身体の奥で燻り続けた熱が天辺まで昇りきって弾けると、ゆかちゃんは薄く開いた唇から少しずつ熱を逃がしていく。その細い腕をのっちの首に緩くかけて、座りのいい場所を探すみたいに首の付け根に頬を擦り付ける。…可愛い。
「本当に、猫みたい…」
熱が穏やかな温もりに変わるまで、君の肌と勝手に私も自慢に思っている髪を唇で、掌でまさぐる。その時間が好き。ゆかちゃんから寝息が漏れ始めたことを確認したら、私も眠りにつく。それが私の日課。
なんだけど…
「……ん…っ…」
目を覚ますとそこは自分のベッド。あれ、昨夜いつ眠った…?所々記憶が…あ、頭…ちょっと痛い、かも。
寝起きの頭を懸命に働かせて思い出す。
そうだ。昨日は私の誕生日で。お酒、飲んだんだっけ。。
「甚だ不本意じゃけど、可愛い可愛い私のゆかちゃんがどーーーしてもって言うけ「ちょっ…ちょっとあ〜ちゃん!」」
耳まで真っ赤にしたゆかちゃんがあ〜ちゃんの口を手で塞ぎにかかるけど、軽い身のこなしで避けたあ〜ちゃんは目の前の事態に1人着いていけてない私と掌で顔を覆ったまま固まってしまったゆかちゃんに背を向けた。
「ま、今日は特別な日だし。あ〜ちゃんからのプレゼントはゆかちゃんってことで」
満面の笑みで振り返って手を振った。
「だ〜いじにするんじゃよ」
昨日からの記憶が少しずつ繋がり始めると、思わず顔がにやけちゃう。…へへ。昨夜のゆかちゃん半端なかったもん!可愛いってゆーね、言葉の、それ以上の言葉があったらよかっ…っていやいや!ごめん、あ〜ちゃん!
「何ひとり百面相しとるんよ」
俯せで頬杖のゆかちゃん。
「あ、起きてたん?おはよ」
「うん、今朝は早起きしたから、のっちゃんの寝顔見てたん。それに昨日忘れちゃったから」
ゆかちゃんの髪を撫でながら、何を?と出かかって、ふと薬指に輝くそれに気がついた。
「ゆかちゃん…こ、れ…」
いつの間に?酔っぱらってたからな、全然気がつかなかった…。
「これ…普通にめっちゃ高かったでしょ?」
素直に思ったことが口から出た。
「な…」
まず値段の話〜?とか言いながら身を寄せたゆかちゃんに頬をつねられた。ごめんごめん。
「長く使って欲しいから、そこはそれなりでもね、良いもの買わないと。ね?」そう言ってゆかちゃんは、指輪に小さく触れて照れたように微笑んだ。愛しさが胸を塞いで、声も出せない。
「結構考えたんよ?何が一番喜ぶかなって。やっぱりゲームとか漫画とかDVDがいいかなとか」
「別にね、あ〜ちゃんが昨日言ったみたいにね」
「プレゼントはゆかだよってゆーの?してあげてもよかったんだけど」
「もうゆかの心も身体も全部のっちにあげちゃってるから、意味ないじゃない?」
「だから、これ買ったんだ…けど…のっ…ち?」
固まったように反応を返さない私に痺れを切らしたのか、小さく震えるゆかちゃん。その黒目がちな瞳は揺れながら、表情のないのっちを映している。
「気に…入らない…かな?あんまりこういうの、好きじゃなかった…?」
「………大好き」
「そ、そっか!なら良かっ「ゆかちゃんが」
「ゆかちゃんのことが、大好きだよ」
顔を寄せて唇を重ねる。啄むように下唇を軽く噛んで、象る。何度も繰り返すとゆかちゃんの唇から甘く息が漏れた。
「…本当に、大好きだよ」
耳まで真っ赤にしたゆかちゃんは、世界中でのっちにしか聞こえないくらい小さな小さな声で、ゆかも、と呟くと、ぎゅっとしがみついてきた。
「指輪、大事にする」
「あ〜ちゃんからのプレゼントも大事にする」
「もう…まだそんなこと…知らん。バカのっち」
「だ〜いじにするんじゃよ」
あ〜ちゃんのえくぼが甦る。
「どっちも、大事にして…?」
「はい」
一生大事にします。
fin.
最終更新:2009年11月01日 02:59