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Side N

『何もしないより…』
あ〜ちゃんの言葉を思い出して、あたしは決心した

迷ってたって何も変わらない

どうしてゆかちゃんの態度が変わっちゃったのかは、よく分からない
あたしが寝てる時に抱きしめてたからか
あと引っ掛かるのは「あ〜ちゃんと間違えて」って言葉

だから、ちゃんと理由、言わなきゃ
トイレから出てきたゆかちゃんを掴まえて、言葉を切りだしていく

「ゆかちゃんに、聞いて欲しいことがあるんだ…」

ゆかちゃんの表情は、ずっと硬いまま

「あたしさ、あ〜ちゃんじゃなくて、ちゃんと、ゆかちゃんのこと抱きしめてたんだよ」
「…なんで?」

うわぁ…緊張する
「ゆかちゃんのこと…好きだからさ」
言っちゃった…

でも、ゆかちゃんの反応はやっぱり冷めていて
「そんなの、嘘だよ…」
「ホントだって!」
どうすれば伝わる?



「じゃあさ…私のこと抱いてよ」
「え…」
どうして、そんなこと…
「抱けるの?あ〜ちゃんの心臓の私を…」
あ、そういうことか

あたしが、ゆかちゃんじゃなくて、あ〜ちゃんに惹かれてると思ってるのか
そんなことないって、言ってるのに…

「ゆかちゃんは…して欲しいの?」
ゆかちゃんが望むなら、いくらでも…

だけど
「…してよ」

「…ダメだよ。そんな苦しそうなゆかちゃん、抱けない」
そんな顔させたいわけじゃない
抱けば、気持ちを伝えられる自信はある
でも、そういう事で解決したくない
そんな事で、ゆかちゃんは守れない

「やっぱ、無理なんだ」
小さく笑って視線を落すゆかちゃん

「違う」
「だって、してくれないじゃん」
「ゆかちゃん…そうじゃない」
俯いたままのゆかちゃんを、一度抱きし寄せてから、また離れる

「ねぇ、ゆかちゃん。こっち見て?」
ゆかちゃんの肩に両手を置いて、ゆかちゃんを待つ
ゆっくり顔を上げたゆかちゃんは、揺れる瞳で軽く睨みつける様な表情だった



「あたしの眼、見て?」
絶対に視線を外さないように、しっかりとゆかちゃんの目を見つめる
それに応えるように、ゆかちゃんも見てくれる

「分かる?あたしが見てるのは、ゆかちゃんだよ。他の誰でもない、ゆかちゃんだから」
肩に置いていた手で、そっとゆかちゃんの頬を包んで、親指で撫でる

「今、あたしの特別は…」
確信を込めて言える

「ゆかちゃん、なんだよ」

「…のっち…っ」

ゆかちゃんの目から零れたそれが、あたしの手を濡らした

溢れ出た気持ちすべて
その雫も全部
すくいたい


—つづく—








最終更新:2009年11月01日 02:48