バスを出てから家まで走る!走る!走る!
あ〜ちゃんが来るなんて、こんな時間に会えるなんて、そんなそんなそんな……。
「ハァ、ハァ…いない」
まだいないのか、やっぱりやめたなのか。どどどっちなんだろう…!!
てか何この展開!急すぎて心の準備が…あわわわわ。
家の前でうろちょろしてると、背後でキキーッて音がした。…まさか。
「着いたぁ!ふふ、のっちだ。」
「あ〜ちゃん!あ〜ちゃん来た!」
「来るよ。来るって言ったんじゃけえ当たり前よ。」
「あ〜ちゃんだあ〜ちゃんだ!」
「ちょっとのっち落ち着きんさい。」
そ、そうだ…!冷静を取り戻さねば!
せっかくあ〜ちゃんが来てくれたのにあわあわ言ってる場合じゃあ…
「…迷惑だった?」
「そ、そんな訳ないじゃん!」
「…本当?」
「本当だよ!ごめん、ちょっと興奮しちゃってて…」
「興奮とか。ふふっ、何によ〜。変態じゃ。」
変態!!
そうなんですのっち変態なんです!
いや、でもいくら変態でもそろそろ落ち着かないと…すぅっと大きく息を吸い込んではぁっと一瞬で吐いた。
「……うん、変態だよ。ここじゃなんだし、ちょっとそこの公園行かない?」
「うわ、なんか身の危険感じるわその発言。」
「な、なんにもしないよ!」
「ふふふっ分かっとるよ。行こう、公園♪」
あ〜ちゃんはそう言うとのっちの手をとった。
あまりにも冷たいあ〜ちゃんの手とは反対に、のっちの顔は多分めっちゃ熱い!
「て、手冷たいね…」
「自転車こいどったけえ…冷たいの嫌?」
「そんなことない!」
「ふふっじゃあこのままっ。」
家の前に自転車をとめて公園まで歩く。
その間もずっと手は繋ぎっぱなしで…時々にぎにぎしてくるもんだからそのたびになんとも言えない気持ちになった。
ベンチに2人で座る。
それでも手は離れない…離れないのであります!
「2人で会うの初めて?」
「はじめて…まさか来てくれるとは思わんかった!」
「…だって迎えに来てとか言うから…」
あ〜ちゃんはぐるぐる巻きにしてたピンクのマフラーを巻き直し始めた。当たり前に繋いでた手が離れた。
突然行き場を失なって手持ちぶさたになった左手をそっとポケットにつっこむ。
「…会えるんだっ、て思ったらやっぱいいとか言ってさ…」
「…うん」
「…会えるって思って期待した気持ちの居場所がなくなってさ…」
「う、うん」
「………そんな感じ」
どんな!どんな感じよそれぇ…。
あぁダメだ…なんだかやけにあ〜ちゃんがかわいい気がする。
期待したって何?むしろのっちが期待してもいい系ですかこれ!
「なんか…照れる」
マフラーに顔をうずめて、あ〜ちゃんも両手をコートのポケットにしまった。
あ〜ちゃんが黙ったから辺りが一気にシンと静まり返った。耳につくのは電灯がパチパチいってる音と、自分の呼吸音だけで…
…なんか話さないと!でもなんかって何さ!
そして何この空気。か、体が動かん…。
マフラーに埋もれてまともに見えないあ〜ちゃんの横顔を見つめたまま、のっちは動けなくなっていた。
あ〜ちゃんがこっちを見た。
と思ったら少し近くなった。
と思ったら左肩が重くなった。
と思ったらあ〜ちゃんが笑った。
つづく
最終更新:2009年11月01日 02:43