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「じゃ、またね〜」
「バイバイ大本さん〜!」
だから、それはあ〜ちゃんで、のっちはこっちだってば!結局なんだかんだで4時から7時まで3時間もカラオケしてた。すっかり辺りは暗い。
「かっしー、一人じゃ危ないけぇ送るよ」
「良ぇよ、すぐそこだし」
まぁそんな事でのっちは引かない。危ないったら危ないの。最近物騒なんだから。

◆◇◆◇

かっしーを家まで送って、あ〜ちゃんと並んで歩いた。薄暗い通りには街灯の灯だけが輝いていて、二人分の影を延ばした。
「やっぱりあの歌、あ〜ちゃんの声だと微妙じゃね」
あ〜ちゃんが静かにぼやく。
「だから上手く歌えんかもって言うたじゃろ」
拗ねる様にそう言うと、そっとあ〜ちゃんが手を握ってきた。急にどうしたんよ、あ〜ちゃん。ドキドキするじゃんか。
「あ〜ちゃんの気持ち、少しは分かったじゃろ?」
「…うん」
「不安で、恐くて、嫌になるんよ」
「うん…ごめんね」
「お願いじゃけん早くあ〜ちゃんを楽にしてよ〜」
笑いながら冗談ぽく言うあ〜ちゃん。だけど、その手が小さく震えているのが分かった。


自分でも何をしているのか分からなくて、気が付いたら体が勝手に動いてて。
道路に延びた影が、重なった。そして大きく揺れた。
「っ……!」
「……。」
「のっち…」

ただ、抱き締めたかったんだ。

自分の体を抱き締めた所で、いつものあ〜ちゃんの体の感触とは違うから変な感じだけど。
言葉にならない感情が、のっちをそうさせたのは確かで。守りたくて触れられなかったこの手は、逆に君を傷付けていたんだね。
「のっち…苦しいよ…」
「あ、ご、ごめん」
知らないうちにかなり強く抱き締めていたらしい。慌てて体を離した。今更今更恥ずかしくなって、顔が熱い。
抱き締めた所で、何かが変わる訳じゃない。少しだけでも良い、君の不安を取り除きたくて…。
でも本当の理由は違うんだと思う。あ〜ちゃんではなく、自分を安心させたかったんだ。まだ手の届く所に、君が確かに居る事を確かめる為に。
のっちは黙ってあ〜ちゃんの手を取り、家へ向かう道のりを歩いた。
あ〜ちゃん、このままだと君を失いそうで恐いんよ。むしろこのままずっと体が入れ替わってれば、君の体だけは失わずにのっちの物。
こんなヘタレな自分を、許して神様。

◆16:End◆






最終更新:2008年10月11日 15:07