【N】
およ?ここはどこ?
あたり一面、真っ白。
あれ?向こうの方に川が見える。
はっ!?もしかして、これが噂の三途の川ってやつ!?
やっぱり、のっち死んじゃったのか・・・。
正直もう少し生きたかったけど、しょうがないのかな・・・。
あっ!!川の向こう側に、一昨年死んじゃったじいちゃんがいる。
じいちゃん、手招きしてる?やっぱり、のっちはそっちに行かなくちゃいけんのか・・・。
いや・・・違う?こっち来るなって、シッシッってやってるのか?
ん?じいちゃん今度は指さしたよ?
のっちはじいちゃんのさした先を見る。
その先には天使がいた。
でも、頭にあるワッカと羽がないよーな・・・。
真っ白いワンピースがかわいいな。
天使って金髪だと思ってたら、黒髪なんだね。ゆるふわパーマがかわいい。
「・・・っち!!のっち!!」
ありゃっ、天使さんがのっちの事呼んでるよ?
もしかして、天国からのお迎え?
天使さんは手を差し伸べてる。
こんなかわいい天使さんなら、別に天国に行ってもいいかなって、若干下心を出しながらのっちはその手を掴んだ。
【A】
あの日から三日経つ。
あ〜ちゃんがのっちを抱えて泣き叫んでると、通りかかった人が救急車を呼んでくれた。
のっちはすぐさま集中治療室へと運ばれた。
手術は2時間くらいかかった。
その間に、ゆかちゃんが来てくれた。
動揺してるあ〜ちゃんのかわりに、ゆかちゃんがのっちのご両親に連絡を取ってくれた。
手術中、ゆかちゃんはずっとあ〜ちゃんのそばにいてくれた。
この三日間色んな事があった。
あ〜ちゃんと彼の結婚の話は白紙に戻った。
お父さんとお母さんが直々に社長さんに頭を下げて結婚取りやめをお願いしてくれた。
社長さんもドラ息子が傷害事件を起したもんだから、強い態度には出なかったらしい。
障害事件って言っても、いつもの通り金でもみ消したみたい。
それでも今回は彼も反省しているらしい。あれ以来会ってないから、わからないけど。
結局、のっちのおかげで救われた。
のっちが身体を張ってくれたおかげで救われた。
心からありがとうを伝えたいけど、伝えられない。
手術は成功したけど、のっちは目覚めなかった。
【K】
のっちが入院してから、ゆかとあ〜ちゃんは毎日お見舞いに行く。
のっちは姫を守りきった騎士になったと思えば、今度は眠り姫になってしまった。
のっちが姫!?って、イメージでもないけど。のっちの王子様はどこにいるんよ・・・。
それはやっぱり、あ〜ちゃんだよね。
ゆかじゃダメだもんね・・・。
病室にいると、すでにあ〜ちゃんとのっちのママがいた。
のっちは相変わらず、点滴の管をいっぱいつけて、死んだように眠ってる。
あ〜ちゃんはいつものようにのっちの手を握ってる。
壊れ物を扱うようにそっと優しく愛おしそうに握ってる。
「え・・・」
あ〜ちゃんが呟いた。
「なに?」
「今、のっちの手が動いた気がした」
「うっそ!!」
次の瞬間、のっちの大きい瞳が開いた。
【N】
ピコンピコンピコン・・・。
無機質な狂いの無い機械音がする。
ん・・・、身体が痛い。
あれ?いつもと違う天井だ。
ここはどこよ?
「・・・っち!!のっち!!」
おぉぉう!?目の前にさっきの天使さん。
じゃあ、ここは天国?にしちゃー、リアルすぎるんだけどw
「のっち!!」
あー、この可愛い声はかしゆかだ〜。
「彩乃!!」
あれ、お母さんもいるよ。お盆以来会ってないから久しぶり。
「よかったー・・・」
天使さんはのっちの手を握って泣いてるようだ。なぜ、まだ天使さんがここにいる?
隣でゆかちゃんも泣いてる。
お母さんは看護師さん呼んでくるって言って部屋を出た。
「のっちー?わかるー?」
ゆかちゃんはのっちの目の前で手を振る。
「わがる・・・」
あれ、ちゃんと声が出ない。ガラガラだ。
「あんた、三日間も眠ったままだったんよ」
「マジでずか!?」
「ほんまよー。ゆか、マジで心配したんだからね!」
「あはは。ごめん」
てか、なんで自分がこうなったか全然覚えてないんだけどね・・・。
気付いたら、三途の川に居て、目が覚めたらここにいたって感じ。
「ほら、あ〜ちゃんもなんか喋らんと!!」
アーチャン?
「のっち・・・。大丈夫?」
「誰?」
【A】
『誰?』
一瞬自分の耳を疑った。
「あんた、誰ってw寝すぎてボケた?あ〜ちゃんじゃん」
ゆかちゃんがフォローしてくれてるけど、のっちは本気でわからないって顔してる。
「アーチャン・・・?知らんよ。てか、なんでのっちこんなことになってるん?身体中痛いよw」
「えっ?」
精密検査の結果、のっちは一時的の記憶喪失になってしまったらしい。
それも困ったことにあ〜ちゃんに関する記憶だけ忘れちゃったみたい。
先生曰く、思い入れが強すぎてその反動で失った可能性が高いってのっちのママが言ってた。
その記憶は明日思い出すかもしれないし、1年後かもしれないし、一生思い出さないかもしれないとも言ってた。
ショックだった。
のっちがあ〜ちゃんの事忘れちゃったなんて・・・。
ちゃんとありがとうって言えないじゃんよ。
ちゃんと好きだよって言えないじゃんよ。
せっかくのっちが助けてくれたのに、こんなのって・・・。
【K】
「おっす!!」
「おー、かしゆかー」
のっちが目覚めて3日経つ。
今ののっちの記憶の中にあ〜ちゃんがいないって知ってから、あ〜ちゃんはお見舞いに来なくなった。
ゆかは今までどおりのっちに会いに行く。
「どう?身体の具合は?」
「んー、ボチボチ?もうすぐ頭の包帯取れるって」
「よかったね」
「うん」
のっちはすっかりあ〜ちゃんの事を忘れてるから、自分が入院している訳を知らない。
あ〜ちゃんを忘れてるからもちろんボンボンの事も忘れてる。
ボンボンに投げ飛ばされたって言ってもわからないだろうから、階段から落ちたってことになってる。
のっちからは一向にあ〜ちゃんを思い出す気配を感じない。
あ〜ちゃんはそれがショックだったみたいで、のっちに会わなくなった。
せっかくボンボンのことが解決したのに。
やっとあ〜ちゃんが幸せになると思ったのに。
一難去ってまた一難だ。
こりゃ、もうどうしようもない。
「この前かしゆかの持ってきてくれた缶詰美味しかったよ」
のっちはニコニコしてうさぎさんの形のリンゴを頬張ってる。
唯一の救いはのっちが生きていてくれたこと。
あ〜ちゃん、今度はあんたがのっちを助ける番じゃけぇ!!
最終更新:2009年12月24日 18:01