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サヨナラ。


ビター・ビター(24)


「…っ、ゆか、ちゃ…んあ、!」


かしゆかの手の動きに合わせてのっちのいやらしい声が、卑猥な水音と共に部屋に響いた。かしゆかが指の動きを早めれば、それに連動するかのようにのっちは声を上げる。反対に手の動きを緩めると、物足りなそうに瞳を潤ませてかしゆかを見る。子犬が餌を懇願するような、その姿は何とも可愛らしい。


たとえ話をしよう。いつか手放さなければならない未来があるとしたら。
幼いわたしたちにそれが出来るだろうか。


紛らわすかのように、奥まで指を突っ込んで、のっちのあついところを掻き混ぜた。内壁を擦る度に善がる姿は、何とも色っぽい。
長い髪を邪魔くさそうにするかしゆかをじっとのっちは見ていた。かしゆかが、なんよ、集中出来んじゃろ、という気持ちをこめた視線をのっちにぶつけるとのっちは、かしゆかの気持ちを察したかのように喋り出す。


「ゆかちゃん、かみのけ、きれい。」
「…なんよ、今更。」
「ゆかちゃんも脱いで…?」


眉を垂らして可愛い声して言われて、かしゆかはすぐに指を引き抜いた。ぺろぺろと紅い舌を出してのっちの体内から出されたねっとりとした液体を舐めとると、のっちが恥ずかしそうに目を伏せた。そして、着ていたTシャツもブラも全て床に脱ぎ捨てて噛み付くようなキスをした。


「ねえっ、のっち、」
「んっ、ん?」
「ゆかとのエッチ、忘れちゃだめだよ。」


押し付けられた唇に言葉を発することが出来なくて、息苦しそうに顔を顰めるのっちは何度もコクコクと首を縦に振った。
一瞬の快感に善がる人間なんて、とても愚かなのに、明日になったら、のっちは、ゆかとのエッチなんか忘れているかもしれないのに、かしゆかは何度も念を押した。忘れないでね、と。





隣で寝息をたてるのっちの胸元に擦り寄った。腕を自由に放り出して、かしゆかが寝るスペースなんて見当たらなかったけれど、腕下の胸元が空いていたからそこに入った。のっちの匂いを鼻空いっぱいに吸い込むと、今にも寝てしまいそうだ。
けれど、今日はまだ眠りにつくのはまだ早い。かしゆかは、すーすーとほんの少しだけ聞き取れるのっちの寝息に耳を澄ましながら、そのあどけない寝顔を見つめた。


のっちと付き合ったこの1ヶ月と少しは、かしゆかにとって夢のような出来事だった。まさか、のっちが自分を好きになってくれるなんて、かしゆかは夢にも思わなかった。しあわせ、そのものだった。


「……ありがとね、のっち。」


本当は何もかも知っていたよ、なんて言えば何てかっこいい女なんだろう、とかしゆかは思う。笑って、バイバイ、なんて言えたらいいよね、理想の大人の女とは、こんなものだったかな、と。
かしゆかは、のっちに甘えていた。優しさに漬け込んで、のっちを苦しめたのは、確かな事実。


(……あ〜ちゃんと、会ったんじゃろ、きのう。)


家に帰って来たときの、のっちの表情は生きている気がしなかった。その顔を一瞬見ただけで、あ〜ちゃんと何かあったんだな、と察したかしゆかはそれ以上何も追求しなかった。きっとのっちもそれを望んでいないはずだから。だから、何も言わず抱きしめた。と、同時にタイムリミットが近いことを悟った。あ〜ちゃんの気持ちなんてわからない。両想いかどうかなんて知らないし、のっちは未だにかしゆかのことを好きだと言う。でも、かしゆかはこのままのっちを自分の傍に留めることは出来なかった。


(ゆかはね、のっちとあ〜ちゃんと違って、大人じゃけえ…、ひとりで生きてくんよ、)


のっちに気付かれないように、ベッドから抜け出た。おでこに落としたキスはお別れの挨拶。
脱ぎ捨てた衣服を着ながら、声を押し殺して泣いた。のっちがすきだよ、すきなんよ、のっちが、誰よりも大事なんよ、のっちが。


さよなら、ゆかの彼女。






最終更新:2009年10月22日 22:50