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「じゃあ、あたしらが再会した経緯からだね。」


side-K

入院が決まった。
内蔵に疾患があるから、手術しなくちゃいけないらしい。
正直たいした事無いんだろうって思ってたけど、2ヶ月は入院しなきゃいけないみたい。
とりあえず手術の同意書にサイン。通ってた専門学校には休学願を出して、無事に受理された。


さてと・・・ あとは、のっちとあ〜ちゃんに報告する事。
これが一番緊張する。
まぁ、手術前にささっと電話するくらいが心配かけなくていいかな、なんて思ってた。
ホントは心配だってして欲しい。


手術の当日の朝。あ〜ちゃんには時差を考えてメールにした。
ベッドの上、ケータイを取ってのっちの番号にコールする。
最近はのっちの仕事が忙しいみたいで全然連絡が出来てなかった。
久しぶりの電話に正直ちょっとウキウキしてる。手術前にこんなんでいいのかってぐらいに。

4回ほど鳴らしたところで、いつもの穏やかな声が電話の向こうから聞こえて来た。

「もしもし。ゆかちゃん? こんな早くにどしたん?」
「ん〜とね... 今からちょっと手術することになってさ。」
「え!?  どっか悪いん?・・・」
「んーん。たいしたことないよ。今日中に終わるような手術だし。」
「そんな大事な事・・・ なんでもっと早く言わないんよ・・・」

一気にトーンダウンする声。脳裏に八の字眉が浮かぶ。

「心配かけたくなかったから。のっち優しいから、こんなこと教えたら帰って来ちゃうでしょ?」
「当然じゃん・・・ 今すぐにでも行きたいよ。」

ほんとは今すぐにでも来て欲しいよ?お医者さんも、支えてくれる人がいた方がいいって言ってた。支えてくれる人って言われて真っ先にのっちのこと思ったんだよ?

でも、そんなわがまま言えるわけないね。

「ダメ。仕事あるんじゃろ? ちゃんと働きんさい。退院したら、ゆかそっち遊び行くから。」
「いつ退院するん?」
「んー、まだわかんないかな。でも今年中にはそっちいけると思うから、安心して待ってて。」
「今年中って3ヶ月以内ってことじゃん・・・  十分長いよ。」
「大丈夫じゃって。ほんとに。万が一なんかあっても大事になるような手術じゃないし。」
「そっか・・・ 手術終わったら連絡ちょうだい。後、毎日ちゃんと経過教えて。」
「あんた、こんなときばっか心配性過ぎ。普段なんて週1回電話するかしないかのくせに。」
「それとこれとは関係ないよ・・・」
「それはいいとして、ゆかは手術頑張るけぇ、あんたはしっかり働くんよ?いい?」
「うん・・・ 頑張って。」
「ありがと。じゃ、いってくるね。」
「いってらっしゃい。」


電話を切って、ゆっくり深呼吸してみる。
どんなにたいした事無い手術だって言われてもやっぱり怖いな。
のっちがいたらやっぱ違うのかな?
もっと安心するのかな?


電話じゃ物足りないよ。
もうどんだけ会ってないっけ。毎日会えたらいいのに。
なーんて、ムリだけど。


「樫野さーん、樫野有香さーん。手術室の用意できましたよー。」

看護士さんの声に一気に現実に引き戻される。
私は手術室にゆっくり入っていった。ほんと怖いわ。



麻酔をかけられて、次に意識を取り戻した時にはもう手術は終わっていた。
入院してたいつもの部屋に戻されて、腕にはなんか機械が繋がってるけどたいして不自由は無い。
天井を見つめてぼーっとしていると、


「ゆかちゃん、大丈夫?」


のっちの声が聞こえた気がした。手術した直後もあたしの意識の中はのっちでいっぱいなのか。
ちょっと悔しい気もする。

「ゆかちゃ〜ん?おーい?」

私の目の前であのウィンナーみたいな指が揺れてる。
そんなはずないのにね。

だんだんと意識がハッキリしてきてるのに、幻覚が消えてくれない。
どんだけあたしはのっちに惚れてんだ。痛いやつだなぁ。


「よかった、ゆかちゃん起きた!」


んー・・・ また声がした気がした。声がした方向を見上げると、そこには本物がいた。

「・・・ っ ち?」

まだきちんと声が出ない。

「あぁ、、! ムリしちゃだめだよ! まだ安静なんだから。」

のっち?本物?なんでいるの?
うまく言葉になってくれないから必死で顔でアピールしてみる。
流石ののっちはあたしの顔を見て、一発で正確に理解した。

「ゴメン、来ちゃった。やっぱこの目で経過見る。」

そう言って笑うのっちは、何とも頼りないんだけど、優しい顔をしてこっちを見てる。
胸がぐって掴まれたみたいになる。なんかきゅんってなる。


「仕事はサボっちゃった。でも苦情は聞かないよ。なんと言われようがこれからはずっと一緒にいるから。」

詳しい事はまだ聞けない。でもあたしにはその言葉だけで十分だった。

不安だった。寂しかった。辛かった。
お腹痛くなって病院に行ったら急に手術って言われるし、のっちに言いたいのに電話繋がんないし、二人ともお見舞い来れないし、手術終わってもだれもいないんだろなって思ってた。

でも、のっちの顔見たら全部ふっとんじゃったんだ。
「ずっと一緒にいる」って言われたら、信じらんないくらい幸せになっちゃうんだ。
こんなに簡単に解決するなんて、悩んでたあたしが馬鹿みたいだ。やっぱ悔しい。

溜まってた物が全部溶けて、涙になって溢れ出す。


「ゆかちゃん、泣かないで。」


ゆっくりと伸びて来た指がそっと涙を拭う。そのままあたしの顎を指先でそっと持ち上げた。
次の瞬間には気づいたらキスされてて、目を閉じて受け入れようとしたときにはもう離れてた。


「もう絶対離れないから。」


そう言ってあたしを抱きしめた腕は、最後に会ったときよりもずっとたくましくなってて、それだけでもなんかちょっと泣けた。


手術の後の辛さとかあるはずなのに、幸せしか感じなかった。






後日談としては、あの日のっちは職場にすぐに連絡して休みを取ったらしい。
その日の内にのっちが働いてる会社のこっちの支社に連絡を取って仕事の空きを探してもらって、その次の月にはもうこっちに転勤を決めていた。ゆかは当時借りていた部屋を引き払って、のっちが借りた広いアパートに引っ越して、同棲を始めた。そんなこんなで今に至る。


「長くなっちゃったね、あ〜ちゃん、ごめんw」


6.Friday おしまい。






最終更新:2009年10月22日 18:54