(side.A)
大丈夫と言ったものの、大丈夫じゃない。
でもゆかちゃんのことだから、うまくやってくれる。
私の心臓ははちきれんばかりにバクバク動いている。
頭がうまく働かないから、口を開いたら変なことを言ってしまいそうだ。
今日は必要最低限だけ喋るようにしよう…。
「はい!飲み物とお皿とフォーク!」
のっちが戻ってきた。ゆかちゃんがトレイを受け取り、ケーキをお皿に移している。
やはり私の様子が少しおかしいと思ったのか、のっちが私に近づいてくる。
「あ〜ちゃん、本当に大丈夫?体調悪かったりしない?」
眉をハの字にしながらすごく心配そうに聞いてくれる。優しいな…のっち。
「うん、大丈夫よ。心配してくれてありがとう、のっち」
「それならいいんだけど…」
それでもまだ心配そうに見つめてくる。でもおかげで少し落ち着けた気がする。
「はい!準備できたよ〜。食べよっ!」
ゆかちゃんがうまくのっちの気を逸らしてくれた。
「うん!食べよ食べよ!!」
ちゃんと頂きますをして、ケーキを口にする。甘くてすご〜く美味しい!
「美味しい〜!」
のっちはひまわりみたいな笑顔でケーキを食べている。かわいい…。そうだ!
「はい、のっち。あ〜ん!」
「へ!?えっと…あ〜ん」
チラッとゆかちゃんを見たけど、ちゃんと食べてくれた。
「美味しいよ、あ〜ちゃん!」
ニコニコしながらそう言ってくれるのっちがすごく好き。
ゆかちゃんはこのやりとりを見て、何か思いついたような顔をして。
「ゆかもやる〜!」
そう言ってのっちにケーキを差し出す。
「はい、のっち!あ〜ん…」
「はぅ…。えっと、あ〜ん」
何をする気なんだろう、ゆかちゃん…。
「美味しい?」
「うん!美味しいよ、ゆかちゃん!」
ゆかちゃんがチラッと私を見た。何かが始まる。
「のっち…クリームついてる」
「え?どこ??」
嘘だ。クリームなんてついてない。
「ここ…」
ゆかちゃんがのっちに近づき頬に手を添えたかと思うと、のっちの唇をペロリと舐めた…。
「なっ…だめだって!ゆかちゃ…っ」
隙を与えずのっちの唇が奪われる。
「ん、んんっ…」
状況が把握できてないせいでうまく抵抗できないのっち。
その間にもゆかちゃんのキスはどんどん深くなって…。
「ん、ゆかちゃ…ん…」
のっちの顔がどんどんとろけていく。すごい…。
ゆかちゃんの舌が、のっちの舌と絡まって…
人のキスをこんな近くで見ることなんて初めてで、私は言葉を無くしてしまう。
途中ゆかちゃんがチラッとあたしを見た。
ゆかちゃんの瞳は、見たことないほどすごく色っぽくて…見惚れてしまう。
少し、本当に少し微笑んだかと思うとゆかちゃんは視線を戻した。
チュ…クチュ…と舌と唾液が絡まるキスの生々しい音が聞こえてきて、
それが目の前ののっちとゆかちゃんからしていると思うと、
すごくエッチで、すごく恥ずかしいのに目が逸らせない…釘付けになってしまった。
「んふ…はぁ…のっち…」
ゆかちゃんがのっちから離れる。でも二人の唇の間には銀色の糸が見えて。
ゆかちゃんのキスが、深くて…濃厚だったことを思わせる。
トロン…としていたのっちだけど、私がいることを思い出したのか目に見えて慌て始めた。
「あああ、えっと、これは違くて…」
何が違うの?のっち。ゆかちゃんのキスでトロンとしてた癖に。
のっちはどうにか言い訳しようと必死だ。相当パニくって焦っているのか汗が流れている。
だから最上級の笑顔で言ってあげた。
「汗、大丈夫?」
最終更新:2008年10月11日 15:20