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—本音—


『寂しくない』
いくら見つめたって、もう鳴るはずのない携帯にむかって、本音のように呟いた独り言は、住み慣れたこの部屋に零れては影をつくった。
影はぐんぐん育って、いつの間にか不自然なほど自然と部屋に溶け込んでいた。


“会いたい”
今にも、鳴らない携帯に手を伸ばし、伝えてしまいそうになってはグッと飲み込んだ独り言。
“好きだよ”
自分の中で隠しきれない感情だけど、絶対に口には出さないと心に決めた想い。
『あーぁ。』
悩み事を増やしたいのか、はたまた疲れただけなのか、無意識に大きく吐いてしまった溜め息の音。
“おやすみ”
何気ない夜の挨拶なのに、それを伝えたいあなたはもういなくて、眠れない夜を越えると、
“おはよう”
また何気ない朝の挨拶に変わる。
そんな些細な言葉でも、のっちから聞こえてくると自然と頬が緩むのに。
のっちの影すら、もう感じなくて、“おはよう”も過ぎて、また“おやすみ”が来て、目が覚めたら、何気ない挨拶すら交わすことなく、また“明日”という“今日”がやってくるだけ。
そして、別の誰かと、その何気ない挨拶を交わすだけ。
言葉にならない気持ちは、涙になって流れるだけ。


“寂しくないオバケ”
って名前をつけた、今じゃ大きく育った影が私を包み込んで、外敵からかくまってくれるけど。
そんなの簡単にボロボロだ。
結局は影。涙が流れれば、すぐに消える。


本当はね?
勘違いだと恥ずかしいから、もしも、寂しい時は寂しい、って言って?
悩みがあるなら、頼って?
こんな夜は、のっちのことだ。きっと寂しがってるだろうな、って思っても、
会いに行けないのは、“さよなら”を言ったせいでも、夜が遅いせいでもないんよ。
だって、そうじゃなかった時、気付くのが嫌なんだもん。

あぁ、寂しくて会いたかったのは私のほうだ、って。

そうじゃなかった時の、困った顔ときたら、思い出しただけで、泣きそうになるんよ。




本当の本当の本当はね?
こんなに寂しいなんて、思ってなかった。
想いも思いも、粉々になるまで壊して、全部忘れさせてほしかった。
だけど、それを拒んだ。
忘れる気は、なかった。
泣いたら慰めてくれるから、それをあてにして涙を流した。
だけど、拭ってくれる指はもう、なかった。


『寂しい』


いくら見つめたって、もう鳴るはずのない携帯にむかって呟いた、本当の本音。




END







最終更新:2009年10月22日 19:47