side-K
あれから1ヶ月半くらい。
あ〜ちゃんの新居は無事に見つかった。
あたしの同級生の勤め先の不動産屋さんに頼んで、良い物件を格安で紹介してもらえた。
大喜びのあ〜ちゃんが居候最終日に作ってくれたディナーはホントにおいしかった。
あ〜ちゃんが出て行ったあたしたちの部屋は広くなったはずなのに、なぜだか少しだけ狭くなったように感じた。
街はもうクリスマスムードが漂ってる。
今日はのっちとクリスマスパーティーの買い出し。
あ〜ちゃんも呼んで、3人で楽しく一晩過ごそうって計画です♪
「ちょっと、のっち。歩くの早いよ!」
「えっ、ゴメン。」
あたしより歩幅が大きいあなたが少し先を行くだけで、言いようの無い寂しさに襲われる事があるなんてのは内緒。
手つなげば歩調は揃うのかもしんないけど、あたしたちには不思議とそういう習慣は無い。
「じゃあこうしよっか。」
そう言ったのっちは、荷物を持ってない方の手であたしの手を掴んで自分のポッケに引っ張り込んだ。
こんなに密着して歩くなんて珍しくて、あたしは正直ちょっと照れた。
「あれ、ゆかちゃん顔赤くない?体調悪いとかあったらホントすぐ言うんだよ。」
「大丈夫! とゆーかこれはあんたのせいじゃ!」
「えぇっw なにそれ〜・・・」
テレをごまかすのに急ぎ足になっちゃうあたしはきっとかわいげ無いんだろーなぁ。
でも、かわいげなかろうが、あたしがつんけんした態度で接しようが、なんだかんだってずーっと一緒にいてくれるのっちのこと愛してるから。
だからこれからもずっと一緒にいられますように、って思ってるんだよ。
side-N
顔が真っ赤なゆかちゃんが照れてるだけだってのもちゃんと気づいてるから。
だってゆかちゃん、気づいてないかも知んないけど、照れてるとき絶対のっちに肩ぶつけてくるもんねw
そんなとこもかわいくて好きだよ。
クリスマスに浮かれて賑わう街はいつもとは少し違う。
特別な時間を期待してるだろう道行く人たちの笑顔も普段とは少し違う。
でも、もっと大事な事がある。
20年前、あなたが生まれた日の事を祝福しなくちゃね。
「ゆかちゃん、ちょっとついて来て。」
繋いだ手を軽く引っ張ると、ゆかちゃんは少し驚いた顔をした。
どこに連れてかれるんだろうってゆかちゃんの心の声が聞こえてきそう。
わたしが連れて行った先は、イルミネーションが施された大きな樅の木の下。
ゆかちゃんは訳が分からないって顔。
あらかじめ用意しておいたプレゼントを鞄から出した。
「ハッピーバースデー。ゆかちゃん。」
ちょっとびっくりした感じでこっちをじっと見つめてくるゆかちゃん。
「・・・忘れとった。」
自分の誕生日忘れてたのか。意外なポイントでぼけるゆかちゃんってやっぱりカワイイ。
手のひらサイズの小さな箱を渡すと嬉しそうな顔して、指先で箱をいじり始めた。
「開けていい?」
「もちろん。」
中身は、シンプルな細身のリング。
「うわぁ・・・ めっちゃカワイイ!」
「ゆかちゃんっぽいやつ、って思ってさ、あ〜ちゃんに選ぶの手伝ってもらった。」
手の中でリングを弄び、じっくり観察するゆかちゃん。
大きな黒目がくるくる動く様はとっても愛らしい。
「ねぇ、のっち。この裏面の数字なに? 2320?」
こっからがとっておきのサプライズだよ。
「ゆかちゃんの誕生日とあたしの誕生日だよ。」
「なるほどね〜。 なんか遠回しだなぁw」
「なーんちゃって。 新居の部屋番号だよ。」
「・・・ えっ?」
「今の家はゆかちゃんの職場からも遠いし、交通の便も悪かったじゃん。結構前から引っ越し考えててさ、貯金もかなり溜まってたし。んでどうせならゆかちゃんをびっくりさせちゃおうかと思いまして。」
「そんな・・・ そんなプレゼントあり?」
「大有りだよ。もう契約も出来てるし。今日うちらがゆっくり買い物してる間に友達が荷物大体新居に移してくれてるはずだから。」
「ぇ?じゃぁ今日帰るのはどっちのお家?」
「新居だよ。明日もっかい今の家に帰って大掃除とかして、完全に引っ越し完了。」
ゆかちゃんの目にみるみるうちに涙が溜まっていく。
「のっちぃ... ありがと。」
涙がこぼれ落ちる前にしっかりゆかちゃんを抱きしめた。
わたしの腕の中でゆっくりと深呼吸する彼女を、ホントに愛しく思った。
「さ、冷えるしそろそろ帰りますか!」
「うんw 場所分かんないからちゃんと連れてってね?」
「もっちろん!」
side-K
信じらんない。
いつの間にそんな引っ越しの準備とかしてたんよ?
のっちがあたしの通勤の事とかそんなに気にしてくれてたなんて思わなかった。
そのために貯金してたなんて全然知らんかった。
そんなにもあたしを思ってくれてるなんて気づかなかった。
ホントにのっちで良かった。
あたしも同じだけのっちの事を思ってるから。
絶対に手を離したりしないから。
だから、何年先も二人が歩んでいけますように。
そう祈った。
7.Saturday おしまい。
最終更新:2009年10月22日 21:37