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Side N
あ〜ちゃんの心臓を持った子が、家にやってきた
正直、まだ現実味がない

だって、あ〜ちゃんは一年前に事故で…
でも、確かにあ〜ちゃんはドナー登録をしていたから、あ〜ちゃんの心臓を持つ人がいてもおかしくはない

それに
『そうよ?やっと気付いた?』
そう言った樫野さんの纏う雰囲気が、あ〜ちゃんみたいだった
抱きしめてくれた時に聞こえた心臓の音も、あたしが大好きなリズムだった

「あの…」
「い?あぁ、ごめんwなんか安心しちゃってw」
いかんいかん。今日会ったばかりの子になにしてるんだ

「別に良いんですけど。『あ〜ちゃん』てどんな人ですか?」
「あ、写真見る?」
そう言って棚に置いてある、二人で撮った写真を渡して、樫野さんの隣に座る

「ぅわw可愛いw」
「でしょ〜w」
「あの、ごめんなさい。私、恋人だから、てっきり男の人だと思って…」
「え?ああwそりゃそうだよね?」

「のっちさんて、女の人が好きなんですか?」
結構、ストレートに聞いてくる子だなぁ
「ん〜、そういう訳でもないんだけどね…。あ〜ちゃんは特別だったんだ」



「特別…」
胸にそっと手を当てて、あたしの言葉を繰り返して微笑む彼女
「あ〜ちゃん、喜んでますw」
「ホントに?」
「本当ですって」
大真面目な顔

「ふ〜ん…なら、もっと言っちゃおっかなw」
「えー、私を介してイチャイチャしないで下さい」
「あはははw冗談だよ、冗談」

「まだ、好きなんですね」
「そう、だね…。なかなか進めないんだ」

『そんなこったろうと思ったわぁ』
「え?」
あ、まただ

くしゃっとした笑い方があ〜ちゃんみたい…
いや、あ〜ちゃんだ

「あ、ごめんなさい。なんか勝手に口が…」
「良いよ。たぶんあ〜ちゃんでしょ?」

「あ〜ちゃんが、何でココに来たか解った気がします」
「何で?」
「たぶん、のっちさんの事が心配だったんですよ」
心配か〜

「ちゃんと、次に進めてるのかなって」
「あー、じゃあ、あ〜ちゃんガッカリだねw全然進んでないもん」

『でも、足踏みはしてたんでしょ?』
「んー…」
確かに、他の事に目を向けようとしてみたりもしたけど…
やっぱり、何かが引っ掛かって、向け切れないんだよね



「あ〜ちゃんは…幸せだったのかな?」
多分ずっと、気になってたこと
あたしといて、叶えられなかった夢だってあったはずだし…
なのにあたしだけ、なんて…

「幸せに決まってるじゃないですか」
迷うことなく、返事してくる樫野さん
「即答だねぇw」
「じゃなきゃ、今こんなに愛しいなんて思いませんよ」
「ちょっ…」
あたしの腕を掴んで自分の胸へと触らせる

「あ…」
コレ、知ってる
温かい鼓動
「こんなに溢れてるんです。のっちさんへの想い、判るでしょ?これは私じゃなくて、あ〜ちゃんの気持ちですよ?」

涙が、流れた
やば、カッコ悪w

と思ったら、また抱き寄せられた
『何泣いてんのよwあたし、のっちと付き合ったこと、後悔した事なんて一度も無いからw生きてた中で一番幸せだったよ?』
これはあ〜ちゃんだ

いつもそうだ、あたしが進む方向に迷うとちゃんと道を照らしてくれるんだ
死んじゃった後でも、こんなに照らしてくれて…
「あ〜ちゃぁん…っ」
ぎゅっと抱きつく
『もう、しょうも無い子ねぇw』
頭をぽんぽん撫でられる



「あたしは、進んでも良いの?」
あ〜ちゃんを置いて…
『良いに決まってるでしょ?のっちには未来があるんだから、進んでくれなきゃ困るわw』
「そうだね…。うん、ちゃんと進むよ」
きっと、あ〜ちゃんが照らしてくれるのは、これで最後…

『大丈夫。のっちはやれば出来るんだから!』
「うんwちゃんとするよ」
『ふふwじゃあ、最後に…ぁ、ちょっと待って?』

ん?
“あ〜ちゃん”が目を閉じて数秒

『うん、良し。ちゃんと許可取ったから』
「え、なん…っ」

何の?って聞こうと思ったら、聞けなかった
だって…だって、キスされちゃったから
まったく、年下の子に何の許可取ってんのさw

触れた唇はあ〜ちゃんとは少し違うけど、でも二人を包むこの空気はあ〜ちゃんそのもので…
やっぱ好きだわw

けど、もう大丈夫だよ

唇が離れた時には、もうあ〜ちゃんじゃなかったけど
「ヒヒw『見守ってるから、頑張ってね』だってw」
「うん、大丈夫!」

自信を持って進むよ
あ〜ちゃんがくれた新しいスタート


—つづく—





最終更新:2009年10月22日 22:36