目が覚めると、体が元に戻ってた。布団から飛び起きて鏡を見る。間違ない、100%のっちだ。
自分の体なのに少し違和感。あ〜ちゃんの体に慣れてしまったからかな?
ベッドで寝ているであろうあ〜ちゃんを見る。早く起こしたい、起こして元に戻った事を知らせたい。
「……っ!!」
あ〜ちゃんを見つめて思わず絶句。いつものピンクパジャマで、スヤスヤと眠るあ〜ちゃんの寝顔はまるで眠りの森のお姫様だ。
しかしその手首には、手錠が…。朝からのっちの興奮は最高潮に達した。どうしよう…久々の悪魔と天使登場だ。
「今のうちにヤっちまえよ!」
「ダメ!寝込みを襲うなんて最低じゃ!」
またのっちの頭の中でケンカを始める二人。ヤバい…悪魔が強い…。もうこればっかりは仕方無い。
「いただきます。」
眠るお姫様に合掌。あ〜ちゃんの処女、貰っちゃいます。
◆A-side◆
ギシ、ギシとベッドが軋む音がして目を覚ました。目の前にはのっち。元に戻ったんだ!
「あ〜ちゃん、おはよう」
ニッコリ笑うのっち。久しぶりに見たその笑顔に、思わず見とれてしまった。可愛いな、のっち。
だけど肩ら辺が痛くて気付いた。そうだ、あ〜ちゃんの手首には手錠が掛けられてて動かせないんだった。
「鍵、机の上にあるから」
早く外して。肩が痛くて痛くて。こんな痛みに二日も我慢したのっちは偉いな、と今更ながら関心。
「あ〜ちゃん…」
「ん?」
のっちがあ〜ちゃんの体に跨がった。そして顔の横に手を付いて、真下にいるあ〜ちゃんを見下ろす。
のっちの息は少し荒く、頬はピンク色に染まっていた。もしかして…興奮してるの…?
一気に血の気が引いた。あ〜ちゃん大ピンチ。絶体絶命だよ、この状況。
「ま、待ってのっち!落ち着いて」
「落ち着いとるよ…大丈夫、痛いのは初めだけじゃけぇ…」
「大丈夫じゃないって!」
うぅ、のっちの色っぽい表情に不覚にもドッキドキ。昨日のっちになら何されても良いって言ったけど、いきなりは無理!
それに、夜にするものじゃないの?こんな明るい時間に恥ずかしい所を見られちゃうなんて…死んじゃう。
「あ〜ちゃん…」
のっちはもう我を忘れてる。目がイってるもん。のっちが顔を近付けてきた。唇が…触れそう…。
「やめてよ…、あ〜ちゃんこんなの嫌じゃ!」
唇が触れる直前にそう叫んで、頭突きした。ゴツン、と鈍い音。のっちがオデコを押さえて唸る。あ〜ちゃんも思ったより痛くて涙ぐむ。石頭のっちめ。
「うぅ…酷いよあ〜ちゃん…」
「酷いのはのっちじゃろ、人の寝込み襲おうとしてからに」
「だって悪魔がヤっちまえって言うからさ…」
意味が分からない事を言い出すのっち。それはいつもの事として、最悪な目覚め。体が元に戻って最高の目覚めのハズなのに。
全部アホのっちのせいだ。頭突きしたせいで頭痛いし、肩も凝って痛いし、もう最悪。
「あ〜ちゃん…」
「今度は何よ」
「エッチな事はしないから、キスして良い…?」
「………、」
黙って頷いて真っ赤になって、自分バカみたい。のっちは小さく微笑んで、またあ〜ちゃんの顔の横に今度は肘を付いた。
近い、近い、のっちの息が顔にかかる。ギュッと目を閉じた。心臓が痛い。
そっと優しく、唇が触れた。柔らかくて温かくて甘い、のっちの唇。
もっと触れていたいのに、のっちはすぐにキスを辞めた。ほんの一瞬だけのキス、唇に残った僅かな感触が名残を惜しむ。
「あ〜ちゃんの唇…フワフワで気持ち良い」
そんな近くで呟かれると、頭がおかしくなっちゃいそうだよ。
「のっちのも…気持ち良いよ」
「ほんまに?」
「うん、フワフワだったよ」
そう言うと、のっちは少年みたいに嬉しそうなキラキラな笑顔。本当に純粋で可愛い笑顔。
「のっち、はよ手錠取ってぇや」
「あ、ごめんごめん忘れてた」
こら忘れるな。全く、マイペースなんだから。
◆
のっちに手錠を外してもらうと、ベッドから飛び降りた。そして部屋の隅の鏡に駆け寄る。
鏡に映るのは、間違なくあ〜ちゃんだ。戻った。元の体に戻ったんだ。
なんだか懐かしい気分。三日しか手放してない体なのに。他人の体みたく感じる。のっちの体に慣れ過ぎたからかな。
「やっぱり、あ〜ちゃんはその体が一番だね」
ベッドに座りながら言うのっち。日本語的には微妙だけど、意味は理解した。
「のっちものっちの体が一番だよ」
やっと取り戻したこの体。三日間、守ってくれてありがとうね。
「ご飯にしよっか、」
「うん」
「あ〜ちゃんが作ってあげる」
そう言うと、のっちは飛び跳ねて歓喜。喜び過ぎ。体が元に戻ったお祝いに、腕によりをかけて作るからね。
◆18:End◆
最終更新:2008年10月12日 17:01