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このまま振り返ってしまえば恐らく、あたしの細やかな目論見は失敗に終わる。
声のかけ方。選んだ言葉。抑揚。
今あたしの頭に浮かんだ表情と、十中八九同じ表情が形成されているだろうな。
確かめたくなる反面、妙な確信がそれを拒む。
後ろ姿を見られながら、離れていく彼女の熱い視線を背中で感じるのも悪くない。
振り向いてしまえば、その情けない表情はあたしの心を射抜いてしまうから。
それは、生まれて持ち合わせた本能なのか。
そんな、自分の意思云々では如何ともし難い部分を彼女は上手に突いてくる。

「もうちょっと一緒にいようよ」
「……明日も早いから」
「いいじゃん。どうせ明日だって行動は一緒なんだし」

普段、頭がキレるし空気を読める彼女の口数は多くはない。
そのはずなのにアルコールが入ると、途端に饒舌になる。
これはここ一、二年で増えた新しい彼女の姿。
でもね、ダメだよ。
今日は相手してあげない。
酔っ払って誰彼構わずにだらしなく会話をするアンタにあたしは頭キテるんだ。
どうせ最後に辿り着く場所はあたしの所なのに、そんなことにも気付いてない。
アンタが一番に機嫌とっとかなきゃいけない相手は誰なのか、分からせないと。

利己的な感情の変換。
悪気がないのは分かってる。ありゃ天然だ。
きっと自分でもちゃんと分かってるんでしょ?
あたしはちゃんと分かってるよ。
だから、益々気に入らない。
ちょっとは反省でもしてみりゃいい。
それは、あたしにとっては茶飯事。
簡単に忘れようなんて、そうはさせない。

「ねぇ、なんか怒ってる?」
「そう見える?」
「うん。ちょっと」
「生憎いつも仏頂面でね。可愛くなくて申し訳ないね」
「今どんな顔してるか見えないから。でも、どんな顔してても可愛いよ」

振り返ると、へらへら笑ってる。
しまったな。手中。
あんまり素で言うなと思えば、素な訳ない。ズルい。
顔が赤くても、台詞染みてても、今の彼女には逃げ道がある。
手の平の上。
乗せてるつもりが、結局いつも目を回すのはあたしの方。
あたしは呑んでないのに。
顔が熱い。悔しいな。

「可愛い。大好き。抱かせて」
「……酔ってない時にまた誘って」


〜end〜





最終更新:2009年11月01日 04:06