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玄関の前で、のっちの姿のあ〜ちゃんが合流した。
「いきなりごめんね!今日はよろしくね」
笑顔で皆に挨拶するあ〜ちゃん。爽やか過ぎて、なんか嫌。顔が自分だからかもしれないけど。
女の子達は、声を裏返しながら顔を真っ赤にして「こちらこそ!」と返事する。うーん…さっきと明らかに態度が違うよ。のっちは私だよ?そののっちは、あ〜ちゃんだよ?こんな説明じゃ意味分かんないか。
とにかく、駅前にある良く行くカラオケ屋に移動。移動中もあ〜ちゃんの両サイドをキープしながら質問攻めする女の子達。
「大本さんって、カラオケで何歌うん?」
「やっぱア〇コかなー」
「意外〜!てか聞きた〜い」
アイ〇とか、思いっきりあ〜ちゃんの趣味じゃないか。のっちも好きだけどカラオケじゃ歌わんよ。歌ったら取るな!ってあ〜ちゃんに怒られるけぇね…。
「ねぇねぇ綾香ちゃん」
一人が、のっちの制服の袖をちょいちょい摘んできた。何?と言って振り返る。
「綾香ちゃんって、大本さんと付き合っとるん…?」
「へ?」
コソコソと耳元で唐突な質問。ビックリして間抜けな声が出た。


「付き合って…ない…よ」
付き合って…は居ない。のっちは付き合って欲しいけど。けど、あ〜ちゃんの気持ちは分かってる。…つもり。
ただのっちが臆病なせいで、踏み出せずにいただけ。だけど、恋人だからってそうじゃないからって、のっち達の距離も関係も変わらない。ただ周りの目が変わるだけ。だからずっと曖昧にしてた。
「じゃあ大本さんフリーなんだ!」
…でもその曖昧さが、あ〜ちゃんを傷付けてたんだね。こうやって、知らない振りするのも、もう疲れたよね。
チラリとあ〜ちゃんの顔を見た。楽しそうに笑ってる顔、だけど悲しそうにも見える。もうそんな顔させない。告白するんだ。恋人になって下さいって。

◆◇◆◇

カラオケボックスに入って、約一時間。凄く盛り上がってて、あ〜ちゃん風に言うとイェイイェイのウォウウォウって感じだ。だけど…。
「かっしー…あ〜ちゃんに近付けんのじゃけど…」
隣のかっしーにそう嘆く。あ〜ちゃんの両サイドは、やはりあの子達がキープ。その子達はさり気なく肩を触ったり、腕を組んだり…。こらこらこら!キャバクラですか。でもそうなると、お客さんはあ〜ちゃんか。

かっしーは苦笑い。
「のっちがモテるからいけんのよ」
…別にモテたくてモテてるんじゃないよ。って言ったら本気であ〜ちゃんにド突かれそうだから言わない。
「ねー大本さんも歌ってよー」
「聞きたい〜」
「え〜どうしよっかな〜」
ニコニコなあ〜ちゃん。…ちょっとあ〜ちゃん…のっちのポジション楽しんでない?
「かっしー…のっちトイレ」
「あ、ゆかも行くー」
ちょっとトイレで落ち着こう。

◆A-side◆

のっちって楽しいね!これならずっとのっちの体のままで良いかも…なーんてね。
のっちとゆかちゃんがトイレに行くのが見えた。
「あ、うちもトイレ…」
慌てて席を立つ。スカートの裾を引っ張られた。
「えー行くんー」
この子達…普段と態度変わり過ぎ。のっちの前だとこんな態度になるんだな〜って今更実感。ちょっとショック受けたよあ〜ちゃん。

◆◇◆◇

トイレに行くと、ちょうど二人が手を洗っていた。
「あ、あ〜ちゃん」
笑顔のゆかちゃんの後ろに、身を隠す様にしてしかめっ面ののっち。なんだか機嫌悪いみたい。
「何よ、のっち」
「…ぶえっつにー」
うわ。ぶっさいくな顔して超ムカつく言い方。腹立つわー。


「あ〜ちゃんが他の子とばっか話しよるから、拗ねとるんよね?」
ゆかちゃんがいたずらに言う。それを聞いたのっちは真っ赤になりながら、違うをうるさいくらい連発してる。ほんま、分かりやすい。
「体入れ替わっとるのに、嫌なん?」
ゆかちゃんがのっちに問う。
「…体がのっちでも、あ〜ちゃんなんだからヤキモチくらい焼くよ」
目を合わせずに言うのっちに、胸が締め付けられた。
のっちは…あ〜ちゃんの体が、誰と入れ替わろうと、きっとヤキモチを焼いてくれる。あ〜ちゃんは本当に幸せ者だ。王子様にこんなにも想われて。
「ねぇのっち、いつもの歌を歌ってよ」
出来れば甘いラブソングが良い。いつも歌ってくれるよね?あれね、あ〜ちゃん大好きなの。
あ〜ちゃんを横目でチラチラ見ながら、照れ隠しに、見なくても完璧に覚えてる歌詞を必死に目で追う横顔とか。
高いキーの所は、一段と眉毛がハの字になって。サビになると、リズムを密かに足で取って。マイクを握る手が何処か色っぽくて好き。
「…あ〜ちゃんの声じゃと、上手く歌えんかも…」
「失礼な子じゃね!」
そう怒鳴ると、ゆかちゃんが笑った。あ〜ちゃんとのっちも、つられて笑った。

15:End





最終更新:2008年10月11日 15:04