何が『ごめんね』なの?
キスしたこと?
抱いたこと?
傍にいて約束して守らなかったこと?
何も言わずに煙のように消えたこと?
それとも全部ひっくるめてなの?
そんでなんであの写真を置いていったの?
携帯はコール音だけだし。
留守電にもならないし。
突然の事すぎて、頭が追いついてってない。
最悪だ。
最悪の誕生日だ。
よりによってなんであたしの誕生日に消えるのよ。
出ていくなら、ちゃんと断って出てってよ。
ほんと意味がわからない。
あんなに優しく抱いてくれたじゃない。
ずっと傍にいてって約束してくれたじゃない。
守れない約束ならしないでよ。
軽はずみな返事しないでよ。
1週間。
1週間、のっちのことを血眼になって探した。
大学では彼女とたぶん付き合っていた子に、恥を覚悟で訊いてみた。
誰ものっちの自宅を知らなかった。
学生課で住所を教えてもらった。
アパートは引き払っていた。
大家さんも行き先を言ってなかった。
のっちが行きそうな、ライブハウス、クラブ、バーを片っ端から探した。
写真を見せたら、半分弱くらいの人がのっちの事を知っていた。
けど、誰も居場所は知らなかった。
あたしは結局のっちのことをまったくわかってなかった。
1週間、探し回って正直疲れた。
不思議と誰ものっちの行方を知らない。
もしかして知ってるけどあたしに言わないのか?って、本気で勘くぐったりもした。
あたしの誕生日でのっちとの奇妙な同居生活が終わった。
1週間が過ぎ、1ヶ月が過ぎ、半年が過ぎ、1年なんてあっという間に過ぎていく。
あたしは自分の誕生日がくるたびに、のっちに抱かれたことを思い出す。
思い出したくなくても、思い出してしまう。
最悪だ。
それくらい強烈な出来事だったから。
一種のトラウマだ。
のっちがいない生活に慣れても、ふとした瞬間に思い出す。
最悪だ。
もう思い出したくないのに。
だって思い出したら、涙が出て来るんだもん。
結局、のっちに直してもらう予定だった涙腺は壊れたまま。
もしかしたらのっちから電話が入るかもしれないから、携帯の番号は3年間変えなかった。
『もしかしたら』なんて、一度もなかったけど。
3年間、のっちを待ち続けた。
そろそろ待つのも疲れてきたから、これであたしが知ってるのっちの物語はおしまい。
——————
あーあ、この写真のせいで色んな事思い出しちゃった。
ほら、のっちを思い出すと必ず胸がヒリヒリ痛み出すんだ。
さっさっと、荷造りしなくちゃ。
今日は温かいから今日中に終わらせなきゃね。
明後日にはこのアパートともお別れか・・・。
ピン、ポーン・・・。
あれ?ちゃあぽんかな?
あたしは覗き穴で確認ぜず、玄関の扉を開けた。
そこにはあの時突然消えた彼女の姿。
3年経っても変わってないのっちの姿。
「な、なんで?」
「あ〜ちゃん・・・3年越しで遅れてごめんね。しかも今日じゃないけど・・・」
「えっ?」
「誕生日プレゼントです」
そう言ってのっちは右手を差し出した。
腕には赤いリボンが可愛く巻かれてる。
「あ・・・」
あたしはあの強烈な出来事での会話を思い出した。
なに・・・このリボンはラッピングのつもり?
ちょっと笑っちゃった。
「へへへ・・・」
のっちもつられて頭を掻きながら笑ってる。
「バカ・・・遅すぎじゃ」
あーあ、ほらまた涙が出てきちゃった。
今度こそちゃんと直してよね。
「ごめんね・・・」って、言ってぎゅっとあたしを抱きしめるのっち。
あたしものっちの背中に腕を回して抱き返す。
「ごめんねなんて聞きたくないけぇ。のっちのバカ」
「あ〜ちゃん。まだ間にあうかな・・・」
一度体を離してあたしの目を見つめるのっちの目は、それはそれは綺麗な色をしている。
「あ〜ちゃん。愛してる。今度こそずっと傍にいるよ」
「・・・バカ。3年遅いんじゃ」
へへってハノ字眉で笑うのっちが愛おしい。
幸せすぎて怖い。
これって夢なんじゃない?って、思うほど嬉しすぎる。
のっちが帰ってきてくれた。
最終更新:2009年10月22日 17:10