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あんな言葉じゃ伝わらなかったの?少しは頭を使ってよ。せっかくの私の気持ち、無駄にするつもり?生意気。気に入らない。のっちは、ゆかのことだけ見てればいいのに。ゆかのことだけ考えてればいいの。ゆかのこと、もっと大事にしなさいよ。
あの夜、ゆかが“好き”を伝えたあの夜から、のっちに触れてない。あんなに嬉しそうに笑ってたくせに。生意気。気に入らない。何考えてるわけ?ゆかのとこ来るわけでもなく、何してるわけ?ゆかは、ゆかは、、。のっちがいい、と。そう伝えたはずなのに。


真夜中に鳴る電話。表示を見る。のんのんからの電話。なんだかなぁ。いい加減“のんのん”やめよ、かな。だって、ちっともそう呼ばないし、呼んだら呼んだで、他の人まで、そう呼びだしたらたまったもんじゃない。
「・・・なに?」
「えっ?怒ってる、の?」
怒ってるよ。そんくらい気付け、ばか。だいたい、こんな時間になんなわけ?あれから、何とも言ってこなかったくせして。
「・・・べつに。なに?」
「ん、、うん、やっぱ、いいよ・・・」
はぁ?いい加減にしなよ?只でさえ触れることすらできなくて、苛々してて、電話が来てその気持ちがちょっとだけ浮上したってゆーのに、はっ?いい、わけないのに、いい、とかゆーな!
「もー!そーゆんめんどくさいよ。なに?」
電話の向こう、のんのんの眉毛はめっちゃ下がってることが明らか、だ。多分、シャツの裾かどっかに指を絡ませて、もじもじもしてるだろう。・・・てか、なんなん、ゆか。こんなに“のんのんのことはお見通しです!”みたいなのって、、。嫌な女。そんなふうには、なりたくない。
電話の向こうから、うー、って小さい唸り声が聞こえた、気がした。
「どしたんよ?」
さっきまでよりは、随分優しい声で聞いてみる。じゃないとこの子はこのまま何も言えない。
「んっとね?んーっと、、」
「うん?」
「・・・淋しくなっちゃったの」
「・・・そう」
「・・・うん」
「それで?」
「えっ、、?」
絶対にバレないようにしないと。ゆかが今、ニヤけてること。声に乗せて、伝わらないようにしないと。
片手に携帯を持ちながら、鏡の前で化粧をチェック。前髪を指で整えて。あ、そうだ。この頃夜は寒いから、なんか羽織るもの、っと。あ、カーディガンでいいや。
「それで?淋しいのはわかったけぇ、どしたん?」
「んっと、、えっと、ね?」
ばか。早く言いなさいよ、もう。器用に片手でグロスを塗った。もー、助け船出す、か。
「どしたん、じゃないか。どーしたいん?んー、、どーしてほしいの?」
あ、今、電話の向こうで、のんのんの犬耳はピクンって立ったな、どうせ。
「・・・あ、いに、来て?」
ふっ。困ったなぁ。どうしようかなぁー。ま、準備完璧だけどね。
「しょーがないなぁ」
ふふっ。きっと今頃シッポぶんぶん振ってるでしょ?ちょっと待ってなさい。ゆかが行くのを、お座りして、お利口にして、ちゃんと待ってるんよ?



部屋につくと相変わらずの甘い空気に頭がガンガンした。わかりきってることなのに、それでも来てしまうのは、きっと熱が足りてないから。うん。きっとそう。さっさとエッチして、のっちのヤラしい顔を見て、曲線を撫でて、秘めた声を聞いて、濡れたそこに突っ込めば、きっと満たされる。
「・・・ごめん、ね?」
あったかい紅茶をいれてくれた。手渡されると同時に、泣きそうな顔で、そう言った。
なんよ?そんな顔して。どしたんよ?そんな顔して。いんだよ?呼び出してくれて。いつだって呼び出してくれて、いんだよ?そんな顔するくらいなら、ゆかを呼べばいんよ。すぐ来てあげるのに。全部、あげるのに。
「別にー暇だったし」
でも、期待はさせてあーげない。そんな、“会いたかった”なんて言ったら負ける。負けたくないの。ゆかは絶対、優位でいたい。
「・・・そっかぁ、、」
下唇を突き出して、淋しそうにうなだれた。あ、可愛い。本当に犬コロみたい。犬なら“のっち”より“のんのん”のが、いいかも。
「なんよ?」
伏せた視線が向けられて、ちょっとだけ胸が鳴った。きゅん、って。今にも泣きだしそうなその顔で、ゆかの全てをさらってく。すっごい威力。それ、本当に天然?泣き顔なのに、圧倒的だよ。絶対に絶対に他の人には見せないで。
「ゆかちゃんは、、のっちに会えなくて淋しいって思ってくれない、の、、?」
うわ。もう。駄目だ。何、可愛いこと言ってんの?あぁー、言いたくないのに言葉がもう喉まできてるよー。駄目駄目駄目だ、め、、


「思うよ、ばか」
あーぁ。言っちゃった。強がりなんて、捨てるべきなのかもね。でも、なぁ、なんだか、なぁ。こんなの、嫌だな。強い女で、ありたいのに。
「ばかだもん」
うん。知ってるー。悲しいほどに知ってるー。でも、のっちのこと、ばかって言っていいのは、ゆかだけ、だからね。他の誰にも言わせないんだから。
「もーいいよ、ばかでも何でも」
「・・・ほんとぉ?」
「うん、のっちなら何でもいい」


ん?あれ?あっ、、。何言っちゃってだろ。こんなのゆからしく、ない。なんで?なんで、いつの間に、こんなにのっちが膨らんでるんだろ?心も身体も寝ても覚めても、熱しても冷めても脳みそも魂でさえも、なんでこんなに“のっち”なんだろ。それ以外に言葉も見つからない。


「のっちだってゆかちゃん以外いらんもん」
擦り寄ってきたのっちの頭を撫でたら、泣きそうな顔のまま笑った。早く会って、早く抱き締めたかった。エッチなんてしなくても、心はちゃんと満たされるんだ。熱より、ぬくもりのほうが、こんなにも幸せだ。
こんなのっち、誰にも渡したくないし、むしろ少しだって見せたくない。だから、ゆかのことだけ、考えてなよ。他を見る余裕がないくらいに。




いつからか、いつだって、ゆかの中の一番はのっちの特等席だった。
だから、のっちの中の一番も、ゆかのために、ちゃんと空けとくんよ?
てか、無理矢理にでも、ねじ込んでやるけどね。




Part7.END





最終更新:2009年10月22日 20:26