あたし、なにしてんだろ。
ドアの前に立ち緊張を確認しては、呼吸を整える。
何度となくためらっては手をのばし、また引っ込める。
もういい加減観念しなよ。
言い聞かせても手が言う事をきかないんだ。
周りからみたら明らかに不審者だけど、今は真夜中。
誰もあたしを見ていない。
愛しいあの人でさえもあたしをもう見てくれない。
ピンポン。
チャイムを押して我にかえる。
無意識に指が、手が、彼女の家のチャイムを押していた。
ヤバイ、逃げなきゃ。
その反面、ウキウキした片思いを楽しむような気持ちにも気付いた。
やっぱりあたしは片思いが好きなのかも…。
ガチャ…。
そこに立っている驚いた顔はいつもより幼く見えた。
片思いの方が幸せ。
だって終わらないもの。
戸惑いながら部屋へと招き入れる彼女の髪は濡れていた。
邪推がよぎる。
彼と彼女が頭の中で楽しげにしている。
考えたくもないのに思考の向かう先はただひとつ。
N『言ってくれたら近くまで迎えに行ったのに。』
社交辞令でもなんでも、あなたの声色は優しくあたしに響く。
幸せな感覚が無性に不快で居心地が悪い。
K『別にあたしは大丈夫だよ。』
言ってから少し後悔をした。
大丈夫?
何が?
こんなに動揺してるのに。
素直になるって難しいね。
(続く)
最終更新:2009年10月22日 22:25