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冷えた指が首元を探った。自分でうなじを触っても何も感じないのに、他人に撫でられると肩が震えるのはどうしてだろう。不思議。
耳元で好きだとか囁かれるけれど、その言葉のどこに信じる余地があるのか、ゆかにはよくわからない。相手が誠実の塊のような人であってもそれはきっと変わらないし、これは単に性格の問題なんだろう。でもしっかり奥は熱くなって、そんな自分がひどく滑稽だ。ナンセンスだよ、あたし。


見上げた先にある顔は、逆光で表情がよく見えない。ていうか昼間っからこんなことして、のっちばかじゃないの。
せっかく出掛けたのに、雨が降ったからとか言って1時間半で部屋に逆戻り。夜は映画を見るつもりだったのに。あの映画来週までで、ゆか明後日から実習で暇無いんですけど。


冷えた唇が内股に吸い付いた。自分じゃ一生見ることが出来ない場所を、他人には見せているのはどうしてだろう。これもまた不思議で仕方がない。しかも、普段は後輩から憧れの眼差しで見られてるのっちが、いつも澄まして気取ってるあたしの、を。
…なんだろう、考えてるうちに濡れてきた。最中はいっつもこうやってお得意の理屈っぽい思考を巡らせて、のっちに「集中してよ」とか言われるけど、それで濡らすなんて変態もいいとこだ。
ていうか「集中してよ」っていう台詞も変態じみてる。なんだ、ゆかたちただの変態か。昼間っから素っ裸で何やってるんだろう。ナンセンスだ。


雨で冷えたのっちの体もだんだん熱くなっていって、それがあたしの思考を鈍くさせる。愛なんてめんどくさいだけで、陳腐で気持ち悪いものだけど、じゃあ今この瞬間の感情にはなんて名前を付けたらいいのだろう。
片想いがいちばん好きなあたしにとって、のっちは唯一の例外だ。奇跡とか運命だとかあまり使いたくないのだけど、でものっちは最もそれに該当している。だから渋々降参して、こうして腕の下で鳴いたりする。あっつい。


雨が降ってるのに窓の外は白んでいて、オレンジのカーテンが部屋を黄金色にした。
びっくりするくらい静かな部屋に、ゆかの上ずった鳴き声とのっちから漏れる息、それからぐちゃぐちゃする体液とみしみし揺れるベッドの音が大きく響く。
ふいに一瞬だけ掠ったのっちのそこが、垂れるほど濡れていて、触られてるのはゆかなのに、のっちはすごく必死なようで、思わず息をのんだ。意思とは関係なしに、目尻に冷たい筋が流れる。

どうしよう、すっごくしあわせだ。


「…ふ、あ、……ん、のっち…、す、き…っ」


なんだ、あたしも言ってるじゃん。愛なんて、しあわせなんて、あまり信じようとしないくせに、ほんとうにナンセンスだ。


中指がいちばん奥を突いて、親指が突起を潰して、瞳が、合った。
その瞬間、縦に貫くような大きな力によってゆかの思考は強制終了されてしまった。

雨の音が部屋に戻ってくるのを、だるい意識の向こうで感じた。
のっちが、どさりと隣に横たわった。


ENd.






最終更新:2009年11月11日 03:31