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【K】
今日ののっちは鼻息が荒い。
正直一緒にバイトしててやりずらい。てか、キモイ。

「かしゆか!!」
えっ?なに?なんでキレてんの?ゆかがキモイって思った事バレた?

「今日、火曜日だよね!!」
「そうだよ?」
「火曜ってアイツがDJやってる日だったよね!!」
「うん・・・」
アイツって、あ〜ちゃんの彼氏の事だよね?

「よし・・・」
「何が『よし』なんよ?なに?のっち、なにすんの?」

「宣戦布告!!」
のっちはさらに鼻息を荒くして拳骨を突き出した。
「は?」
ゆかはそんなのっちを見て唖然とした。

「もうあ〜ちゃんをアイツの思い通りにさせない!!」
「え?」
「アイツにそう言うんだ!!」
「えぇ!?」
「のっちはかしゆかの言われた通り、あ〜ちゃんを救い出すからね」
のっちがめっちゃ男前だ。
すんごいキラキラした笑顔で親指なんて立ててるし。

なに?その自信はどっから出てくるの?
もしかして・・・まさか・・・こいつ、あ〜ちゃんと・・・。

「あんた・・・あ〜ちゃんと、、、ヤったん?」
そうのっちに耳打ち。
あーあ、耳真っ赤。顔も真っ赤。
両手で顔を隠す仕草をし出したのっちは、さっきの男前の欠片もなかった。



マジかよ!?
のっち、やるじゃん。ゆかはショック受けたけど。

なんだよ、こいつ。ホントにあ〜ちゃんの事助けちゃうんじゃないの?
ホントにやれば出来る子だったんだね。見直したよ、のっち。ゆかは少し寂しいけど。

バイトが終わりのっちは俄然鼻息が荒くて、こりゃ一人で行かせたらヤバイと思いゆかも一緒にクラブへ行くことにした。
のっちはついて来なくていいって言われたけど、そんなのはお構えなし。

さて、クラブに着くとあ〜ちゃんの彼は相変わらずの殿様っぷりの態度。
もうやりたい放題。でもあの人に文句言う人は誰もいないんだよね。てか、誰も言えない感じ?
あの人、偉いのはお父さんなのに自分が偉いって勘違いしてる典型的なボンボンなのよね。
もうボンボンすぎて誰にも手に負えない状態ってーの?結構ワルイこともやってきたらしいよ?
その度にお父さんが裏で権力を使ってウヤムヤにしてたみたいだけど。コワイコワイ。
ぶっちゃけ、あ〜ちゃんには言ってないんだけど、ゆかも何度かボンボンの魔の手にかかりそうになったんだよね。
ゆかはそこら辺のオンナノコとは違うから、そんな誘いには乗らなかったけど。
てか、あ〜ちゃんの親友のゆかを何故誘う?そこからおかしいでしょ?もうね、ボンボンはおかしいんよ。
だからそんなおかしいボンボンの元へのっちを一人で向かわすなんて、危ないでしょ?危険でしょ?

「で、こっからどうするん?」
「アイツとふたりで話す!!」
「こんなところでふたりで話すなんてできんよ?」
「じゃあ、ここから連れ出す!」
「どうやって?」
「・・・わからん」
ダメじゃん。のっちは頼りになるんだか、ならないんだかわからん。
しょうがない、のっちのために一肌脱いでやるか。いや、のっちのためじゃなくてあ〜ちゃんのためでもあるんだよ・・・。

「んじゃ、ゆかが最初話すからのっちはここで待っててよ」
「えっ!かしゆか一人でいくの?危ないよ!!」
ゆかがボンボンのところへ行こうとすると、のっちが腕を掴んでそれを制止した。ちょっと嬉しかった。



「大丈夫大丈夫。のっちが先に行くよりも何度か会ってるゆかが最初に会ったほうがスムーズにいきやすいじゃろ?」
「ほんまに?」
あーあ、情けない。これから宣戦布告する奴がなに眉毛を下げとるんのよ。
「だいじょーぶ!!」
「なにかされそうになったら、一目散に逃げてよ?」
「はいはい」
ゆかは眉毛を下げてるのっちをいい子いい子して、ボンボンがいるVIPルームに向かった。

VIPルームを開けると、同時にそこにいるひとたち全員がゆかに視線を向けた。
ボンボンは鼻の下を伸ばして、両脇にオンナノコを置いている。
まるでVIPルームはボンボン専用のキャバクラ状態。

「おぉー?かしゆかちゃんじゃーん?どうしたのー?」
ボンボンはあたしと気付いて馴れ馴れしく話しかけてきた。
「あの・・・ちょっと話があるんですけど・・・」
ゆかはちょっとビビリながらボンボンに言う。だって、明らかにここの雰囲気気持ち悪いんだもん。
「はなしー?ここで?」
「・・・はい」
「ふーん。いいよ?なに?もしかして、やっと俺とヤリたくなった?なんつって?がははは」
ボンボンは楽しそうに笑う。両隣のオンナノコたちもつられて笑ってる。
あー、チャラい、チャラいよ。ボンボン。誰が、あんたとヤルか!ボケ!!マジで、あ〜ちゃんが可哀相。

「あー・・・いえ、そうじゃなくて、出来ればふたりで話したいんですけど」
「ふたりでー?」
「はい・・・」
「いーよ。ほら、お前ら出てけ。邪魔だよ。シッシッ」
ボンボンは両隣にいたオンナノコたちと側近であろうイカつい男たちを、邪険にあしらって部屋から出ていかせる。
オンナノコたちは部屋を出る際に、ゆかを思いっきり睨みつけ、小さく「死ね」って呟いた。
見ず知らずの人に「死ね」って言われたのは初めてだ。哀しくなった。

「はーい。ふたりっきりになったよー?」
ボンボンはでかいソファーにふんぞり返って、両手を大きく伸ばした。俺の胸に飛び込んでこい状態。誰が飛び込むか!
「実は、話があるのはあたしじゃなくて、外にいる子なんですけど・・・呼んでいいですか?」
「えっ?かしゆかちゃんじゃねーの?っだよ、誰?」
「ちょっと待っててください。すぐ呼んできますんで・・・」



【N】
あー、かしゆかいっちゃった。
ひとりでしかも丸腰で敵のアジトに乗り込んでったよ。
勇気あるな。なんかのっちよりもかしゆかのほうが騎士っぽいじゃん。
いや、騎士というより勇者?えー、かっこいい。勇者って主人公じゃん。

「ねぇねぇ、キミひとり?」
「はい?」
ヤベっ、ナンパだ。こいつ酒くせっ。げっ、キモい。こいつキモい。無理、生理的に無理。
「一杯おごるから、一緒に呑まない?」
「のみません!」
「えー、そんな遠慮しなくていいからさぁ〜」
しつこい!!なんだこいつ。ひー、近くでみるとさらにキモい。
これから金髪ヤローと対決すんのに、ここでよけいな体力使いたくないよ〜。
助けてー、かしゆかーーー!!

「のっち?なにしてんの?」
あっ、かしゆかだ。
「あっ、ゆかちゃーん」
「おっ!そっちの子も可愛いね。どう一緒に呑ま「のみません。さよなら」
かしゆかは満面の笑みをキモいナンパヤローに向けてのっちの手を取って助けてくれた。
「ありがとぉ、かしゆか。助かった」
「あんたねー、こんなんで怯んでどうするん?」
あちゃ、怒られちった。
「はい。ごめんなさい」
「まー、いいけぇ。今、VIPルームにあの人一人にしたから・・・」
「うん。ありがと・・・」



【K】
ゆかはのっちを連れてボンボンがいる部屋に戻った。
ボンボンは高そうなシャンパンをボトルでラッパ飲みしてる。

「おっ、あんたこの前会った・・・たしか彩乃ちゃんだったよね?」
さすが女好きで面食いのボンボン。可愛い子の顔と名前は一瞬でインプットされてるのね。

「はい」
のっちはさっきのヘタレモードから一転、覚醒モードにシフトしてる。
「なに?話って・・・もしかして、今から三人で?」
ボンボンの脳みそは下半身にあるのでは・・・。あー、ニヤけた顔がキモい。

「もう、あ〜ちゃんを傷つけるのは止めてください」
えっ!のっち、もう核心からついちゃうの?
さすがのゆかもビックリだよ?

「あ?」
ボンボンの顔つきが明らかに変わった。
「知ってるんです。あんたがあ〜ちゃんを殴ってるの」
「それがどうした?てめーに関係あんのかよ!」
ボンボンはイライラして貧乏ゆすりを始めた。

「あるよ!あ〜ちゃんはホントはあんたなんか大嫌いなんだ!!」
「あんだと・・・」
ボンボンの貧乏ゆすりが激しくなる。

「てめー、さっきからなんだんだよ!!綾香のなんなんだよ。だたの友達だろ!?」
「”ただ”の友達じゃねーよ!」
「あ?どーゆー意味だよ?ええ?」
ボンボンは立ち上がって、のっちに近付いてきた。
ヤバイ、手が届く至近距離になったら大変だよ。
のっち、もういいよ。十分だよ。ゆかはそう思ってのっちの服を引っ張ったけど、のっちは動じなかった。

「あたしなら、絶対にあ〜ちゃんを傷つけたりしない」
ボンボンの目をしっかりと睨みつけてそういうのっちはかっこよかった。
冗談抜きにかっこよかった。

「はっ?ナニソレ?もしかして、あんた綾香のこと好きなの?」
ボンボンはまたニヤニヤしだして、余裕ぶってる。
「好きだよ!あんたよりも負けないくらい好きだよ!」
「マジで!?それってレズじゃん。キモくね?」



「女に手を上げる奴の方が、よっぽどキモいと思うけどな・・・」
思わず、口が滑ってしまったせいで、ボンボンの怒りの矛先がのっちからゆかに変わった。
「あぁ!?っだよ・・・てめーら、さっきから。俺を怒らすために来たのかよ!!」
今度はゆかに歩み寄ってきたボンボン。目がイッちゃってる。いくらイケメンでも、これはキモい。

のっちは「もう、あ〜ちゃんは渡さないから!!」って、叫びながらゆかの手を取りVIPルームから逃げたした。
ボンボンも後から追いかけてきたけど、クラブの人ごみにのまれてゆかたちを捕まえることは出来なかった。

ゆかたちは手を取り合って一生懸命走った。
こんなに走ったのは高校の体育の授業以来だよ。

「ぜぇ、ぜぇ・・・」
「はぁ、はぁ・・・」
駅前の公園の前で一呼吸。

「もう、のっち・・急に走るんだもん。・・・びっくりしちゃった」
「でへへ。ごめんね」
のっちはまたあのハノ字眉になってる。

ゆかは疲れたから公園のベンチに座った。のっちも横に座った。
「ねぇ・・・あ〜ちゃんを好きになるのって、気持ち悪いことなんかな・・・・」
のっちが力なくぼそっと呟いた。さっき、ボンボンに言われた一言が効いているんだ。
「そんなことないよー。人を好きになれるって行為が気持ち悪いことなんてないじゃない」
ゆかはまたのっちをいい子いい子してあげた。のっちが弱ってると、いい子いい子したくなる。

「なんか、ゆかちゃんて、かっこいいよね・・・」
「は?」
「なんか、勇者って感じ?のっちは村人Aなのに・・・」
また変な事言いよったよ?この人。

「何言ってるんだか。かっこいいのは、あんたでしょ?」
「ほえ?」
「あんな大男相手に啖呵切ったんだから。めっちゃかっこよかったよ」
「ぶっちゃけ、あれめちゃくちゃ怖かった。手とか震えちゃってたもんwほれ、今もちょっと震えてるでしょw」
のっちは両手をゆかに見せてきた。ちょっと痙攣ぎみに震えている。
ゆかはその両手を握りしめた。

「『もう、あ〜ちゃんは渡さないから』って最後に言ったじゃん?あれねぇー、すごいあ〜ちゃんに聞かせてあげたかった」
「え?のっち、そんな事言った?覚えてねーw」
「言ってたよー。あいつにそう捨て台詞言いながら走り出したじゃん」
「そうだっけ?」
「うん。ゆかねぇ、あのセリフ、のっちの愛がすごく感じられた」
「はぁ?何言ってんの?バーカw」
のっちは照れて耳を赤く染めてた。

今日ののっちはめっちゃかっこよかったよ。
のっちはゆかのこと勇者って言ってたけど、ゆかが勇者ならのっちは騎士だよ。

あ〜ちゃんを守るかっこいい騎士だよ。

ほんとかっこよかったよ。
また惚れちゃったじゃん。どうしてくれんのよ。バカのっち。






最終更新:2009年12月09日 14:58