ねぇ、ゆかちゃん。
ホントはさ。
一緒に連れて行きたかったよ。
どこまでも君を連れ去りたかった。
でも、
どうやったって想像できなかったんだ。
のっちだけの隣で笑ってるゆかちゃんの姿を、想像できなかったんだ。
だって、のっちが見てきたゆかちゃんの中にはいつだって、彼女が、、あ〜ちゃんがいたから。
でも、きっと、そんなゆかちゃんだから好きになったんだよ。
君を連れ去るのはわたしの役目じゃないんだって、あの日に気づいたから。
君があの子と一緒にマッサージに訪れた、あの日。
君の隣には黒髪にふわふわパーマをかけて、ふわふわのワンピースに身を包んだかわいい女の子。
二人が並んでるのを見て、一目でわかったよ。
彼女が君の大事な人だってこと。
彼女があの、あ〜ちゃん、だってこと。
だって、あまりに想像通りの可愛らしい女の子で。
そして、あまりに自分とは正反対な子で。
そんな彼女に、君は、わたしが見たことのない柔らかな顔で笑いかけていたから。
それは、嫉妬なんて通り越して、
ずっと見ていたいくらいに、バランスの取れたキレイで幸せな二人だったから。
5....
「そろそろ、行きましょうか?」
「はい」
大きなスーツケースを転がしてゲートをくぐった。
大きなガラス張りの廊下から見えた空は、真っ暗で。
だけど、零れそうな星空だった。
「ホントにいいの?」
「え?」
「大切な人、残して行くんでしょう?」
「はい・・。でも、、、」
ゆかちゃんには、あの子もいるから。
ゆかちゃんは、ちゃんとあの子が愛してくれるから。
それに、あの子の方が何枚も上手なんて、あの日に気づいてしまったから。
あの日。
隣で寝てたはずの、あの子の口元は確かに笑っていたから。
声を我慢するゆかちゃん越しに見えた彼女は、確かに最高の甘い笑顔でわたしに笑いかけてたから。
「大丈夫です」
きっと、ゆかちゃんは大丈夫。
離れてしまっても、
ゆかちゃんが大丈夫なら、のっちも大丈夫。
ゆかちゃんが笑えてるなら、のっちは大丈夫。
だから、、ちょっとだけ。
行ってきます。
いつでも君のハートを耳に輝かせて。
いつでも君を心の真ん中に置いて。
君に出せなかった手紙は心のどこかに隠して。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇
ゆかちゃんへ。
何も言わずに突然いなくなってごめんなさい。
この国から旅立つこと。
突然決まったことじゃなくて、半年前には決まっていたことでした。
なかなか言い出せなくて。
、、いや、言うつもりは初めからなかったのかもしれんね。
きっと口にしたら、何をしてでもゆかちゃんを連れて行きたくなっちゃうから。
ここから離れて、自分の可能性にチャレンジしてみること。
それは夢に近づけるチャンスで。
悩むまでもなく、のっちの中で選択肢はひとつでした。
、、ひとつのはずでした。
ゆかちゃん、
のっちは生まれて初めて後悔をしたいと思います。
のっちさ、、物事を深く考えるの苦手だから、後悔っていう後悔はしたことないんだよね。
だけど、
何も言わずに旅立つことを、ゆかちゃんを残して行くことを、
きっとのっちは一生後悔します。
待たなくていいから。
忘れていいから。
だけど、次に会える時には、正々堂々と、、真正面から、ゆかちゃんに想いを告げたいと思います。
例え、その時にゆかちゃんがのっちのことを忘れていても、絶対に思い出させるから。
そして、ゆかちゃんをのっちにものにします。
あ〜ちゃんからゆかちゃんを奪います。
今度は心も全部。
なんて、ね?
ちょっと大見栄張りすぎちゃった?w
うん。
でも、それくらいの気持ちで行ってきます。
ちょっと、遠いけど。
きっと、同じ月は見られないけど。
だから、
ちょっとの間、ゆかちゃんのハートを貸しておいて下さい。
その代わりと言っちゃなんですが、ゆかちゃんにはのっちの星を貸しておくから。
では、またいつか会いましょー!!
のっちより。
P.S.
どこにいても、何をしていても、
のっちは、ずっとゆかちゃんを想っています。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇
結局、渡すように頼んだのは切り取った後半部分だけで。
前半を渡せないなんて、ヘタレもいいとこ、、なんだけどさ。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇
「だいたい、非常識すぎるんよ」
「まぁ、、急、だよね」
「普通、手紙くらいつけるでしょ。せめて一言添えるとかさー。。もぉ、ホントありえん!」
「でもさ、ゆかちゃん」
「ん?」
「嬉しそうだね?w」
「そ、そんなこと・・・!」
「でも、さっきからニヤけとるよw」
そう言って、ゆかの頬をつんつんと突くあ〜ちゃん。
じゃれ合うあたしたちは生れて初めて国際便なんてものに乗っちゃってます。
「だってぇ、こんな急で仕事休めんかったらどうするんよ」
「ゆかちゃん、帰ったら倍の仕事します!って関さん蹴ってきたんだもんねw」
「まぁ、あれは二流じゃけぇ、別にいいんよ」
先週、異国から届いた封筒の中には二人分の航空券と、どこかの劇場のチケット。
そして、更に小さな封筒が入ってるだけだった。
あのどこか懐かしい、さわやかな香りがしていた。
そして、同封された小さな封筒の中には、帰りの航空券が三枚。
4....
ねぇ、のっち?
のっちに会ったら、真っ先に蹴っ飛ばしてやろうと思ってるんだ。
何も言わずに行っちゃったこと、やっぱり許せないから。
覚悟しててね?
ゆか、脚には自信あるんだw
3...
だけど、、
もしも、万が一、、
のっちの顔だけ見て、ゆかが泣き出しちゃったら、
あの時みたいに包み込むようにやさしく、だけど少し強引に抱きしめてね?
2..
今から、迎えに行くよ。
世界で一番大切なあなたを、世界で一番大切な人と一緒に。
1.
take off!
最終更新:2009年10月22日 20:30