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《現在》


サイドA


部屋を掃除してたら、偶然昔の日記帳を見つけた。
だから、当たり前のように読んで、当たり前のように笑った。まぁ、苦笑いだけど。
でも確か、当時は泣きながらこの日記を書いて、のっちを想ってはまた泣いて、を繰り返していたんだろう。
だけどね?
恐ろしいほどに、月日の流れは早くて。見てみんさい。今じゃ涙は止まって、少し穏やかになって、あの時とは違った感情を抱き、でもあの時のままの温度でのっちを想って、うまくはないけど、笑うことだって出来る。時々胸は痛むけど、のっちを想ったせいじゃなくて、のっちと過ごした幸せな日々を思い出したせいで。
あの時から、実はわりと最近まで考えられなかったけど、不思議と、生涯最高に愛したあなたでさえ、“思い出”になる日がくるんだなぁ、なんて。今では、そう思うよ。


—ジャンジャンジャジャーン—


今夜も鳴ることのない携帯電話を枕元に置いて、期待してるでもないけど、わけもわからず、習慣のようにしていたそれが、不意に動きだした。
苦笑いのまま、携帯をひらくとそこは、奇跡に近い、ありえん光景だった。震える指に力をこめて、電話に出る。


『・・・も、しもし?』


『、、でるから、いいよ!』
電話のむこうの会話が聞こえる。
久しぶりのその声に、胸が高鳴った。


『あっ、、も、しもし?』


のっちだ。のっちだ!のっちだ!!
頭がパンクしそうだ。なんなんだろう、これ。もう、わけわからん。


思い出にして、笑える日がくるんだな、なんて思っていたのに。
声を聞けば、いつだって泣きたくなるよ。会いたくなるよ。



《現在》


サイドN


『あ、あ〜ちゃん?』
うわぁ。くそ。名前で噛んじゃったよ。まるで変わってないじゃん。
電話のむこうで“ずっ”て音がした後、すぐに、


『変わっとらんね』


あの頃と変わらない、柔らかい声が聞こえた。
あ、懐かしい。全て包み込む柔らかさ。
あ、これ。のっち、これが好きだったんだよ。
『あ〜ちゃんも』
変わってないね。よかった。
のっちの好きだったところ、変わってなくてよかった。


あれから何年もたってるのに、たった一言、声を聞くだけで思い出が走馬灯のように頭の中をかけめぐった。何度思い出したって、最後の別れのあの時ばかり浮かんでいたのに、声を聞けば一発だ。楽しかった思い出がカラフルに脳を染める。


『ひ、さしぶり、、だね?』
『・・・うん、そうだね』
『元気、だった?』
『・・・うん、のっちは?』
『ん?・・・うん、元気だよ』
『・・・・・ゆ、かちゃん、も?』
『・・・・・ん。』


お互いに声は震えていた。
今、どんな顔して、どんな気持ちで“元気だよ”って伝えてるのかは、わからないけど、少なくとものっちは嘘ついた。
あの頃と変わんない。ダメじゃん、のっち。それじゃ全然ダメダメじゃんか。


『ごめん、あ〜ちゃん。嘘ついた』
『えっ?』
『のっち、元気なんかじゃ、なかった』
『・・・』
『のっち、、ずっと寂しかった。・・・うん。なんか、ちゃんと終わりにできてなかった。うん。できてなくて、、、』
『・・・うん』
『だから、、、ん、、あのね?、、
『あ〜ちゃんも』
『へっ?』
『・・・あ〜ちゃんも、元気じゃ、なかったよ?寂しかった。話したかった。会いたかった。でも、そんなこと、、言えなかった。寂しかったんよ、、、』
『・・・ごめん』
『ううん、ごめん』


お互いに声は震えていた。
けど、今の会話に嘘はなかった。


『ねぇ、あ〜ちゃん』

『うん?』


『・・・会いたい、よ』






最終更新:2009年10月22日 19:37