—最愛の人を見つめながら、確かめたいのは密やかな誓い。
鎖骨から呼吸に合わせて上下する胸のふくらみ
括れたお腹の中央には縦に薄く線が入って
持ち主のストイックな日常を示すかのように
細いながらも鍛えられた腹筋が見て取れる
『細くありたいんよ』
ちょっと細すぎじゃね?折れそうな腕に心配になって昔言ったことがある。
確かに細いのは、のっちも好みよ?でも、さ…
『何でそんなにこだわるん?』
幸せ太りとかあるじゃろ?だから、あんまり細すぎると、
のっち幸せにできてないんじゃないかってちょっと…不甲斐ないんよ。
『…だって、さ』唇を尖らせた小悪魔。
『のっちに、重いとか、思われたら、…嫌だもん』
下腹から下肢に続くラインの繁みは丁寧に整えられていて
その女としてのたしなみの中、
自分がそうするとき彼女を思い出すように
彼女も自分を思う瞬間があるのかと思うと堪らなくなる。
自分と同じ器官で成り立っているのに、いちいち造りが繊細で
ひとつひとつのパーツがまさに完璧に計算されたようなバランスで
ゆかちゃんに収斂している。
甘い香り漂う素肌はまさに【有香】
この美しい人は、のっちにだけ身体を開いてくれる。
今は、そう信じてる。
あれは、どれくらい前になるんかな。
ゆかちゃんの気持ちが信じれんくなって、
ゆかちゃんを失うと思って怖くなって、
自分も見失って、
無理矢理ゆかちゃんを奪って、
傷つけてしまったことがあった。
思い出すと、今でも胸が痛む遠い昔の出来事。
幼い過去だとあなたは笑ってくれるかもしれない。でも…
こんなこと思う資格もないけど。
あの出来事はのっちには…ちょっとしたトラウマになっとるんよ。
激しい感情を人前でさらすのは苦手だ。
怒るのも泣くのも、嫌い。
周囲の人をいたずらに揺さぶらない自分のそういうところ
本当は結構信頼してもいた。なのに…
話が殊ゆかちゃんのこととなると別…らしい。
彼女の一挙手一投足に心臓がギュっとなって。
…これは病気なんかな、と思うくらい。
だからあの出来事以来、ゆかちゃんの嫌がることはしないと
密かに心に誓った。
やさしくやさしく抱いてきた。
あの時ののっちを思い出して、怯えるゆかちゃんを見たくなかったから。
ゆかちゃんを愛しいと思う心に普段は巧く隠されている
激しい自分を見破られるのが怖かったから。そして何より、
ゆかちゃんに嫌われて、[もう一度]ゆかちゃんを失うのが
死ぬほど怖かったから…。
なのに今夜ののっちはそんな誓いすら忘れて暴走しかけてる。
怖い。
もう、触れることすら…怖い。
また、傷つけてしまうんじゃないか
また、泣かせてしまうんじゃないか
違う。
傷つけたいわけじゃない。そんなこと思うはすがない。
今のっちは、ちゃんとゆかちゃんを信じてる。
あの時のような、壊れそうな想いじゃない。ただ…
この人を、愛してるだけだよ。
心からゆかちゃんを愛してる。
だから、受け止めてほしい。本当ののっちを知ってほしい。だから…
ごめんね、ゆかちゃん…。
本当にごめん。
つづく
最終更新:2009年12月09日 13:59