Side A
………。
朝…。
すごく嫌な夢で目が覚めた。
悲しくて哀しくて切なくて恐くて…。
夢の中では泣いていた。
現実のあたしは泣いていなかったのに…
それが夢だって判ったのに…
あたしの目からは、勝手に涙が溢れ出してくる。
思い出しただけで、また恐くなって布団の中で泣きじゃくる。
きっと今までで、最悪の夢だよ。
普段、夢なんて記憶に残らないのに、何でこういう夢は鮮明に残るの?
こんなの憶えてなくても良いよ…。
ずっと薄れてたはずの恐怖が、あたしを覆いだす。
コンコン
「あ〜ちゃん?大丈夫?具合悪い?」
なかなか部屋から出てこないあたしを心配して、ゆかちゃんがドア越しに声を掛けてくれる。
あたしものそりとドアの手前まで行って返事をするけど。
「ダぃ…ジョ…っ。」
大丈夫。
そう言いたいのに、上手く声が出ない。
まるで、あの時みたいに…。
「あ〜ちゃんごめん、開けるよ?」
あたしの異変に気付いて、すぐにドアを開けるゆかちゃん。
ドアが開いてゆかちゃんの顔が見えたとたん、あたしはゆかちゃんに抱きついた。
「あ〜ちゃん??」
もちろん突然の事に驚いているゆかちゃん。
「どうしたの??」
それでも、しっかり抱きしめ返してくれる。
温かい…。ゆかちゃんは、ちゃんとココにいる。
その存在を確かめるように、ゆかちゃんの華奢な体を抱きしめる腕はその背中を撫でる。
「ゆ、め…。」
「夢?」
ただ頷くあたし
「見たの?」
また頷く
「どんな夢?」
「の、、ち、と…ゅか、ちゃn…。」
上手く出ないあたしの声に、あの時みたいに優しく声を掛けて、抱きしめてくれる。
「二人、が、死ん、、じゃぅ、ゆ、め…っ。」
思い出したら、耐えられなくて泣いてしまう。
そんなあたしに
「そっか、じゃあ恐かったね。」
って
「悲しかったね…。」
って
『大丈夫』
なんて不確かな言葉じゃなくて、あたしの気持ちを汲みあげてくれて。
何度も、何度も頭を撫でてくれた。
それで少し安心して、涙がおさまる。
「けど…。」
そっと体を離して、顔を覗き込んでくるゆかちゃん。
「今は、ちゃんと生きてるから。ね?」
ニコッて笑うゆかちゃんの言葉に、今度はいろんな感情が混ざった、よく分からない涙が流れた。
Side K
誰かが死んじゃう夢なんて…
あ〜ちゃんにとって、一番恐い夢なんだと思う。
それが二人もなんて。
しかも一人はのっち…。
そんな残酷な話はあったもんじゃない。
きっと、すごいリアルなんだろうし。
だから、あの時よりはっきりしてるけど、声だって上手く出せてない。
私に出来ることなんか限られていて、あ〜ちゃんが感じた恐怖とか、悲しみを感情移入して、共感してあげることくらいしかなくて…。
抱きしめてそっと髪を撫でてあげることくらいしかなくて。
『大丈夫』
なんて無責任なこと言えなくて。
だって、人間いつ死ぬかなんて分からないもん。
そんなの、あの人が死んだ時に、十分実感したから。
誰より、あ〜ちゃんが知ってるから…そんなこと言える訳ない。
でも、これだけはハッキリしてる。
「今は、ちゃんと生きてるから。ね?」
だから、そんなに悲しまないで?
だから、そんなに怖がらないで?
だから、光を…失わないで?
ねぇ、のっち
あ〜ちゃんが泣いてるよ
私だけじゃ
拭いきれないよ…
—つづく—
最終更新:2009年10月22日 18:37