんて、のっちの口から聞けると思わなくて、
また自然と涙が出た。



視界が滲んだその先に、
『ん。』
と、のっちが手を出した。
『なに?』
私が聞くと、握っていたグーをパーに開いた。
『・・・かぎ?』
その上にあったのは古ぼけた鍵。
『うん。鍵。』
後ろからゆかを抱き締めたまま、ボソッと答えるのっち。


『・・・なんの?』
『アパート。』
んっ?
アパートってここの鍵?
とは、、違うよ、ね?どー見ても、、。
てか、これ、何?
これ、、、


『、、誰の?』
『ゆか、の。』
へっ?
ゆかの?
あ、、引っ越し?
ここより広い部屋に、、ってこと?
えっ、、じゃあ、、、


『、、どこの?』
『アメリカ。』
はっ?
いやいやいや。
意味わかんない。
どゆこと?
あ、アメリカ行った記念?とか?
・・・・・な、わけないじゃん!
バカじゃん、ゆか。
鍵なんか持って帰ってこれないし、、、


『戻るんだ。』


はっ!!??


抱き締めていた腕をほどいたのっち。
えっ?
今の、何?


のっちが目の前に立つ。
優しく笑う。
でも、のっち?
眉毛、、すごいよ?


『・・・のっち、ね?また、アメリカ行くんだ。』
『・・・』
『むこうにまだ、ちょっと、、仕事残ってる。』


じゃあ、何で、今!帰ってきたんよ?


『ゆか?聞いて?』



さっきよりも数倍優しくてあったかい声が聞こえた。
優しさのカタマリみたいなのっちがゆかの髪を撫でる。
おもいっきり目を細めて、柔らかく柔らかく笑う。


あ、もう、いいや。
この笑顔が見られるなら、ゆか、なんだっていいよ。
待て、と言うなら、待つよ。
のっちは好きにしたらいいよ。
だってもう、心は離れられないもん。
いくらだって、、待つよ。


『のっちね、じゃあ何で今帰ってきたかって言うと、、、』
あー、とか、うー、とか言いながら照れてるみたいに頭をガシガシした。
あ、、。
のっちは変わった。
って、思っていたけど、ゆかの好きなとこは変わってなくて、よかった。


『忘れもの、、しちゃって、、。』
『ん?忘れもの?』
『うん。』
二年も行ってて、今更忘れものとか、のっちらしいや。
のっちらしすぎて笑えてくるよ。



『・・・そっか。じゃあ、またすぐ行っちゃうんだ、、。』
『うん、、。』
『ふふっwのっち?
ゆかね、ずーっと待ってるよ?ずーっと。
だから、、行ってきて?』
『・・・淋しくない?』
『うん!大丈夫。待つよ!』
忘れものって何?
って聞こうとしたら、三回目。
またいとも簡単に抱き締められた。
『なっ、ん?どうしたん、のっ、、


『のっちは淋しい。』


抱き締める腕が強くなった。
優しかった声が少し震えた。


『のっち、忘れものした。』
『う、ん?何?』
『ゆか。』


ゆか?


何、それ、、。


ゆか、なの?


抱き締める腕は強くて、
震える声も強くて、
ゆかの頭はパニックをおこした。
のっちが顔を覗き込む。
抱き締めていた腕をほどいて、何度も何度もゆかのほっぺを撫でるから、
あ、ゆか泣いてる?
自覚なんか、なかったのに、、。


またも、簡単に、抱き締められたのっちの腕の中。
『ゆかが、、、




大事な大事な、忘れもの。』








最終更新:2009年10月22日 16:53