㊖side:N
……ないなんて…ありえん。ほんの数日前まで、確かにあったんだから。
その日まで、大事に大事にしているつもりで。なのに……
………見つからない。どこを探しても、見つからない。
深い後悔と日が迫る焦り。そして、やり場のない絶望が悲しみを加速させて
のっちを追い詰めていく。
『………まさか外に落とした………?!』
パワーウィンドウをめいっぱい下げて身を乗り出す。
瞬間、冷たい風が暖かな車内に一気に吹き込んで来た。
「んっ!寒…って、コラ!危ないじゃろ!何しよん!」
眠っていたゆかちゃんが目を覚まして、首根っこを捕まれ引き戻されてしまった。
「あっ!ご、ごめん!」
ほんま何しよん自分…。
どうしよう………。
㊖side:A
「…ちょ、アレ何しよん…」
「何か探してるのかな」
「にしたって車の窓からってゆーのは…」
「ないね」
「何で相談して来んのじゃろ?いつもバカみたいに騒ぐくせに」
大体のっちはものを失くし過ぎる。靴下とか。どのタイミングで落としとん。
「言えないものを失くした、とか?」
………はい?
「うちらにも言えんもんってなんよ?」
「いや、それが分かったらさ」
「何なんじゃろ、分からん」
別の現場についてからも、鞄をガサガサ→溜め息→部屋を物色→溜め息
のっちは飽きることなく繰り返している。
あんまりにもあんまりな挙動不審ぶりを見かねてあ〜ちゃんは口を開く、
「大本さぁ〜」
が、ちょうどその時ゆかちゃんが部屋に戻ってきた。
「ゆかの分終わった〜!」
「!」
するとのっちはピタッとその動きを止める。
「あ、おおお疲れ〜」
「次あ〜ちゃんだって」
言いながらソファーに凭れるゆかちゃんと入れ換わりにあ〜ちゃんは立ち上がる。
「うん…じゃあ行ってくる」
「いってらっしゃ〜い」
ドアを閉める直前、ちらりとのっちを盗み見るとわざとらしく携帯をいじり始めた。
……いや、…逆さまだよ。
「………なるほど、ね」
何となく、分かったかも。
つづく
最終更新:2009年12月24日 18:24