甘い匂いのこの部屋から見える空は、いつも灰色ばかりを映す。きっとこの窓枠が狭すぎるせいで、息苦しいの。それなのにアロマやら香水やらの匂いをぷんぷんさせて、次第に脳みそが痺れだす。
今夜も星は見えない。小さい窓枠から身を乗り出して、狭い空を仰いでみても、やっぱり星は見えない。
「ゆかちゃーん、何してんの?」
シャワーからあがったのっちがミネラルウォーター片手に近づいてくる。東京に出てきて、もう何年もたつのに、のっちは変わらない。仕事になると、少しは変わるけど、普段とのズレは、やっぱり釣り合ってない。ゆかといて、いいんかな?
可能性に賭けて、ここに来たのに、いざってなると足がすくむ。ゆかも、ちっとも変わってないじゃん。のっちの前で、強がってるだけなんて。余計惨めなだけだよ。
「白い、ね、、のっちは、、」
肌の色だけを言ってるんじゃない。のっちは変わらず綺麗だね。そう言ってるの。ゆかなんて、もうここらへん錆びてきたよ。
「んー?ゆかちゃんも白いじゃん」
コテっと首を傾げる仕草は相変わらず可愛いし、そんなのっちに埋もれて、ゆかはどんどん黒くなってないかな。
「ゆかは、黒、、だよ、、」
そう言うと、何かを感じたかのように、顔つきが変わった。実は鋭いところがあるのっち。それ、ちょっと苦手。ゆかはズルいから、察知されるのは、苦手なんだよ。
「ゆかちゃんは、綺麗だよ?」
優しい顔で、瞳を細めて、近づいてきたかと思ったら、不意に頭を撫でられ、そう言われた。優しくされるのは、慣れてない。本当は、そうされるのを待ってるくせに。
「・・・生意気」
呟いた言葉に、あっ、と、のっちは手を引っ込めた。びくびくしちゃって。かーわいーの。本当はね?のっちに埋もれてく自分が怖いだけ。だから、優しくされるのが、慣れない、だけ。
「でも、、ありがと」
「うん」
ニッコリ笑って手をとってきた。その手に少し力を込めると、のっちもまた、ぎゅって、して。シャワーを浴びた後の体温があったかくて、思わず抱き締めた。
立ったまま抱き締めるのは、あまり好きじゃない。だってのっちデッカイんだもん。だけど、甘えたなのっちは必ず猫背にして、ゆかの肩に顔を埋める。
あ、、白と黒だから、こんなにも惹かれ合うのかな?白が黒に、黒が白に、与える影響って、どのくらい?今、ゆかにとっては無限な世界くらいだよ。
抱き締めた首筋に、まだ水滴が残っていたから、それを飲むつもりで唇を寄せた。唇を寄せたら、吸いたくなっちゃって。だから吸い付いてやった。
「んぁっ、、ゆかちゃ、、残っちゃうよぉ、、」
情けない声で抵抗しても、なんの意味もないよ?煽るだけだって。あーぁ、そんなつもり、なかったのになぁ。
「なんか、シたくなっちゃった」
聞くと、のっちはコクンって小さく頷いた。小さな窓枠を背に、深いキスをした。窓枠から、ちらりと見える灰色の空が、のっちの肌まで黒く染めた。
タンクトップの下に手を入れると、小振りな胸があったかくて。その下のお腹は汗とお湯で湿ってた。ジメっとした体温に私の温度もあがる。駄目だ。胸とか、曲線とか、言ってらんない。あそこはどれだけ湿ってるんだろう、か。
小さな窓枠に、のっちを座らせた。勢いよく下着を剥いだら膝を閉じようとしたから、急いで割り込んだ。
「触る?」
誰が、何を、触る、のか。何も言わなくても、のっちなら、わかる。おでこに小さくキスを落とすと、のっちはおずおずと、そこに触れた。
「見てて、いい?」
うん。って頷いて指を動かす。その不器用な指先の、たどたどしい動きは、逆に興奮を呼ぶ。ふと、窓の外を見ると、遠くに星が出ていた。
「あっ、、」
私の声にのっちの手がとまる。やめないで?って笑顔を向けると、また、コクンって頷いて再開される、それ。たった一つ星が見えただけなのに、なんでこんなに興奮したんだろう。
「んっ、、ふあぁ、、」
そんなことを考えてたら、ヤラしいワンコが声をあげた。なに?ポイント見つけた?
「きもちい?」
コクコクって首を振って、涙をいっぱい溜めた瞳で見つめられた。息を飲むほど、綺麗だ。
「なんよ?」
今、にやけてるんだろうな、ゆか。好きな人が目の前でオナニーを見せてくれて、にやけないほうが、どうかしてるわ。
「ん、、ゆかちゃ、、」
「なぁーんよ?」
「ゆかちゃんが、いい、、」
やばい。こっちのがもっとにやけるわ。可愛い奴め。そんなこと言うと、止まんないぞ?ゆか、止まんないぞ?暴走機関車だぞ?
「可愛いwよく出来ましたw」
頭を撫でて、さっきまで濡れた自分のそこを弄っていた指を舐めてやると、嬉しそうに笑った。
両足を広げて、窓枠に腰かけたのっちを下から舐めるように見た。視線を外して照れたのっちの横顔が綺麗。知らないうちに、空にはいくつも星が見えた。
「んあっ、、んんー、」
指を3本、滑らかに、吸い込ませるように中へと入れた。のっちのそこは、簡単にゆかを受け入れた。やっぱり白と黒は惹かれ合うんだな。そんなことを考えてると、
「ゆかちゃん、集中!」
いつか言ったゆかの台詞を、テヘって笑ってのっちが言った。うん。ごめんね?集中します。もう、いいよね?のっちに埋もれても。
「ぁあっ!ん、そこぉ、、」
無我夢中、がむしゃらに突き上げる。けど、本当はポイントは調査済みだから。のっちは一層甘い声を出した。欲望に埋もれてく二人。どうやったら逃れられるの?
のっちの身体がブルっと震えた。終わりが近い。そう思って、密着していた身体を少し離した、ら、
「行かないでっ、、」
それは見事にのっちの両腕に阻止された。あぁ、逃れられなくても、いいんだ。
「ごめん、ここにいるよ」
二人で埋もれたって、都会にも星が出るように、いずれは浮上できるもんね。のっちがいれば、ゆかがいれば、二人でいれば、埋もれた先でも、星は光る、でしょ?
「んあっっ、、、」
腕の中ののっちの体温が熱い。達した身体はまだじめじめしていた。白と黒が混じり合った結果、今日も欲望に埋もれるだけ。
小さな窓枠から見える星たちは、ただ雲に埋もれていただけで、確かにそこにあった。
Part4.END
最終更新:2009年10月22日 18:47