君のまぶしい笑顔。
それさえ見られるならもう何もいらない。
それだけで幸せだった。
なんてね。
でもいまは本当に願ってる。
≪ 願い #3 ≫
行くところが思いつかず、
近所の公園へ来てみた。
夜の公園って本当に寂しい。
まるでいまののっちの気持ちみたい。
家を出てから30分くらいは経っているだろう。
のっちはブランコに座り、漕ぐでもなく揺らすでもなく、
ただ足元の砂利をつま先でいじっていた。
ていうか…。
あたし、どこに帰ればいいんだろう…。
「…あ〜〜〜〜〜〜!!もう本当に自分ばか!!!」
自分って本当に詰めが甘いっ。
超気まずい…。
いやいや、気まずいなんてレベルじゃないよね、これ。
ようやく冷静に思考が働くようになり、
後悔と自責の念に押しつぶされそうになる。
「あーあ、なにやってんだろ。」
とにかくもうちょっとしたら帰らなきゃ。
帰ってからどうしよう…。
あ〜ちゃんに謝らなきゃ。
謝るって、なんて謝るの?
『急に抱きしめてごめん』って?
『変なこと言ってごめん』って?
あの時「冗談だよ。ごめんね。」って、
言ってしまえばよかった。
言ってしまえればよかった。
うまく回らない頭でいくら考えようとしても、
浮かぶのは最後に見たあ〜ちゃんの悲しげな顔。
あ〜ちゃんにあんな顔させてしまったのは紛れもなく自分。
本当に申し訳ない気分でいっぱいになる。
うん。
もうどうなってもいいや。
どんな結果が出たってしょうがない。
自分で蒔いた種は自分で何とかしなきゃ。
ようやく決心がついて、ブランコから降りようとしたとき、
背後から声が聞こえた。
「…やっと見つけた。」
まさかの声に驚いて振り返ると、
あ〜ちゃんが泣きそうな顔をして立っていた。
「…あ〜ちゃん。」
早く謝らなきゃ。
とにかく謝らなきゃ。
あれ?
結局なんて謝るつもりだったんだっけ?
頭がものすごい勢いで回転を始める。
と同時に口も動く。
「あ、あのね、あ〜ちゃん。さっきは…」
「ごめんなさい!」
「へ…?」
なんか逆に謝られてるんですけど…?
まったく状況が飲み込めないんですけど!
そんなのっちのことはお構いなしに、
あ〜ちゃんは言葉を続ける。
「まさかのっちが嫌な思いしてるなんて、
あ〜ちゃん全然気付かなくって…。」
「いろいろ考えてみたんだけど、なんかようわからんくなってて。
お酒なんか飲んだからかな?」
「でも傷付けたのは事実だし、謝らにゃあいけんと思って。」
「とにかく、あ〜ちゃんはのっちに嫌われたくないんよ。」
「ほんまにごめんなさい!!」
泣きそうな顔で、必死にしゃべり続けるあ〜ちゃんに、
ちょっとびっくりしたものの、
何故かのっちはほっこりした気分になっていた。
あぁ。やっぱり好きだ。
むしろ前よりも好きだと思う気持ちが大きくなった気がする。
のっちはひとつ大きく息を吸って、
一言一言ゆっくりと話し始めた。
「あ〜ちゃん。謝らなきゃいけないのはのっちの方だよ。
突然いじわるなこと言われてびっくりしちゃったよね。
のっちちょっと不安定だったのかもしれない。
あ〜ちゃんは何も悪くないよ。のっちこそ嫌な思いさせちゃってごめん。
のっちはあ〜ちゃんのこと大好きだよ。
いままでも。これからもずーっと。」
ちょっとくさいセリフだったかもしれない。
でも、いま言わなきゃって思った。
どんな形でも"好き"っていう気持ちは変わらないし。
のっちが一頻り話し終わると、
あ〜ちゃんの頬にぽろりと涙がこぼれた。
「泣かないで。泣いてるあ〜ちゃんも好きだけど、
笑顔でいてくれるとのっちはもっと嬉しいよ。」
自分のパーカーの袖であ〜ちゃんの頬を拭う。
本当は抱きしめたいけど、いまの自分にはこれくらいしかできないから。
「…へへ。のっちはあ〜ちゃんの王子様じゃね。」
そう言うと、あ〜ちゃんはのっちの指先を軽く握って、
帰ろうか、と笑顔で微笑んだ。
あぁ。
いつでも彼女に助けられてきた。
この想いが報われるときが来るかはわからないけど、
彼女の笑顔があれば何だって乗り越えていける。
じゃあ、あたしに出来ることは彼女の笑顔を絶やさないこと。
本当にそんなこと出来るかな?
でも彼女がいつまでも笑顔でいてくれること。
これがあたしの、本当の願い。
≪ END ≫
最終更新:2009年12月09日 15:28