《現在》
サイドA
“一度きりの人生だから、悔いのないように”
なんて、よく聞く台詞だけど。私はもう後悔してるよ。
あの時少し、大人になれたら。あの時少し、我慢できたら。きっと時間が解決して、のっちは私を許して、また笑い合えて。そして今でも、隣にいるのは私だったはず、なのに。
軽率だった自分の行動を今頃になって悔やんでみても、意味もないし、元には戻らない。もう戻りたいわけでもないけれど。
でも、本当の本当に悔やんでいるのは、あの時傍にいられなかったことや、今、隣にいられないことじゃなくて。あの日の『さよなら』を受け止められないまま何年も宙ぶらりんのまま、思い出にもできないで、だけど、いい関係で会うこともできなくて。ただ、苦しさだけが残ったこと。
本来ならば、あれだけ一緒にいた二人は、『さよなら』を言い合ったところで、次はまた、違った関係が築けると思っていたのに。
それもできぬまま、ただ、だらだらと。何年も、私の中ののっちを、ほったらかしにしてた。それが一番の後悔。
たとえ恋人じゃなくても。のっちの中の一番じゃなくても。やっぱり近くでのっちのこと、知っていたかった。
会わなくなって、知らないことが増えていくのを、平気なフリもしたくないし。たとえ恋人じゃなくても、のっちの中の一番じゃなくても、今まで築きあげてきた“親友”って塔は、崩したくなかった。
ねぇ、のっち。
あ〜ちゃんね?勝手かもしれないけど。
今でも鳴らない携帯電話を見つめては、のっちからの連絡、待ってるんだよ。
《過去》
サイドA
『なんでこうなっちゃったんだろうね、、。』
重い空気に耐えられなくて呟いた言葉に、のっちは更に周りの空気を重たくした。
『・・・うん。』
たった一言返事だけして、のっちはその綺麗な顔で俯いてしまった。
『のっち、こっちむいて?』
あ〜ちゃんね、のっちの顔が好き。情けない眉毛も、零れそうに大きな目も。たまに“ヘ”になる口も全部、好き。いつも可愛いなぁーって思うんよ。
『・・・』
だから、俯いてないで、こっちむいて?あ〜ちゃんに顔を見せてよ。
あ〜ちゃんね、のっちの煮え切らないとこ、大好き。はっきりしないところも、可愛いなぁーって思うんよ。あ〜ちゃんのことになると頭まわんなくて、すぐドギマギしちゃうとこも、可愛いなぁーって思う。
『ねぇ、のっち。あ〜ちゃんのこと、好き?』
あ〜ちゃんはね、大好きなんよ。今でも。
『・・・わかんない。』
煮え切らなくて、はっきりしなくて、大好きで、大嫌い。
『のっちの優しいとこ、大好き』
本当はもう好きじゃないこと、わかってるよ。はっきり言えないんだもんね、のっちは。それを優しさだと思うことにするよ、あ〜ちゃんは。
『・・・のっちも。』
うん。わかってるよ、のっち。あ〜ちゃんね、のっちのことなら何でもわかるんよ。すごいでしょ?
だから、のっちが言いだせない台詞もわかってるし、あ〜ちゃんに触れてこない理由だってわかってたし。でも、あ〜ちゃんを不安にさせないように、“会わない”ってちゃんと決めて、それを本当に実行してくれたのも、わかってたよ。
『会ってる?』
『会ってないよ。』
『誰に?』
『えっ、、、』
『うそ。いじわるしちゃった』
『・・・うん。』
『ごめんね。』
『ううん、、。』
のっちってつくづく優しいんだなって思う。本当は聞きたいこと、いっぱいあるはずなのに。
あ〜ちゃんね、のっちにいっぱい優しさもらったよ。本当だよ。ありがとね。
でも、案外あっさり浮気されて。でも、案外すんなり受け止めちゃって。負けず嫌いだからかな?やり返しちゃった。ごめん。
でも、どうにかしようって思ってくれてたこと、ちゃんと伝わったよ。ありがとね。それなのに、あ〜ちゃん踏みにじって、ごめんね。
優しいのっちのことだから、このままじゃ二人ずるずるずるずる。この不穏な空気に包まれて、いずれはそれにも慣れちゃって。逃げ場がない迷路みたいに、抜け出せないまま、ちっとも幸せになれないの。
そこから抜け出す手段は一つしかないし、それが出来るの、あ〜ちゃんしかいないから。
のっち、ありがと。
大好き。
ごめん。
大嫌い。
大好き。
大好き。
大好き。
大好き、だけど、、
『もう、だめ、だね・・・』
最終更新:2009年10月22日 17:52