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大学1年の夏。
彼氏と別れた為、夏休みのスケジュールがパァになってやる事がなくなった。
だから、バイトでもしてみようと思った。
一人暮らしのアパートから比較的近いレンタルビデオ屋のアルバイト。
店長はキモかったけど、時給が高いからそこは目をつぶろう。

「じゃあ、樫野さん。今日からお願いね」
キモ店長は、ゆかの足をジロジロ見みている。なんか透視されてるみたい。マジで、きもりわりゅい。きもーい。
「それから仕事内容は彼に教えてもらってね。おーい、タナカくーん」
よかった、教えてくれる人が違くて。てっきりキモ店長だと思ったから。

「はい?なんすか?」
タナカくんと呼ばれた彼は、なかなかの好青年風の男の子だった。
「彼女、樫野さん。今日から入ったんだ。仕事教えてあげてくれる?」
「はぁ。わかりました・・・」
タナカくんって子はあまり乗り気じゃない返事。ちょっと気まずい雰囲気に。

「樫野です。よろしくお願いします」
とりあえず、愛想良く自己紹介。
「あっ、タナカっす。よろしくお願いします」
お互いにペコリと会釈。

「樫野さんって、いくつっすか?」
「じゅうはちです。今年の冬で19になります」
「マジで?タメじゃん。僕も19っす」
「ほんとですか?」
あら、さっきの気まずい雰囲気がなくなった感じじゃん。よしよし。

「タメなんだから、敬語じゃなくてもいいよ?」
「でも、タナカくんはここの先輩なわけだし・・・」

「あはは。先輩って言っても僕も今年の春から始めたばっかだよ?」
「あー、そうなんだw」
こんな感じでゆかはタナカくんと仲良くなったのだ。

ちょくちょく話してると、彼もゆかと一緒の大学に通ってるって事がわかった。
彼女はいないんだって。絶対いると思ったのに。
それ聞いて、ちょっとタナカくんの事狙ってみようかな〜なんて思ったり。イヒヒ。

「んじゃ、僕、帰ってきた品戻しにいってくる」
「よろしくぅ」
タナカくんはDVDを両手にワサっと持って陳列棚へ向かった。


ゆかはカウンター係り。
パソコン相手にカチカチ操作してたら「ゆーかちゃん♪」って頭上から声が聞こえた。
見上げると、あ〜ちゃんだった。

「ありゃま?どしたん?」
「どしたん?って、DVD借りにきたんですけどwそれと、ゆかちゃんのバイトを見学にw」
あ〜ちゃんの手には韓流ドラマ。ほんと、好きだねwゆかは絶対見ないけど。

ゆかはあ〜ちゃんの相手をしてると、遠くからガシャガシャって何かが落ちる音が聞こえた。
きっとタナカくんがDVDを落としたんだろうと思って、ゆかは気にせずにあ〜ちゃんの相手を続けた。

「じゃあ、またメールするね〜」
「はーい。バイバーイ」
あ〜ちゃんは韓流ドラマのDVDを手に持って帰ってた。

あ〜ちゃんと入れ違いにタナカくんが戻ってきた。
「タナカくん、キミDVDぶちまけたでしょ?」
「・・・えっ?あ、あぁ。う、ん」
ゆかがタナカくんをおちょくってるのに、彼は出入り口を凝視し、虚ろな返事。

「そんなことより・・・今の子・・・樫野さんの友達?」
「あ〜ちゃん?うん、幼馴染だよ?」
「マジで!?」
「・・・うん」
「やっべー!!ちょー可愛い。一目惚れしちゃった」
「・・・マジ?」
おいおいまた、このパターンかよ・・・。一体、何度目よ。
昔からゆかがちょっといいなって思う男の子って、大体ってゆーか、100%あ〜ちゃんの事を好きになっちゃんだよね。
まぁ、相手があ〜ちゃんだからゆかは身を引くけどね。
なんなんだろ?これって?ちょっと笑える。痛いくらい笑えるわ。

「樫野さん!!!」
うわっ、止めて。そんなすがるような子犬のような目で、ゆかを見ないでよ。
「しょ、紹介して、あげようか?あ〜ちゃんに・・・」
「ありがとうございます!!」
「じゃあ、代わりにカウンターやって」
「はい!!何でもします!樫野様!!」
ちょっと、こいつおもしろいな。あ〜ちゃんダシに使って、バイトさぼれちゃうかもw

そしてタナカくんはゆかのおかげで、めでたくあ〜ちゃんと付き合えたのでした。

めでたしめでたし。チャンチャン。



**********

で、終われば超ハッピーエンドで、この物語も終われたのに。
人生何が起こるかわからんね。

大学2年の秋が始まる頃。
ふたりに突然の最低最悪の別れ。
ゆかは別れた本当の理由をあ〜ちゃんから聞いて、速攻タナカくんに教えた。

「あんた、あ〜ちゃんの事好きなんじゃろ?」
「・・・うん」

「じゃったら!あ〜ちゃんの事助けてあげてよ!!」
「助けるって・・・どうやって?」

「そんなん知らんけぇ!!どうにかこうにかして助けてよ」
「そんな適当な事言うなよ。僕・・・嫌だよ」

「あ〜ちゃんの事見捨てるん?」
「見捨てたのは向こうじゃないか!」

「それは理由があってじゃん!!ちゃんと説明したでしょ!」
「もう勘弁してくれよ。これからゼミとかあるし・・・忙しくなるから」

「あんた!ゼミとあ〜ちゃんどっちが大事なん!!」
「正直・・・自分が一番大事だよ」
タナカくんの諦めた目を見て、ゆかはもうこれ以上彼に期待するのは止めた。
その後、タナカくんはバイトを辞めた。
それからゆかはタナカくんとは連絡を取らなくなった。向こうからも来なくなった。

キモ店長は人件費削減って言って新しいバイトを募集しなかった。
それが一年近く続いて、キモ店長の透視のような眼差しにさすがにガマン出来なくて、ゆかも辞めちゃおうかなって思ってたら、他の子が先に辞めちゃった。
キモ店長は仕方なしに、バイトの求人をかけた。
やってきたのは、ゆかと同い年くらいの女の子だった。
ボブヘアーがおにぎりみたいな、目が大きくて割と綺麗・・・てか、かなり綺麗な子だった。
それが、ゆかとのっちの初めての出会い。



「有香ちゃん。彼女、オオトモさん。今日から入ったんだ。仕事教えてあげてくれる?」
「・・・あの、オオトモじゃなくて、大本、です」
「えっ?あぁ、ごめんごめん。オオトモさんwwじゃ、有香ちゃん。よろしくね」
えっ?キモ店長、まだ間違えたままだから。やばい・・・ゆか、笑いそうw
てか、いつからゆかの事下の名前で呼んでんだよ。マジでセクハラで訴えるぞ。

「あっ・・・大本彩乃です。よろしくお願いします」
「樫野有香です。よろしくお願いします」
お互いにペコリと会釈。

「ごめんね。うちの店長、基本キモくて、バカだから。名前間違えたの許して下さい」
ゆかはキモ店長を貶しつつ、かわりに謝ってあげた。
「いや、大丈夫・・・です。慣れてますから」
この時ののっちはモロ『人見知りです!!』って感じの喋り方。
ゆかも基本人見知りな子だけど、のっちとはなんか直感で仲良くなれそうな気がしたんよね。
そんでそのゆかの直感通りに仲良くなったのだ。

「ねぇ、のっちぃ。韓流ドラマって見る?」
ゆかはそのDVDを整理しながらのっちに話掛ける。

「見ない。ロストとか、海外ドラマなら見るけど」
「あー、ゆかもそっち派だな。あ〜ちゃんが韓流ドラマ好きなんだよね〜」

「また『あ〜ちゃん』の話?ほんと、かしゆか『あ〜ちゃん』の事好きなんだねw」
「だって、あ〜ちゃん可愛いんだもん。イヒヒ」

「だから前から言ってんじゃん。のっちに早く会わせてよ」
「わかってるけど、なかなかあ〜ちゃんの予定が合わんのよね」

「『あ〜ちゃん』って、忙しい人なん?」
「まぁ・・・色々とね」

「ふーん。そっか。早く会いたいな〜。『あ〜ちゃん』に」
そう言うのっちは飼い主を待っている子犬のような目をして、本当に楽しみにしてるって感じの態度。
ちょっと可愛いなって思った。ちょっとのっちの事いいなって思った。

ゆかはのっちに恋をした。

女の子に対してこんな気持ちになったのは初めてだった。そう思った瞬間、ある事が脳裏に過ぎった。



『ゆかが好きになった男の子は全員、あ〜ちゃんの事を好きになる』
これって・・・相手が女の子の場合でも通用するんでしょうか?

もしかしたら、のっちがあ〜ちゃんの事助けてくれるかもしれん!!
ゆかは自分の気持ちを濁して、のっちに掛けてみることにした。

待ち合わせは大学の食堂。
先に着いたのっちはやけにソワソワしてる。
「のっち・・・ちょっと、落ち着きんさいよ」
「わ、わかってるけど・・・キャー、緊張するよ。どうしよ、かしゆか〜」
そんな情けない声出さんでよ。あんた、外見と中身のギャップありすぎ。そんなトコも可愛くて好きだけどね。

「あっ!きたきた」
ゆかはこっちに向かって小走りのあ〜ちゃんに手を振る。
あ〜ちゃんも振り返してくれた。
のっちは振り返って、あ〜ちゃんの姿を確認する。

「ごめんね。遅れちゃって。講義が長引いちゃったんよ」
軽く息切れしてるあ〜ちゃん。
そして「はじめまして。ゆかちゃんから話聞いてるけぇ。よろしくね、のっち」って、のっちにファーストコンタクト。

のっちは手に持ってたコーラの缶を落とした。
おかげでテーブルはコーラの海。
「ちょっ!!のっち、何してるん!!」
ゆかは、ふきんを取ってきて後始末。
「あっ・・・ご、ごめん。ボッとしっちゃってた・・・」
あ〜ちゃんをぽぅっと見ながら、上の空で返事するのっち。
ゆかは心の中でニヤリと笑ったよ。
やはり『ゆかが好きになった男の子は全員、あ〜ちゃんの事を好きになる』の法則は男女共通でもいけるのね。

のっちはあ〜ちゃんに恋をした。

別に、あ〜ちゃんを助けるのが男だけって訳じゃないもんね。
のっちならやってくれる・・・きっと。
ゆかは、そう思った。ゆかの直感は間違いない・・・きっと。
でもひょっと・・・本当にほんのちょっとだけど、心がチクって痛かった。痛かった。

ゆかが好きになった人はいつになったら、ゆかを好きになってくれるんだろう。て、なに・・・言ってんだ、自分。
甘えるのもいいかげんにせんと。あ〜ちゃんの方が何倍も苦しんでるのに・・・。

とにかく、今ゆかはあ〜ちゃんをどうにかせんと。
そのためにはのっちに頑張ってもらわんと。

のっちは村人Aって、わけ分からん事呟いてたけど、大丈夫かな?
とにかく、ゆかはのっちを全力サポートするけぇ!!

大丈夫だよ、あ〜ちゃん。
のっちがなんとかしてくれるから・・・たぶん、きっと。






最終更新:2009年10月22日 21:55