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整っていない髪の束がうざったい程私の頬を撫でていく。
伸ばされた腕、の先は、のっちの肩。
それは私と同じ肌色で、でも私より明らかに細すぎる肩。それを今私の手で掴まれて、少しだけ痛い、って顔をしてる。このまま体重をかけていけば、きっとポキッて音がしそうだ。
…でも。






私は何で、のっちを押し倒しとるん?






ドアを開けた向こうにのっちはいた。
夜でも変わらない夏の暑さに思考がやられたのか、ぼぅっとしたままの私はノックもせずにドアを開けてしまって。
…その先に、見えた。
無防備な肌色の。
そこに確かに見えた、いくつかの、赤色。






なに、って聞こえた気がしたけど、聞こえない振りをした。
前を隠そうとした服を奪い取って強引に背中を向かせる。
離れたところからは見えなかった小さな赤色も、その時にははっきりと瞳に映った。
「…誰のなん、これ」
「っ……」
ひくついた、のっちの背中。
それは自分でも驚く程低い声への恐怖か、それとも背骨と赤色に這わせた、指への期待か。
「…全部、あ〜ちゃんのだよ」
クーラーの点いていない蒸し暑さの増す部屋に、のっちの震えた声が広がっていった。






いつ?
どこで?
私が?
のっちに?






「…うそつき」




室内の温度がどんどん上がっていくのがわかる。
服を着たままの私の肌は汗ばんで、顎を伝った滴が組み敷かれたのっちの首元に落ちていく。
さっきから頬を撫でていた髪の束もくっついてきたけど、今はそれをよける手間さえも惜しい。
背中だけじゃなく、よく見たらうっすらと肩にも。
そして、鎖骨にも。
蚊が刺したような赤色、じゃない。
まるで、野獣か何かに咬まれたような、薄い赤色の線。






何も、考えられない。
何も、聞こえない。
ただ暑くて、今はただ目の前の肌色の赤色が。






「だっ……か、らっ……っ!!」
一瞬、びくっと、のっちの体が震えた気がした。
目の前には、また赤色。
くっきりとした綺麗な綺麗な鎖骨に色付く、血のような赤色が。






ねぇ。
誰が付けるん?こんなもの。
痛々しいじゃろ。
あ〜ちゃん、こんなん嫌いなんよ。






暑い。
熱い。
カラダが。
頭が。
全部が。
熱が、細胞も神経も燃やし溶かしているみたいだ。






悲鳴にも似た声が聞こえる。
目の前の肌色が波打って、抵抗しようと呻いているみたいだった。






でも何も感じられない。
言葉も音としか認識できない。






ただ、そこにある赤色の、存在だけがリアルで。






END






最終更新:2009年10月22日 19:15