時計の針が12時を差す少し前に、君はひょっこり現れた。なんの前触れもなくチャイムを鳴らして、変わらず綺麗な髪を揺らして。
部屋には二年前、二人で見つけた音楽が静かに高音質で、かかっている。
「あ、これ、、」
「あぁ、、うん。」
「まだ聞いてるの?」
「ん。好きだから、ね、、。」
彼女は気付いてるのかな。この曲はずっとリピートされてる。今夜は、、ずっと、、。
i believe,you can be,all i need,to believe
「1年なんてあっとゆう間だね」
「うん、、」
「のっちももう21かぁ〜」
「うん、、」
変な気分だ。この曲を一緒に聞くのは、1年ぶり。
初めて一緒に聞いた時は、希望の曲だ、と思ったけれど。
感情なんて、簡単だ。
次に聞いた時は、別れた後も願ってしまう、願望の曲に聞こえた。
「1年じゃなくて、2年だよ、、」
「は?」
「・・・別れて、、」
「・・・・・あぁ、、そっか、、」
顔色ひとつ変えない。
先に視線を逸らしたのは、のっちの方だった。
2年前の昨日。二人は別れを選んだ。
なんてことはない。ただ“信じる”ことは、2年前の二人には、難しすぎた。
別れる前に、二人で見つけたこの曲を、誕生日の前日に渡して、かしゆかはいなくなった。
なのに、去年も今年も今日になると、なんの連絡もなく部屋に来るのは、何でだろう。
何度も何度も独りで聞いたこの曲を、今日だけは何故か二人で聞く。
そして変わらない笑顔で言うんだ。
「誕生日おめでとう」
時計の針がぴったりと重なった。それだけ言って、かしゆかは玄関にむかった。
and i believe,that you can be,what i need,to believe
i believe
「ゆかっ、、」
2年間、呼び止められなかった人の名前が、静かに流れる曲の隙間を縫うようにして、届いた。
伸ばした右手で掴んだかしゆかの右腕は、変わらず折れそうなくらいに、細かった。
「・・・なん、よ、、」
スローモーション。振り返る。髪が揺れる。目を伏せる。
i believe,you can be,all i need,to believe
「戻って、きなよ、、」
I believe you’re what i need
返事も待たずに抱き締めた。
感情なんて、単純だ。
2年前からちっとも変わらないまま、ここにある。
かしゆかの腕が背中にまわった。そのまま小さく頷いた。
これ以上ほかに、何も必要ない。
のっちに全てをくれた人。
重なった時計の針が、少しずつ離れていく。
二人の影は、ぴったりと重なったまま。
今夜は、ずっと、、。
これからは、ずっと、、。
END
最終更新:2009年10月22日 19:49