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Side N
温めたココアを持ってあ〜ちゃんの隣に座る。
「はい、温まるよ?」
「ありがと。」

一口飲んで、そのままカップを両手で持ってるあ〜ちゃん。
「あ〜ちゃん。」
「ん?」
「まだ、怖い?」
「…ぅん。」

「今朝、ね?のっちと、ゆかちゃん、死んじゃう夢、見ちゃって…。それからずっと、怖いの…。」
そりゃ怖いよね。あたしだって。あ〜ちゃんが…って想像しただけで怖いよ。
「ごめんね?」
「何、が?」
「今日会った時から、様子が違うの気付いてたのに、話聞かなくて…」

「のっちは悪くないよ。」
でも、映画館であ〜ちゃんを泣かせちゃったし。
「でも、ずっと怖かったんでしょ?」
「ぅっ。」
また、我慢してる。

「怖い時は、言ってくれて良いんだよ?」
膝を立てて座るあ〜ちゃんを、横から抱きしめる。
「あ〜ちゃんは、一人じゃないから。」
「ぅん、今度から、そぅする。」



「それから…。」
「ん?」
あ〜ちゃんの顔が見えるように、横顔に掛かる髪を後ろへと流すと、こっちを向くあ〜ちゃん。
「幸せって思って泣いてくれる時みたいに、辛い時に、あたしの前で泣くの、我慢しなくていいからw」

「ぅん、そう、する…。」
そう言ったあ〜ちゃんの頬を、静かに涙が伝う。
そのあ〜ちゃんとおでこを合わせて、そっとキスを交わす。
少しでも、あ〜ちゃんの恐怖が消えるように…。あたしはココに居るよって。

Side A
のっちが少しずつ、あたしを覆う恐怖を剥ぎ取ってくれる。
自分じゃ抜け出せない闇を…。

「あたしさ、あ〜ちゃんのこと守っていきたい。」
「え?」

『オレは死んだって、おまえのこと守ってやる』
映画の中で、男の子が彼女を抱きしめて言ったその言葉を思い出した。
あたしはそんな言葉、全然嬉しくないよ。のっちも知ってるでしょ?

けど、のっちの言葉は、それとは少し…ん〜ん、全然違っていた。

「でもw今日の映画の男の子みたいに、死ぬ覚悟なんてないんだよねw。」
そんな覚悟、無くても良いよ?



「だって、そんなのあ〜ちゃんが悲しむだけじゃん?」
「のっち…。」
やっぱり、のっちだな…。
「だから、一緒に生きてあ〜ちゃんを護ること。それがあたしの覚悟なんだw」

死ぬ覚悟
  と
生きる覚悟

それは先がまったく違ってくる。
守った相手を、また守れるかどうか。
側に居れるかどうか。

「あ、でも、あ〜ちゃんが一緒に死んでって言ったら死ねるけどねw」
「何それ。そんなこと言わないもん…。」
少しだけ膨れてみる。
「うん、知ってるw例えばだからぁ。」
「でも、ありがと…。」
一人にしないでくれて。

「あと、こんな話、嫌だろうけど…。」
そう前置きして話を続ける、少し困り顔ののっち。
「もしも、あ〜ちゃんをおいて死んじゃったら…。」
確かにあんまり聞きたくないな…。
多分あたし今、変な顔しちゃっただろうなw
でも、のっちの話は、いつだってあたしの心を導いてくれるのを知ってる。

「悲しんで、泣いて、また怖くなるかもしれないけどさ。それで良いと思うんだ。それは自然な感情だからさ?」
あたしが、あの頃と変わらず弱いままだと思っていた自分を、それで良いと言ってくれる。



「でも、その後に必ず周りを見てみて?あ〜ちゃんを助けてくれる人、きっと居るから。一緒に、乗り越えてくれる人。」
それは、今ののっちみたいに。

「でぇ、見つけたら幸せになって?それが、のっちの…大本彩乃の願いだからw」

もぅ、何でのっちはいつも温かいんだろう?
のっちの言葉
いつでも、あたしのことが最優先だよって、あたしには勿体無いくらいだよ…。

「ね?」
どこまでも優しいその顔。
「…ぅんw幸せに、なる。約束…する。」
「ははw良かったw」

約束、忘れない
だから、ね?のっち?

「今は、のっちが一緒に、乗り越えてくれる?」
幸せになるから。
「もちろん。そのつもりw」
あたしを覆っていた闇は、小さな塊になっていた。けど、消えた訳じゃない。

のっちの言葉に、ずっと持っていたカップをテーブルに置いて、のっちと向き合う。
そして今度はあたしが、のっちとおでこを合わせる。
少しのドキドキ。

「ごめんね?ココア、せっかく温めてくれたのに…。」
「あぁ、平気だよ。また温めれば良いでしょ?」
「うん、そうだね。」
もしまた、黒い塊が大きくなったら、今日にみたいに助けてくれるよね?



「…のっち。」
のっちの顔が近い。
「なに?」
「側に居てくれて、ありがとう。それから…。」
「あ〜ちゃん?」
視線を逸らして、言い惑うあたしを呼ぶ声。

ドキドキが大きくなる。
ぐっと気持ちを込めて、初めてあたしからのっちへのキス。

そっと離れると、ビックリしてるのっちの顔。
そんなのっちに少しだけ笑って、言葉を続ける。

「それから…。」
伝えたい、言葉
まだ、誰にも伝えた事のない…
だから、緊張で声が震えた



「アイシテ、、ますっ…。」


一度、目を大きく開いてから、喜んでるような泣きたいような、不思議な表情をしてから
「あ〜ちゃん、ありがとうw」
のっちの長い腕が、あたしを抱き寄せる。

「のっちぃ…」
あたしものっちの背中に腕をまわして、それに応える。

「あ〜ちゃん…。」
抱きしめられていた力が緩んで、合わさるおでこ
お互い妙に照れくさくて、小さく笑い合う

ふっと笑いが途切れて、どちらからともなく重なった唇…



のっちの覚悟
信じるね?
疑ってばかりじゃ、未来は曇るから

のっちの願い
心にしまっておくね?
また怖くなった時、ちゃんと取り出せるように


のっち
あたしの愛しい人
繋いだ手、離さないよ?
そこにあたしの幸せがあるから

のっちが、あたしの幸せだから


—つづく—






最終更新:2009年10月22日 20:02