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例えば人肌恋しい寒い夜に、例えばほんの小さな寝返りで、
あなたの暖かい腕からはぐれちゃったとか、
あんな夢を見た理由なんてきっと、そんな些細なこと…


㊖㊖㊖㊖㊖㊖㊖㊖㊖㊖㊖㊖㊖㊖㊖㊖㊖㊖㊖㊖㊖㊖㊖㊖㊖
遠くで、誰かの話し声…

「……よ…それに………」
「……は……かも…」

のっちと、あ〜ちゃん…?

ん?何であ〜ちゃんが?
昨夜は仕事終わりにあ〜ちゃんを見送った後、のっちのお家に来て、
二人でご飯作って食べて、ゆっくりして…二人でベッドに入ったのに…

目を開くと横向きで眠る私の隣には天井を見上げるあ〜ちゃんの姿。
でもなんか…違和感が………顔幼いような…?


あ、判ったこれ「何年か前」だ。のっちの部屋で3人並んでお布団で眠って。
ふふ…変な夢。でも、懐かしい………。



いつも三人だった。夢を追って上京して、仕事も学校も帰る場所も一緒。
でも、年を重ねて個々の世界が広がり、二人への想いも変化した。そして…
二人のうちの一人が特別な存在になったのも、ちょうどこの頃だった。


「ねぇねぇそういえばさぁあ?」
「ん?」

目を覚ましたゆかに気づくことなく、二人は喋り続けてる。

「もうすぐゆかちゃん誕生日じゃろ?のっち、もう何あげるか決めた?」
「…いや…それが、まだ…」
後ろから聞こえたのっちの声は情けない。変わらないよね、ほんまに。

「え〜何しとん!あんたはいつもギリギリになってから」
「付き合って初めての誕生日よ?ゆかちゃん絶対期待しとると思う」
「分かってるよ〜ずっと考えてるよ〜…でも…分からん……」
後ろから聞こえてくるのっちの声は情けない。変わらないね、ほんまに。
「じゃあさ〜指輪は?」
「へ?」
「指輪!定番だし、ええじゃろ?」
言いながらこっちを向いたあ〜ちゃんは目を丸くして口を手で覆った。
あんた起きてたん、みたいな顔。堪えきれずに少し笑った。
けど、次の瞬間…


「指輪はダメ」


「のっち、指輪を贈るのは人生で一度だけって決めとるけぇ」


「だから、あげられん」



のっちの言葉に凍りついた。
のっちにとってゆかは、ただの通過点なんだ。いつか出会うたったひとりまでの。
…そりゃそうだよね。
今までの私たちには私たちしかいなかった。狭い世界で生きていた。
でも元来自由なのっちのことだ。これから新しい世界に触れて、もっと輝いていく。
のっちが閉じ籠りたがったって、周りが放っておくわけがない。だいたい…
「たったひとり」が男なら、ゆかとじゃ掴めない当たり前の幸せをつかめる。


「…まぁでも」

敵わないもん。


ゆかの方がいいよ、なんて言えないもんね…。


「贈る相手はもう決まっとるんだけどね」


同時にのっちの手がゆかの頭に触れたのを…感じた。

「いつか幸せに出来るって思えた時に渡すんだ」


「のっちがゆかちゃんを想うのと同じくらい」

「好きになって貰えたら、渡すよ」


…滲んだ瞳にはあ〜ちゃんの笑顔。手の甲で鼻と口を塞いで、溢れる想いを抑えた。
早く追い付かなきゃ、このコワイくらいの想いに…。

㊖㊖㊖㊖㊖㊖㊖㊖㊖㊖㊖㊖㊖㊖㊖㊖㊖㊖㊖㊖㊖㊖㊖㊖㊖
「…ちゃん…!…ゆかちゃん!」

目を覚ますと髪を撫でながら覗き込む大きな瞳。
「ど、どした?怖い夢でも…見た?」
そんな泣かんのよ〜。言いながら頬を擦るのっちの指。
「…のっちゃん……ギュってして…?」
抱き締める腕に身体を擦り寄せる。
「怖くないよ…。のっちが傍にいるよ」
髪を撫でる手はあの頃と変わらず優しい。
「…いいの。コワくていい…の…」
「えっ?」
ずーっと、コワいまんまが、…いい……。
「のっちぃ…」
「ん?」


「……愛してるよ…」
いつまでも、コワイくらいに…

fin.






最終更新:2009年12月24日 17:50