A
実習中はのっちの家でご飯を作ると決めてたけど、あの日から行かなくなった。
どうしていいのか、分からなかった。
私達はもう終わりにするべきなのかな。のっちがそう望むんなら別れるけど…。
でも、こんなに好きにさせといて別れようなんてずるいよ。
のっちの実習が終わって、数日。のっちからメールがきた。
話したい事があるから家に来てほしいと。
これは別れ話ってやつ?無理だよ。急過ぎるじゃん。
でもさ、別れたとしても、私の側に居てくれる?
私はあなたの呼吸を聞きながら生きているのに…。のっちが居なくちゃ無理だよ…。
のっちの家について部屋の奥へ進む。
のっちは俯いていて、表情はわからない。
N
その次の日、あ〜ちゃんと会った。ちゃんと気持ちを伝えるために。
短い間会わなかっただけだけど、凄く久しぶりに会った感じがする。凄く愛しく感じる。
どう話し始めればいいのか分からず考えていると、
「のっち?」
「…あ、あ〜ちゃん。ごめんね、突然。」
「ううん。どうしたの?」
「うん…。今更だけどさ、ちゃんと気持ち伝えようと思って。」
「うん…。」
ちゃんと聞いてくれるだろうか。
「あ〜ちゃんはどうでもいい存在なんかじゃないよ。」
「え…?」
そう、君はどうでもいい存在なんかじゃない。
「あ〜ちゃんが居ない日々に、私の生きる意味なんてない。私にはあ〜ちゃんが居なきゃダメなんだよ。」
「のっちぃ…。」
君が居なきゃダメなんて情けないかもしれない。
けど、本気でそう思うくらいあ〜ちゃんはなによりも大切な存在なんだよ。
だから、
「不安な思いさせてたよね?ほんとに、ごめん。…でも、私にはあ〜ちゃんが必要なんだよ。」
距離が近くなって、私は浮かれていた。失う前に気持ちを伝えるよ。
「あ〜ちゃん、好きだよ。」
だから、私の側にいて。私を愛して。
「私ものっちが好き…。大好き。」
久しぶりにあ〜ちゃんを抱き締める。
暖かな君の温度に心が穏やかになる。
ただ…、ただ、本当に君が離れなくて良かったと思う。
A
…良かった。ほんとに良かった。
のっちにとって私はどうでもいい存在じゃないんだよね。
「あ〜ちゃん、好きだよ。」
「私ものっちが好き…。大好き。」
久しぶりにのっちに抱き締めてもらった。
実習の間、何があったのかは分からない。でも、知らなくていい。
だって、のっちが側に居るんだもん。
それだけで、充分だよ。
だから、もう、絶対あ〜ちゃんの事離さないで。
他の人の事なんて見ないで。
のっち、これからもさ、私達は愛し合おうよ。
もう、私はあなたの事しか愛せないんだよ。
N
暑い夏に見る蜃気楼。
蜃気楼は普通触れられない。それどころか、存在しないんだ。
なのに、私は蜃気楼に触れてしまった。
だって、その時は確実に私の目の前に居たんだもん。
触れられるはずのない蜃気楼に触れてしまった私は目の前にある大切な人を失いそうになった。
惑わされることなく、君を失わずにすんだけどさ。
触れてしまった罪は消えないよ。
樫野さん、君は私にとって蜃気楼のような存在だったんだ。
つづく
最終更新:2009年10月22日 21:15