Side N
今年の年越しは、熱と共に布団の中で迎えた。
ずっと寝ていたけど
枕もとの携帯が数通のメールを受信して、目が覚めた。
それを見て、新年を迎えたことを知った。
ぁ〜、なんか切ないな…。
せめて実家に帰ってからだったら、一人じゃなくて良かったんだよなー。
体調が悪い時は、人間ネガティブになるもんだ。
なんて、考えてたら着信を知らせる携帯。
目を閉じたまま名前も確認しないで、とりあえずでる。
「うぃ…。」
『のっち?』
あ、あ〜ちゃんだw体はだるいけど、自然と顔は緩んでいく。
「あ〜ちゃん、明けおめぇ〜。」
『ぅん、明けおめw……て、それよりのっち、もしかして具合悪い?声がなんか…。』
「あwうんw2、3日前から風邪ひいちゃってw」
『熱は?』
「ん〜…38度?だったかな?」
『ぅわw結構辛いね…。ごめんね?こんな時間に電話しちゃって…。寝てたでしょ?』
「ん〜んw今年一番にあ〜ちゃんの声聞けて嬉しぃw」
『…もぅ、ばか。』
あ〜ちゃん照れてるw可愛いw
「えへへw」
『…電話、切るから。早く寝てね?』
「え、切っちゃうの?」
『寝ないと、ちゃんと治らないよ?』
「まだ、あ〜ちゃんの声聞いてたぃ…。」
こりゃ、我侭だなw
あ〜ちゃんは黙ったままで…多分困ってるよね。
「あ、ごめんw今の無し…。」
『何、話したら良い?』
「え?」
『…ちょっと、だけだからね?』
わw話してくれるの?言ってみるもんだねw
「うんwじゃぁ、紅白の話聞きたいw寝てたから全然見てないんだぁ。」
『分かった。えっとねぇ…。』
そう言って話しだしたあ〜ちゃんの声。
でも、頭はぼーっとしてるから、内容なんてほとんど聞こえてない。
今回も白が勝ったっていうのと、あ〜ちゃんが何回かメロディーを口ずさんだ歌しか憶えてない。
でも、所々相槌を打って、おちていく意識を、心地よく聞こえてくるあ〜ちゃんの声に委ねていった。
「…ん。ぅん?」
次に意識がハッキリした頃は、お昼近くになっていて。
あー、あ〜ちゃんが話してる途中で寝ちゃったんだ…。
こっちからお願いしたのに、何やってるんだか。
布団の中を覗いて携帯を探すと、開きっぱなしの携帯を発見。
あったあったw
メールを確認すると、最後にあ〜ちゃんからのメール。
—のっち寝ちゃったねwもうちょっとしたら家族で初詣行くから
のっちの風邪が早く治るように、お願いしてくるね?
その文面だけで顔が緩む。
あたし愛されちゃってるな〜、なんて自惚れてみたりしてw
早く治して、あ〜ちゃんに会いたいな。
クスリ飲むのに軽く食べないと…。
だるい体を起こして、冷蔵庫を開けるけど。
直ぐに食べられそうなのは…プリン、だな…。
うっし…。そう思ってプリンを手に取ると…
ピンポーン
ん、新年そうそう誰だろ?
両親にはうつしちゃ悪いから、来なくて良いよって言ってあるしなぁ。
のろのろと歩いて玄関を開けると…
Side A
いつも元旦は、毎年家族で一日のんびり過ごしてるんだけど…
熱で寝込んでるのっちが心配で、体が勝手に動いて
「ちょっと出掛けてくる。」ってのっちの家へと来てしまった。
のっちだって突然来られても、きっと困るだろうし…
それに具合悪いんだから一人の方が良いんだろうな…
でもやっぱり心配で、あたしの指は呼び鈴を鳴らす。
多分、寝てるだろうし
これで出なかったら帰ろう
そう思ってたら、玄関が開いて
「へぇぃ…。」
「ぁ、のっち。」
まさか出ると思わなかったから、反応が上手く出来なかったよ。
「ぉ、あ〜ひゃんw」
なぜか凄い笑顔ののっち。
「あ、あの…ごめんね?具合悪いのに来ちゃって…。」
「別にあ〜ちゃんなら、いつでも大歓迎らよ?」
わwなんかいつもに増して人懐っこさが…可愛い…。
「…あ〜ひゃん、それは?」
あたしの手にある袋を見て聞いてくる。
「あ、のっち、ちょっとでも食べれるかなと思って…。」
おかゆでも作ろうかと思って、元旦から開いているスーパーを探して買ってきたんだ。
「ホント?うち今食べられるのプリンしかなくってw薬も飲まなきゃだしぃ。…
もしかして、作ってくれるの?」
「う、うん。のっちが迷惑じゃなければ…。」
「やったぁwありがとぉ、あ〜ひゃんw」
その後のっちの部屋に上げてもらって、ちょっと台所を借りる。
のっちから借りたエプロンをして、おかゆを作っていたら
「あ〜ひゃん、絶対良い奥さんになるねw」
「なw何、急にぃ。」
毛布に包まったのっちが椅子に座りながら言ってきた。
おかげで、手元が狂いそうで危ない…。
「らって、エプロン超似合ってるもんw」
「…ありがと///」
好きな人に、そう言ってもらえるのは嬉しいけど。
のっちの言葉はストレート過ぎて、時々困るの。
恥ずかしくなって、何て答えていいか分からなくなっちゃう。
「そ、それより!のっち、ちゃんと布団に入って温かくしてなきゃダメだよ?」
「えー、ここで見てちゃダメ?」
「だ、ダメっていうか…。恥ずかしぃ、から…。」
「ん〜、そっかぁ、分かったぁw」
ニコニコそう言ってくれて、布団まで戻っていくのっちにあたしも付いていく。
布団に横になって、顔だけ覗かせるのっちの額に掌を乗せると、じんわり汗を掻いていて、やっぱり少し熱い。
「ふはwあ〜ひゃん手、気持ち良ぃやw」
「のっちが熱いからね。」
「あ、そっかぁ。」
「おかゆ、すぐ出来るから待っててね?」
「うん♪」
すごく無邪気に返事をしてくるのっちは、まるで小さい子みたいで可愛い…。
可愛くてドキドキする。
というか、熱のせいか笑顔が無防備すぎw
Side N
布団の中で待つ間、目を閉じて台所の音と匂いを感じる。
いつも一人だから、誰かがいてくれるのは嬉しい。
しかも、それがあ〜ちゃんとなれば、幸せ度はかなり高いでしょ。
足音がこっちに向かってきて、すぐそこで止まる。
目を開けると、座って覗き込んでくるあ〜ちゃん。
「お待たせ。…起きれる?」
「うん。大丈夫。」
とは言うものの、動きが鈍くていつもより時間が掛かる。
上半身を起こすと
「多分、全部食べれないと思うから、夜に食べてね?」
「うん、ありがとw」
おかゆをよそってある茶碗とレンゲを渡してくれる。
「まだ熱いから、気をつけてね?」
「ぅ。」
おかゆを掬って冷ますのに、一生懸命ふーふーするけど、いまいち息を吐く力がない。
うぅ…。
どうしよ?と思って一旦止めると
「のっち、かして?あたしがしてあげる。」
そう言ってさっき渡してくれた茶碗ごと手に持って、あ〜ちゃんがふーふーしてくれる。
そして、そのまま
「はい。」
口元に差し出されたおかゆ。
ん?
「ほら、あ〜ん。して?」
あwそういうことね?
言いながら、ちょっと照れてるあ〜ちゃんが可愛いw
言われるまま口を開けると、そろっとおかゆを口の中に運んでくれる。
もぐもぐ…
「…うん。美味しいw」
「本当?良かったぁw」
ちょっぴり塩が効いててちょうど良い。
で結局、最後まであ〜ちゃんに食べさせて貰っちゃったw
しかも洗い物まで全部してくれて、もう至れり尽くせりでどうしよw
片付け終わったあ〜ちゃんが戻ってきて、布団の脇にちょこんと座る。
「あ〜ひゃん、全部して貰っちゃってありがとw」
「良いの良いの!あたしが勝手にしたんだから。」
ふふふwって笑ったあ〜ちゃんの携帯が鳴る。
メールかな?
携帯を開いて確認するあ〜ちゃん。
「…いっけなぃ。今日おばあちゃんち泊まり行くんだった。」
「じゃあ、もう帰らなきゃだね?」
「うん…。」
ちょっと淋しいけど、しょうがないよね?
「そうだ。のっち、デザートあったんだけど…いる?」
思い出したように聞いてくるあ〜ちゃん。
「え?そんなのまで用意してくれたの?」
「ぅん。大した、ものじゃ、なぃけど…。」
おなかいっぱいだけど、デザートくらいなら入るでしょ。
それに、折角あ〜ちゃんが準備してくれたんだしw
その前に、薬飲んじゃったけど…ま、いっかw
「それ、ほしいw」
「…ぅん。ちょっと待ってね?」
デザート、何だろな〜wゼリー?アイス?あ、あ〜ちゃん果物好きだから果物か、な?
わくわくデザートの予想をしてたら、立ち上がる為に膝を突いたはずのあ〜ちゃんの顔が、寝てるあたしの目の前…。
なんら??
口には柔らかい感触…
なんだ?
ぱっと離れたあ〜ちゃんは赤い顔
なんだ??
「…明日帰ってきてから、また来ても、良い?」
「う、うんっ。」
「良かったぁw」
へへwって照れながら、じゃあねって手を振って帰って行ったあ〜ちゃん。
えっとぉ…、あ〜ちゃんデザートは?
てか、キスされちゃったぁw
もしかしてそれで恥ずかしくなって忘れちゃったかな?
なんて思いながら、ほんわか気分でハァ〜…と一呼吸すると、さっきまで居たあ〜ちゃんのほんのり甘い香り。
あぁwデザートって、そういうことか?
さっきは薬も効いてきてるのか頭が働いてなくて、状況が把握できなかったけど、今ようやく理解できた。
やばい。可愛すぎるw
ぅあwまた熱がぁw
でも、この熱なら悪くないな…w
Side A
のっちの家の玄関を閉めて、そのままドアに凭れた。
デザートって…あたし、何してるんだろ?
のっち、具合悪いのに…。
でも…急にしたくなっちゃって…
うぅw
思い出したら恥ずかしくなって、その場から勢い良く歩き出す。
のっちの部屋に居る時から、ずっとドキドキしてるし…
歩いても歩いても、治まるどころか体中熱くなってくるし…
こんなのは初めてで、少し戸惑う…
あ、そっか
きっと、のっちの熱を貰っちゃたんだ
のっちの…
そう思うだけで
ドキドキも熱も
とても心地良く感じる
ねぇ、のっちぃ…
あたしの熱は
どうしたら伝わる?
—fin—
最終更新:2009年10月22日 22:04